今から約2500年前、中国に孔子という学者がおりました。ちょうどインドでは仏教のお釈迦様が活動していた時期と重なります。その孔子の考え方や言葉を弟子たちがまとめたものが「論語」。この論語は日本にも大きな影響を与え、今でも親しまれております。その論語の中で私が好きな言葉があります。それは、私の超訳になるかもしれませんが、下に書きます。

 

「孔子先生が言うには、彼は15歳の時に学者になろうと思った。そして、ようやく30歳になり学者として活動を始めたのだ。そして、40歳になって学者としてのプロ意識が出来てきた。50歳からは学者として世の中に果たすべき使命が見えてきた。60歳頃になると初心に帰ってピュアな気持ちで他人の言葉に耳を傾ける大切さを知った。そして、70歳になり、やりたいことをやっても、人の道を外すことがなくなったように思う」

 

私は特にこの中で好きな言葉があり、その原文と読みを添えます。

 

七十而従心所欲、不踰矩(七十にして心の欲する所に従へども、のりをこえず)

この意味に通じる孔子自身が書いた「韓非子」には次のようなことが書いてあります。
それは「水は方円の器に随う」です。
これは大雑把に訳せば、孔子が王様に「民は王の器に従うのだから、王たるものの器は大切です」と伝えているのです。つまり、水は民、方は四角、円は丸。王の考え方次第で民は丸く治るか、四角く騒乱を起こすかが決まるでしょう。民をまとめるには王が丸くあるべきと、諭したのだと思います。

 

「七十にして心の欲する所に従へども、のりをこえず」も「矩=のり」は法則や道理を意味しますから、「天の理、地の利、人の心を理解することで真の法則が私という人格を作り、その人格が器となって心を丸く治めた」と言う意味だと私は考えます。

 

さて、前置きが長くなりましたが、「お茶」はまさしく器に従います。お茶を楽しむ事で大切なことを「器」を選ぶ事でもあるのです。そのことを含めて今回はお茶を生活に取り入れる工夫編をお伝えいたします。

 

 

お茶と器の関係

この写真のティーカップは私の知り合いで中尾 哲彰(なかお てつあき)先生の作品ですが、この中尾先生は知る人ぞ知るすごい先生なのです。

 

ちょっと経歴だけを並べてみます。

 

・国際美術大賞イタリー展’95 国際美術奨励賞

・日本スペイン文化交流巡回美術展- セビリア市文化教育功労賞

・日蘭交流400周年記念「日本の美術展」- アートユニオンオランダ賞

・ミレニアム記念芸術アカデミー・グローバル賞

・A.M.S.Cスペイン芸術賞

・第5回モナコ日本文化フェスティバル- モナコ公国名誉賞

・スペイン国立プラド美術館財団会員- アルバ・ガッタ・ローマ芸術家協会名誉会員

・「フランス・パリ・美の革命展INルーブル」

 - グランプリ「プリ・デ・リオン」

 - 特別賞「トリコロール芸術平和賞」

 - ルーブル美術館に永久刻印


・オスマン・トルコ芸術勲章

・フィレンツェ栄光のネオ・ルネサンス展

 - コスタンツァ・デ・メディチ芸術褒賞

・「カンヌ国際芸術祭」

 - コートダジュール国際芸術賞

・AΩ選抜協議会によりAUL

(世界に誇る、歴史に残すべき芸術家)に認定される

・アジアにおける日本美術展優秀賞受賞

・Heart Art BARCELONA~日西芸術交流祭~バルセロナ陶磁芸術財団賞受賞

・タイ王室ソムサワリ王女芸術賜杯受賞

・日本ハンガリー芸術交流祭(仏ルーブル美術館長の推薦による出品)

 - ハンガリー文化芸術名誉作家賞受賞

・クリスティーズオークション

 - Japanese Art & Design Including Arts of the Samurai」に出品

 - Christie’sThe Japanese Aesthetic」に出品

 

と経歴を見ればまさしく巨匠なのですが、このお方は実に人に優しく、まさに「水は方円の器に随う」と言う愛に溢れた陶芸家なのです。器を観る事で作者の心や想いを感じることができるでしょう。この中尾先生の作品だけではなく、世の中にはあなたの心を満たす器が必ずあります。その器との出会いから、あなたとお茶の出会いが始まります。

 

ただ、お茶を飲む器というだけでなく、器に込められた哲学を感じる事で器に満たされた自分の心をお茶として味わうことができるのです。

 

お茶と温度の関係

お茶は種類によってその味わいや特性を引き出すお湯の温度があります。

 

 

が目安とされております。

 

そうした温度と器の形と飲み方がそれぞれあります。緑茶や煎茶はそれほど高い温度ではないので、器をお湯で温めて注ぐ温度に近づけます。その温まった茶碗を手で包み込みながら掌(てのひら)を温めながらお茶をすすります。その事で緑茶が身体に入るとともに、手の熱を身体は放出するために体温を効率よく冷まして行きます。夏場には冷たいものではなく温かい飲み物で身体は自発的に体温を下げようとします。また、寒い時は手先を温める事で指先の毛細血管が開き、全身の毛細血管も同調するために血流促し、副交感神経の働きを引き上げます。

 

半発酵のウーロン茶や鉄観音茶などの中国茶は日本茶よりも湯温が高いために、小さな器に注ぎ、何度か急須に戻してという注ぎ方をいたします。この事で茶葉から成分を引き出しながら適温に冷まし、さらに手で持ちやすいようしております。

完全発酵の紅茶は沸騰した100度の温度のお湯を茶葉に注ぐと、すぐに成分がお湯に広がります。ティーカップは熱くなりますので「持ち手」がつくようになったようです。西欧のティーカップも最初は持ち手がなく、カップソーサーを持ってカップを口に近づけていたようですが、持ち手が発明されて紅茶のティーカップは持ち手がついたものが主流になりました。

この様にお茶の種類によって器も飲み方もそれぞれ変わって行ったのでしょう。

 

また、中国からヨーロッパへお茶が輸出される様になった頃、16世紀後半から17世紀にかけて磁器も多くヨーロッパへ輸出される様になりました。中国が内乱に入ると磁器とお茶は日本からヨーロッパへ輸出される様になりました。この磁器は粘土で作る陶器とは違い、陶石という石を砕いて粉にして粘土化します。焼成温度も粘土の陶器が800度から1000度に比べ、磁器は1300度という高温で焼成します。そのために高い技術力が必要でしたので、ヨーロッパではまだ磁器を作ることができませんでした。

 

そして、その頃にヨーロッパはペストが大流行しておりました。そこに衛生的に優れた磁気と抗菌性のあるお茶の組み合わせがヨーロッパに輸入されると大ブームになり、ヨーロッパに輸出していた磁器やお茶は日本の輸出産業として一大産業に発展しました。

 

やがて、ヨーロッパでも磁器は生産される様になり、お茶の栽培もイギリスの植民地であったインドで新たに生産される様になりました。お茶と磁器は世界を巡る貿易の大きな商材になって行ったのです。

 

 

季節や体調に合わせたお茶

お茶には身体を冷ます発酵させない緑茶と、身体を温める発酵茶があることを「心が落ち着く「茶」の新作法について① お茶の歴史と効能 編」で書かせていただきましたが、どの様なタイミングでどの様に飲んだら良いかについて、もう少し書かせていただきます。

 

春から夏にかけては緑茶がおすすめ

春先から夏にかけて、5月、6月は季節の変わり目で精神的に不安定になりやすい時期です。冬は交感神経が高めに働いており、身体全体が緊張しておりますが、春になり暖かくなると緊張が一気に解放されて、今度は副交感神経が優位に働こうとします。そのためにノボセや精神的にはウツに落ち込みやすいのです。

 

そのような春はアクティブに身体を動かすことや、あえて交感神経も引き上げる様に有酸素運動を積極的に取り入れることが良いのです。そして、お茶は緑茶をおすすめいたします。特にこの時期は「新茶のシーズン」ですので香り高い緑茶が味わえるでしょう。

 

70度から80度のお湯でお茶を出し、香りを楽しみながらゆっくり暖かいお茶を味わってください。

 

ポイントは暑い日などは冷たい飲み物よりも、暖かいお茶をいただいた方が、身体が自発的に体温を下げようとしますので、結果的に涼しさを感じるでしょう。緑茶はタンニンの働きで体温を下げます。そして、カテキンが血液をサラサラに促し、カフェインが脳神経を覚醒させますので、梅雨時期などのモヤモヤ感の頭もスッキリいたしますよ。お試しください。

 

秋から冬にかけては紅茶がおすすめ

秋から冬にかけては発酵茶がおすすめです。発酵茶はお茶の他の成分をそのままで、身体を冷やすタンニンを抑えます。つまり、カテキンで血液サラサラ、カフェインで頭スッキリ、テアニンでリラックスと寒くなってきた季節には身体を温めながら、身体も精神も和らげます。

 

完全発酵は紅茶ですが、半発酵の烏龍茶や鉄観音茶もおすすめです。熱いお湯で茶葉をほぐし、フルーティな香りを楽しみながら味わうと身体も心もほぐれます。

 

特に発酵茶は様々な香りや味わいの種類も多いので、好みを探すことも楽しみの一つになるでしょう。お気に入りのティーカップも探すこともぜひ楽しみの一つに加えることをおおすすめいたします。

 

アクティブな運動やヨガの後は緑茶がおすすめ

お茶を飲むタイミングと種類ですが、身体を動かした後は身体を落ち着かせるために緑茶か半発酵の烏龍茶などをおすすめいたします。お湯で茶葉をゆっくり解して、濃い目で飲むのがおすすめです。

このお茶は身体をほどよくクールダウンしながら筋肉を解してくれます。特に有酸素運動の後は抗酸化力のあるお茶は、血液の中のコレステロールや中脂肪を分解すると言われておりますので、ダイエットが必要な方には良いでしょう。また、お茶に含まれるカフェインは筋肉中のグリコーゲンよりも先に、脂肪をエネルギー源として利用するためにダイエット効果もあると言われております。

 

シャワーを浴びて、ゆっくりお茶を楽しめば身体も心もリフレッシュするでしょう。

 

瞑想の後は紅茶がおすすめ

瞑想からゆっくり目覚めたら、身体を温めながら頭を覚醒させる紅茶がおすすめです。特に朝に瞑想を取り入れている方は、瞑想の後に朝食と紅茶を楽しむと良いでしょう。朝食のおすすめは紅茶に合わせるなら玄米パンとフレッシュサラダが合うかと思います。

 

フルーツやサラダは身体を冷やすので、紅茶でバランスを取れば身体を冷やさずにフレッシュなビタミンが身体を目覚めさせるでしょう。

 

 

まとめ

お茶は昔から禅と関わりがありました。禅はマインドフルネスの元祖とも言われておりますが、心と身体を一つのものとして健康や身体に取り入れるものを探求し、発見した様々なことを取り入れて行ったのです。お茶はその一つでもあるのです。

お茶はただの趣向品ではなく、身体と心をつなぐマインドフルネス的な天地の恵でもあるのです。ぜひ、香りと味わいを楽しみながら心と身体を満たしてください。


※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。