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気はビジョン

ヨガや東洋医学、武術などで「気」という言葉がよく使われます。また、私たちの日常でも天気、元気、陽気、呑気、平気、活気、和気など数えたらキリがないほど「気」という言葉がたくさんあります。
では、「気」とは一体何でしょう。様々な諸説がありますが、その中の一つとして今回説明させていただくものは「気」は「ビジョン」であるということです。ビジョンとは未来の姿を観るということです。
たとえば、剣では相手の動きを見てから動いては遅いのです。相手の動きを予測して先に動くということをしますが、その予測を頭で考えていては間に合いません。そこで、先に何か眼に見えない殺気を感じて、避けると自然と相手の剣を避けることができます。
この殺気を感じるという事で言えば、殺気の気とは何でしょうか?相手の思念でしょうか?テレパシーみたいなものでしょうか?
私の経験上で言うと、相手ではなく、自分の中に感じるものなのです。相手の殺気を感じているようで、実は自分の心に起こる波紋という変化を観ております。
剣の昔話で塚原卜伝というすごい剣豪がおりました。塚原卜伝が家督を三人の息子に譲る時に誰に譲るかの試験をしました。方法は鴨居(かもい)の上に木枕を置いて、ふすまが開くと木枕が落ちてくる仕掛けを作りました。いわゆるドッキリです。
まず、三男が入ってきました。三男は木枕が落ちてくるなり刀を抜いて見事に真っ二つにします。続いて、次男は落ちてくる木枕から身をかわしてから刀を抜かず木枕であることを確認してから入ってきました。長男はふすまの仕掛けを見破って木枕を手に持って入ってきました。
塚原卜伝が家督を譲ったのは長男でした。何事も事が起こる前に未然に防ぐ事が大切だという事なのです。
気というものは、自分の心に起こる変化を感じる事なのです。その変化に応じる事で未然に危険を避けたり、あるいは先々に起こることや出会いを感じる事ができます。ところが、時にはその気を間違って捉えてしまう事があります。
さて、いきなり恋愛路線に話を持って行って恐縮ですが、たとえば誰かを一目惚れします。この人は運命の人だと思うわけです。2人で過ごす幸せな瞬間が心に浮かび上がります。ところがその予感が見事に外れてしまうことはよくあることです。恥ずかしながら私も若かりし日々の追憶に多々あります。
願望に惑わされるビジョン

多くのビジョンと思う現象は願望が描き出したものです。そして、願望のほとんどは思い込みの場合が多くあります。たとえば、恋愛マンガやアニメ、映画、小説など様々なものから影響を受けて「あこがれ」が願望を生み出します。
その願望は自分の体験ではなく、創作者が描いた世界観を追体験する事で生まれます。「あこがれ」は決して悪い事ではありません。映画のヒーローやヒロインのような恋愛を求める事は素敵な事です。
しかし、ちょっと待ってください。映画やアニメ、恋愛マンガの世界が現実で、その世界に実際にあなたが主人公だった場合、けっこう大変ではないですか?時には命を狙われたり、別れを経験したり、波乱万丈です。でも、あなたの願望はハッピーな部分だけ望みます。
願望が実現しない理由
あこがれは良い事です。そして、あこがれから生まれる願望も決して悪い事ではありません。しかし、あこがれから生まれた願望の多くは実現しない事がほとんどだと思いませんか?
理由は、あこがれの良いところ取りだからです。もし、映画のような、アニメのような素敵な恋愛やヒーローを本当に求めるならば、波乱万丈も受け入れなければなりません。なぜならば、素敵な恋愛を引き立たせるために波乱万丈があるからです。つまり、素敵な恋であればあるほど、波乱万丈は凄まじいわけです。それが映画やアニメの世界だからO Kなわけで実際にそんなことや、あんな事があればたまったものではありません。
実は、恋愛に限らず私たちの多くの願望というビジョンが幻で終わる理由は「いいところだけ欲しいなぁ」という非常に都合の良い思い込みがほとんどだからなのです。つまり、波乱万丈も含めて丸ごとでなければ、願望は実現しません。ワサビの入ってない握り寿司のようなものです。そして、あなたが思う願望のほとんどは、映画や小説、アニメの追体験だけではありません。あなたを取り囲む全ての経験を経ていない情報が生み出す固定概念でもあるです。
たとえば、科学は正しいということも固定概念です。なぜなら、私たちが生きる世界ではパーフェクトはないからです。けれど、私たちは様々な価値観や認識のほとんどを、自らの経験以外から受け取って構築しております。全てを経験から得ること不可能でしょう。けれど、最終判断をするのは自分自身であり、自分の感情を含めた心なのです。
最終判断をする自分の心にあるコンパスだけは自分自身の五感を経た体験によって作りあげる必要があります。そして、そのコンパスが指し示す方向が本当のビジョンであり、コンパスが常に「気」が導きます。
本当の出逢いを「気」が導く
映画やアニメ、小説の様な激しい波乱万丈の経験ではなくとも、誰でもみなそれなりに波乱万丈だと思いませんか?波の大きさは違うかもしれませんが、悩みの深さは誰でも経験があるはずです。その経験の中であなたも理想の出逢いを得る事ができるのです。
そして、その方法が「気」を感じるとる力を養うことにあります。気とは思い込みや固定概念、刷り込みとは関係なくリアルな今を感じとることです。つまりマインドフルネスでもよく説明される「今、ここにある」を感じとることこそ「気」を感じる力です。
人間は完全に固定概念や刷り込まれた記憶、思い込みを払拭(ふっしょく)することは出来ませんが、それらを減らして「今」を増やしてゆくことは出来ます。「今」は「気」です。時は過去から未来へ流れているのではなく、時は未来から今を生み出しております。
私たちの認識している過去から未来への時間の流れは「記憶」による認識ですが、時は常に未来から今へ至ります。無限の未来から流れるものが「気」の流れです。ちょうど、草木が太陽の方向へ伸びてゆくように私たちの創造力は未来から流れてくる「気」の方向へ幹を伸ばして行きます。
この「気」を感じる事で未来へのビジョンが観えてくるのです。先に塚原卜伝のことを書きましたが、塚原卜伝の三男は木枕が落ちてから刀を抜いて真っ二つに斬りました。これは過去から今へ流れる時間を追いかけたので遅いのです。次男は落ちてくる木枕を見定めるので今を捉えたつもりですが、それでも落ちてくる木枕を避けてから観察して木枕だ!と判断したのでこれも過去から未来への時の流れで遅いのです。
しかし、長男は仕掛けを見破って木枕を鴨居から取り去ってから部屋に入ってきました。落ちる前に取り去ることが出来たのは未来のビジョンを見定めたからです。これは、父ならこんなテストをするだろうなぁとか、周りを観察して鴨居の上にある木枕を発見したとか、色々な見方はあります。
けれど、武道や禅を稽古した人には、なんとなく見える事があります。場の雰囲気を感じて何かを察して、ふと目に止まるということです。武道に限らず、みなさんもその様な偶然を経験したことはありませんか?
何気なくボーっと歩いて、何か気になって見ると知り合いが歩いてきたり、なんとなくの偶然で出会ったりしませんか?それが「気」の兆しです。未来から流れる時を受け止めるとそこに未来への創造性が生まれます。その「創造性」がビジョンです。
実は気は予知ではなく、未来から流れる時を感じて自ら産み出す「創造性」なのです。未来に起こることは今が創造します。未来から流れる時を認識した時に未来の方角が見え出すのが「ビジョン」です。言い換えれば過去に縛られないスピリッツです。
そして「ビジョン」はあなた自身が産み出す未来なのです。
気を高める旅
実際に「気」の力を高めるにはどうしたら良いかを書いてみましょう。この事が少しわかり出すと、あなたが求めている理想との出逢いが産まれるでしょう。これは恋人との出逢いだけではなく、一生の仕事や素晴らしい人の出逢いも含みます。
毎日、旅をしよう!

まず、旅に出ましょう。えっ?コロナだから旅には出られないって、はいGoToトラベルも必要はありません。今、ここが旅先です。毎日が旅なのです。たとえば、あなたはアメリカで生まれて今、日本に長期に旅行に来ていると思ってみてください。
そんなのマヤカシだと思うかもしれませんが、ではなぜ皆さんは旅行へ行きたいのでしょう。見たことのない景色や見たり、食べたことのないものを食べたかいからですよね。ワクワクしますよね。でも、なぜ?ワクワクするのでしょう。新しい物、新しい場所、新しいってどうしてワクワクするのでしょうか?
それは、今がとても窮屈(きゅうくつ)だからではないでしょうか?同じ会社で同じ顔、毎日の通勤で見る同じ景色、家に帰っても毎日同じような日々、退屈ですよね。それに現状にもし不満があれば牢獄にいるようなものです。
でも、それは自分が決めたスケジュールで同じことをしているのは自分の判断なのです。いいえ!会社の出勤時間は決まっていますから。そうですね。でも、少し早めに出て、違うコースでブラブラ通勤しても良いのです。休みは家でいつもと違う何かをしても良いのです。
今が不満なら変えれば良いのです。
毎日の暮らしを旅だと思って、出来るだけ自由を感じられるように工夫をしましょう。固定概念を少し変えるだけで、見える世界が変わってくるのです。あれ?こんなところにこんな素敵なカフェがあったとか、ここにこんな花が咲いていたとか、世界は別な面を見せてくれます。
方法を考えて捨てる 計画を練りながら途中で変える

日々の日常を旅に変えると、明日は何をしよう。どの道を歩こう。何を着る?そんなことを考えだすでしょう。そして、計画を練ります。あの道を歩くなら何時に起きてとか、そのためには今日の仕事はここまでにしないとなど、計画に合わせて条件が出てきます。
さて、ちょっとここで、再び恋愛論に無理やり話を戻します。
あなたが恋愛をする時に計画や条件はありますか?年収とか身長とか、仕事など。結婚相談所とかお見合いサイトなんかはそのような条件でマッチングさせますよね。
それって、何か窮屈ではないでしょうか?たとえば、年収は最低600万円以上で身長は180センチ以上なんて条件をつけます。そしたら、見事ぴったりな人が出てきて、ルックスも良いし努めている会社も結構素敵な会社だとします。
10年後、その人が努めていた会社は倒産しました。ついでに浮気も発覚。住宅ローンの返済もあと30年。まじですか!!ということは結構よくあります。
逆に、私の知り合いでは通帳にたった500円で借金が数千万円。それでも恥も外聞なく猛烈なプロポーズをして女性を射止めます。それから、数年苦労の連続です。でも夫婦で諦めないで働いて、ついに年商数十億の会社をつくりあげました。苦労したから、今があるとその友人は奥さんと子供と幸せに暮らしております。
そんなことって、特別な事と思いませんか?はい、特別です。でも、あなたも特別な存在なのですよ。それにまだ気がついてないだけなのです。そして、条件なんて変わるものなんです。
まず、様々な条件を外しましょう。日常の旅も計画をやめてみましょう。思いついたらやってみる。何かを思いつくままにやってみる。そんな事から初めてみましょう。すると感じる世界が変わってくるのです。
もちろん、計画は大切ですよ。計画を詰めて、考えて、考え抜くと頭が固まります。いわゆる煮詰まるということです。実は煮詰まったら、放っておくと熟成されて新しい味になるんです。計画や企画は煮詰まるまで考え抜くのです。そして、熟成を待つ間に別なことをやるのです。
さて、この感じる世界が変わること。それが「気」の始まりです。気の感覚が流れ出します。
求めに応える 一期一会

この毎日を旅だと思い、出来るだけ毎日を自由に過ごすと、ある日に出逢いが生まれます。それは不思議な事ではなく、固定概念や思い込みの幅を出来るだけ小さくする事で、自分の五感で感じる毎日に新しさが感じられるようになるからです。
その五感に感じる新しさこそ、未来からの時の風と光であり「気」の流れなのです。その「気」を感じながら、自由に何かを行おうとする行為こそ未来をクリエイトするビジョンなのです。このビジョンは次第にあなたが本当に描きたい未来を明確にあわらします。
それはあなた自身が描き出す未来です。ビジョンが明確になると、あなたが求めると同時にあなたを囲む「今」があなたを求め出します。その求めに応じる事が未来へのステップです。日々の出逢いは一期一会です。「今」が出逢の時です。求め求められた出逢いですが、今は過去に流れます。ですから、この今は2度と出逢うことのない今です。
毎日をあなたがクリエティブに生きれば生きるほどに、必ずあなた求める人と出逢います。その出逢いは実は日々、この瞬間にも生まれているのですが、気が付いてないだけなのです。見える世界が変わるだけで、すぐそこに「あなたを求める」、「あなたが求める人」がいるのです。世界は宝に満ちています。
憧れではなく波乱万丈を経験するリアルなあなたの今に未来へのイマジネーションが生まれる時、ビジョンは現実のものとなるのです。自由なオープンマインドがマインドフルネスな力を生み出します。
チャンスを見極める 旅の終わりは新しい旅

実は、多くの人は出逢いやチャンスを気付かないか、または見過ごしているか、わかっていても踏み出せないという人がほとんどなのです。心の思い込みや固定概念を出来るだけ小さくすれば、未来を感じる眼が開かれて、見えてくる世界は「気」に包まれていることを知るでしょう。その事で出逢うべき人と出逢い、日々はチャンスの連続であると知るでしょう。旅を始めましょう。今から、ここから旅は始まります。
まとめ
人間の身体にある細胞はおよそ60兆個あると言われております。この60兆個の細胞は約2年半で全て入れ替わると言われております。つまり2年半後に肉体的にはあなたは別人になるのです。何を恐れる必要があるでしょう
。日々は旅そのものです。毎日が生まれ変わっております。その中で、トライ&エラーはつきものです。勇気を出して未来へ踏み出し、今をしっかりクリエイションすれば、最愛の人との出逢いは必然となるでしょう。「気」とは未来への希望なのです。気が導くでしょう「求めれば、求められる」のです。すなわち「求めなさい。そうすれば、与えられる。」マタイによる福音書7章7節より
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。