突然ですが、ネコが筋トレしているのを見たことがあるでしょうか?ありませんよね。けれど、寝てばっかりのネコのあの柔軟な身のこなしと素早さはなぜでしょうか?また、野生の動物の驚異的な身体能力はどこから来るのでしょうか。

 

だいぶ前のTV番組ですが、プロレスラーがアフリカへ行き、現地の子供たちと荷物運びをする映像がありました。細い華奢(きゃしゃ)な現地の女の子が大きな荷物を頭に乗せて岩から岩へヒョイヒョイと何10キロも歩いて荷物を運びます。ところが同じ荷物を同じ道で一緒に運ぶ筋肉モリモリのプロレスラーがヘトヘトになって座り込んでしまいます。

 

プロレスラーと少女の違いはなんでしょうか?不思議ですよね。実は肉体の潜在能力の引き出し方に違いがあるのです。つまり動物やアフリカの少女は身体の潜在能力を上手に使いこなしているのです。

 

そこで、今回は肉体の潜在能力をいかに引き出すかについてお伝えしたいと思います。

 

 

筋肉は本来の30%しか能力を発揮していません。

私たちが普段意識して出せる「筋力」は筋肉が本来持っている生理的能力からすると30%以下しか出していないと言われております。

 

そこで、筋力を上げる場合は筋肉繊維を太くする筋トレが一般的な考え方です。筋肉に負荷をかけて一旦筋繊維を破壊することで、筋繊維が再生する際に太くなって筋肉量が増えます。

 

たとえば、30キロまで持ち上げられる人が60キロのものを持ち上げられる様になるためには単純に考えれば筋肉の量を倍にする必要があります。

 

しかし、筋肉の能力が30%しか出せないものを60%出せたら筋肉の量を増やさずに 30キロのものを持ち上げることができますよね。ところが、簡単には潜在能力を引き上げることができません。なぜでしょうか?

 

そもそも、なぜ本来の30パーセントしか力が出せないのでしょうか?そこであるヒントがあります。「火事場のバカ力」というもので、普段はか弱い女性が火事でピンチになった時に普段持てないものを持ち上げて運び出したりすることがあります。これは危険を感じた時に能力をセーブしているリミッターを解除するからだと考えられております。

 

そこで、生命の危機に直面した時に緊急事態でリミッターが解除されるなら、その様な状況をトレーニングで行えば意図的にリミッターが外せるのではないか?と様々な人が考えスポーツのトレーニングにも取り入れられております。

 

たとえば、重量挙げなどでは気合を入れて大声を出します。これは女性が怖い時に「キャーッ」と叫びますが、声を出すことで危険を想起させてリミッターを意図的に外そうというものです。実際に最大筋力が12%向上したというスポーツデータもあります。

 

ところが、たった12%なのです。実は「火事場のバカ力」では普段の3倍以上力が出るとも言われております。

 

実は、普段ゴロゴロ寝てばかりの猫が緊急事態はもちろん、普段でも驚異的な身体能力を発揮するのはもっと別な理由があるのです。

 

ポイント1 普段はポテンシャル(潜在能力)の30パーセントしか出していない筋力はリミッターがかかっている。生命の危機では火事場のバカ力でリミッターが解除される。


総合力を上げる ネコのジャンプ

筋力にリミッターがかかっている理由は、動物に比べて人間の身体操作は不自然だからという考え方があります。

 

たとえば、自動車で考えてみましょう。自動車にはボディー、タイヤ、ハンドル、エンジン、トラスミッション、ブレーキーがあります。たとえばエンジンだけが大きくてタイヤがツルツルだとタイヤが空回りします。自動車のエンジンパフォーマンスを最大限に引き出すには、全てのパーツがバランスよく働くことが大切です。

 

ところが、人間はもともと自然環境にない道具や都市という環境の中で過ごすうちに身体本来のパーツバランスを壊して機能する様になりました。

 

たとえば、アスファルト道路は平です。けれど自然界では本来平らな地面はありません。クロスカントリーという自然の中を走る競技に参加した人はわかると思いますが、平らな地面を走るのと自然の中を走るのでは身体の使い方が全く違うのです。デコボコ道を走ると翌日に全身筋肉痛に悩まされます。

 

 

つまり、人間は自然環境からかけ離れた生活の中で本来の身体操作を壊してしまっているのです。

 

私自身の話で言えば、体力的には自信があった30代半ば頃ですが、ほぼ毎日、木刀の素振りを3000回、腕立てを500回、腹筋、山歩きなどをしておりました。ある時に畑仕事をしようと思いついて畑を借りて野菜作りをしたことがあります。クワを持って地面を耕します。力を込めて木刀の様に地面にクワを振り下ろします。けれど、木刀の様には行きません。クラクラして一息つくために近くの木の切り株に腰掛けました。

 

すると、遠くの方で老婆が畑を耕す姿が見えました。「おっ!あの老婆に負けてはいられない」と思い再びクワを持って畑を耕し始めました。けれど、すぐに疲れてしまうのです。

 

老婆の方は疲れる気配もなく、黙々と耕しております。不思議だなぁと思って眺めているとあることに気が付いたのです。身体の使い方がまるで違うことです。それから、私の剣に振り方が全く変わったのです。

 

それは、呼吸と動作の一致でした。老婆のクワを振る姿は呼吸と動作が一致しているのに対して私のクワは呼吸を無視していたのです。

 

剣に限らずですが、茶道、書道、華道、陶芸家、舞踏、肉体労働者など熟練の方や名人と言われる人たちは絶え間ない稽古や作業の中で無意識に呼吸と動作を一致させます。その事で無駄のない動作と効率の良い身体操作を行っております。それらを観察してゆく中で私は呼吸と動作の法則を発見して行きました。

 

ポイント2 火事場のバカ力は単に生命の危機で筋肉のリミッターを外しているだけではなく、自然界から切り離された生活の中で忘れてしまっている動作の法則(本能)を瞬間に思い出している。その法則は呼吸と動作の一致にある。

 

 

呼吸力

先に自動車のエンジンとパーツの話を書かせていただいましたが、F Iやレースカーでもエンジンを含めた総合力がパフォーマンスを最大化します。けれど、スポーツなどで身体力のパーフォーマンスを引き上げる場合はどうしても本来の身体機能を偏らせてしまう事があります。

 

たとえば、サッカーでは手を使っていけません。格闘技では逃げてはいけません。つまり、ルールという規制の中で身体を使わなければならないからです。

 

けれど、人間の身体は人類が二足歩行を始めてから数万年もかけて作り上げてきた身体システムなのです。したがって、身体能力を最大限に引き出すためには一旦、人間が不自然に作り上げている「目的」から離れて、自然環境に準じた身体操作を取り戻す必要があります。

 

とは言うものの、昔の人がやっていた様な生活の中での肉体労働を現代でやることは難しいでしょう。そこで、ある一定の法則を確認しながら自分で身体の調整を行って行ける方法をご説明いたします。

 

トランスミッション

指と身体の相関イラスト

 

トランスミッション とは自動車ではエンジンの動力を伝えるギアですが、自転車にもついております。たとえば、坂をのぼる時にはシフトをローに入れます。これはエンジンにかかる負担を軽くするために駆動側の歯車を大きくします。自転車も同じですね。ペダルを踏む回数は多くなりますが、踏む力は軽減されます。

 

逆に下り坂や加速がついた時にはシフトをトップに入れます。駆動側の歯車を小さくするのです。この事で自動車のエンジンや自転車ならペダルの回転数を下げても車輪の回転数が上がります。

 

これと同じ仕組みが人間の身体にもあるのです。たとえば、腕を曲げる時に「小指、薬指、中指、手首、肘」と順番に曲げて行くと力が入りやすくなります。この時に呼吸は吸う事で更に力が入ります。

腕を伸ばす時は「人差し指、中指、親指、肘、肩」と伸ばして行き、息は吐く事で力を出しやすくなります。

 

この様に指と身体の大きな部位の筋肉、呼吸とは関連性があります。これは手だけではなく足も同じです。指と身体の相関イラストを見ていただけるとわかる様に大きな筋肉と小さな筋肉、先端とコアは密接に関係しており、その関係性を円滑にトランスミッションとして作動させているものが呼吸なのです。

 

この具体的な関係については今後に書かせて頂きますが、まずは指先と呼吸とコアや大きな筋肉の関連性があることだけを覚えておいてください。

 

 

マニュアル操作 

武道では自分より大きな体格の人を動かす稽古をいたします。指先から肘、肩、足の位置から足の指、膝、腰、などを確認しながら呼吸は吸った方が良いか、吐いた方が良いかを両方実験しながら工夫をします。

 

人から教えられた知識では感覚を伴わないので記憶に深く入り込まないのです。稽古(けいこ)は身体の動きや呼吸の法則を工夫することが大切です。自動車でもマニュアルシフトでは「この坂では」、「この速度では」とエンジンの回転とシフトチェンジの経験を通じて最適なシフトチェンジを覚えて行きます。

 

この時に大事なことは必ず逆動作で試すことです。たとえば、腕を曲げる時に「人差し指から息を吐きながら曲げてみる場合」と「小指から息を吸いながら曲げてみる場合」の違いを試して、こちらの方が「力が入りやすい」と自分で確かめることです。

 

自分で試して、確かめた記憶は知識か知恵に変わります。知恵というものは知識が体験によって身についたものですから、自分で様々に応用して活用することができるのです。

 

これらは特別な時間で行う必要はありません。重いものを持つ時、ものを運ぶ時、椅子から立ち上がる時、座る時、色々と試すことが大切です。自分の身体を使って息は吸った方が良いか?吐いた方が良いか?指から動かすにはどの指から動かすことが良いか?などを考えることが重要です。

 

この事で自分の身体や動作を客観的に観察する作業が自分の意識の幅を広げ、固定概念を取り除き、身体も脳も初期化して行きます。

 

ポイント3 とにかく日常の動作で呼吸と指先と動作を工夫してみる。自分で工夫したものは経験と感覚を伴うので記憶に深く入り、応用ができる知恵に進化する。

 

オートマ操作

マニュアル操作でテストして最適な身体操作を発見したら、型を作ります。たとえば、椅子から立ち上がる時は「足先を内側に向けて、息を吸いながら膝を内側に閉めてゆくと垂直に立ち上がることができる」などです。つまり、型とは自分にあった最適な身体の操作方法をパターン化する作業です。

 

日常生活の中で色々試したものを自分で型を作ります。その動作をするたびに型を思い出して行うのです。それを繰り返し行うことで身体が自然にその動作を覚えます。今度はわざわざ思い出さなくても自然にその動作を行える様になるでしょう。

 

自分の動作を主体的にバラバラにして組み立て直し、自分のオリジナルな型(パターン)動作を作って再インストールすることで、身体が最適なパファーマンスを発揮する様になります。最適なパファーマンスを発揮することが本来の身体の潜在能力を開放してゆくことになり、身体だけではなく精神のパフォーマンスも向上してストレスにも強くなるのです。

 

 

メンテナンス 座禅

座禅イラスト

 

座禅は心身のホームポジション (基本)です。全ての動作を行うための一番フラットな心身の状態を知っておくためにも丁寧に日常に取り入れましょう。

イラストの様に最初は足を組みにくいかも知れませんが、出来るだけ練習してください。

足首をよく回して、足の裏と母趾をしっかりマッサージ することで徐々に足を組むことができる様になります。

 

最初は片方の足だけでも大丈夫です。少しずつ慣らして行きましょう。一番大切なことは日常を離れることです。習慣を離れて違う世界で自分の心身を眺めるためにもぜひ座禅の座り方を習得しましょう。

 

 

まとめ

私たち現代人は自然から乖離(かいり/かけ離れた)する生活をする中で、何万年かけて作られて来た人体構造と矛盾する動作をする様になっております。それが心身のパフォーマンスにリミッターをかけております。

 

正確にはリミッターをかけていると言うよりも、パファーマンスが発揮できない動作をしているのです。

 

そこで、本来の機能性や動作を取り戻すために呼吸と指先を活用した動作の検証を自らが行い、そして確信したことを型(パターン)として繰り返す事で再入力をして行きます。

 

元々、身体にあるものを思い出すと言うことが呼吸と動作の点検です。このことである時から飛躍的に身体のパフォーマンスが向上して行きます。ぜひ、工夫して見てください。