ストレスが重なると心も身体もネガティブな方向へ引っ張られてしまう方が多いのですが、ストレスの要因となる自分を取り巻く環境は自分1人の力で変えることは難しいものです。さて、ネガティブな気持ちが導く最悪なケースは自殺です。

2020年ではコロナウィルスの影響で5月から9月までの自殺者が2019年より上回りました。最近の自殺者として警視庁のデータによると202010月までの統計データでは17,120人で男性が11,541人 、女性が5,678人です。 

日本の戦後(1945年以降)では人口に対する自殺者の割合で最も多かったのが1998年〜2004年の間です。

実は男性は常に女性の2倍であり、女性より男性の方が多いのは仕事上の責任を多く持っているからという見方もあるようですが、精神的タフさは女性の方が強いように思います。

自殺の原因として多いのは仕事関係で多く、事務職や専門職、医療機関などの方に多い傾向があります。

さて、このような事を書けば、更にネガティブな気持ちになることもあるでしょうから、今回のテーマであるストレスをポジティブエネルギーに変換する方法について書き進めてゆきましょう。




生命力を引き出す

まず、ネガテイブという感情は論理や知識では変えることが出来ません。理由は、感情は感覚と体験を統合したものであるからです。これについては「【臨済宗僧侶が解説】マインドフルネス瞑想を通じて心が進化する仕組み、心が本当の幸せを見つけられるためのマインドフルネス=心の進化」をご参照ください。

 

ネガティブとは「否定的」ということですが、何に対して否定的かというと、自分の置かれた環境や自分自身の生きる意欲に対してです。つまり、ネガティブな気持ちとは境遇やそれを選択した自分に対する否定的な視点を持っているということです。

 

この否定的な視点を変えない限り、境遇も自分も変わらないとわかっている方も多でしょう。けれど、一旦ネガティブな気持ちになると中々抜け出せないものです。頭で分かっていても論理や知識では感情は変わりません。

 

そこで、感情をポジティブに変えるには「行動を変えること」が大切です。つまり、身体の中に眠っている生命力に働きかける行動を起こすことで、「感情をポジティブに変える」ことができるのです。

 

ネガティブな人は身体もどこか悪く、元気が失われております。それは自律神経がネガティブな思考に影響されて、生命力を遮っているからです。そこで、身体から生命力を主体的に取り戻せば、感情や思考もポジティブに変化することが出来ます。

 

 

ハイハイ運動


ハイハイのイラスト

 

人間が一番生命力に溢(あふ)れている時期は「赤ちゃん」の時です。特に「ハイハイ」をし出したら、生命は「自律」に向かって働き出します

 

このハイハイは非常に重要な動作で骨盤と肩甲骨をしっかり動かして、腰椎(ようつい)、脊髄(せきずい)、頸髄(けいつい)をしっかり鍛えます。このハイハイで鍛えられて赤ちゃんは自律神経のバランスを整え、また2足歩行に必要な骨格と筋肉をバランス良く鍛えることが出来ます。

 

そこで、心身の調子や自律神経を整え生命力をポジティブに活動させるために、おすすめなのはこの「ハイハイ」運動なのです。部屋の中でハイハイをしてみましょう。このハイハイ運動で大切なことはゆっくりで良いので、手足をしっかり動かすことです。

 

手の指はしっかり開きます。顔を上げてしっかり前方を見ます。畳やジュータンの方が良いのですが、フローリングの場合は膝を痛めなようにゆっくり移動しましょう。足の爪先は寝かせます。(イラストの赤ちゃんをご参照ください。)

 

前進
後進
前進
後進

 

を繰り返します。手と足が交互に動いているか、後進の時も手足が交互になっているかを最初は確かめながら、しっかり動かしてください。

5分くらい繰り返します。

 

片足開脚(かたあしかいきゃく)

片足開脚のイラスト

 

ハイハイの次は、片足開脚(かたあしかいきゃく)をします。左右どちらかの脚を伸ばします。(イラストをご参照)そして、伸ばした足の方へ身体を倒します。

 

股関節を緩めると股関節の付け根にあるリンパ節と太腿の内側にある大動脈や静脈の流れを改善させます。身体半分の血液は下半身にありますが、重力の影響で下半身の血流が停滞しやすく老廃物が下半身に集まりやすいのです。

 

そこで、下半身の血液の流れを改善することで身体全体の代謝活動(たいしゃかつどう)を活性化させます。代謝活動とは細胞がエネルギーを生み出す活動ですが、老廃物などが血管や筋肉の溜まっていると、エネルギー効率が低下するのです。

 

たとえば、火のついた蝋燭(ろうそく)にコップを被せるとコップの中の酸素が減って二酸化炭素が増えます。すると蝋燭の火は酸素と酸素の結合効率が低下して火が消えてしまいます。このように体内に様々な老廃物がたまると細胞が酸素と糖を結合させてエネルギーを発生させる効率が下がるのです。それを改善するために下半身の血流を促(うなが)します。

 

特にストレスの多い人は股関節が固くなります。これは犬が恐怖を感じると尻尾を丸めて内股に力が入るのを見たことがあると思いますが、人間も同じように緊張や恐怖を感じると内股に力が入ります。

 

内股を緩めることは

⚫︎  全身の血行を改善して代謝効率を上げる(内臓を通る大動脈や大静脈に関係する)
⚫︎  精神的緊張を和らげることになります。

 

方法は

イラストのようなポーズをとりますが、重要なことは、無理に身体を伸ばした足の方に倒さないことです。あくまでも、脱力して身体が自然に倒れるのを待ちます。ここで、重要な「コツ」があります。それは、倒す方の反対の足(曲げている方)の爪先、膝、腰、脇腹、順番に意識をしながら力を抜いてゆくことです。

 

息を口からゆっくり吐きながら、曲げた方の足の爪先、足首、ふくらはぎ、太腿(ふともも)、腰、内股、脇腹、と一つずつ意識をその箇所に向けて力を抜いてゆきます。すると自然に伸ばした足の方へ身体が倒れます。

 

どれくらい身体が倒れたか?よりも、3分間という時間を設定して、その中でひたすら息を口からゆっくり吐きながら、力を抜いてゆくことに集中しましょう。口からの息の吐き方は、熱いスープを口で冷ますように「フー」と吐きます。

 

片方の足で3分、入れ替えて3分とやってください。

 

 

ダウンドックポーズ

 

ダウンドックポーズのイラスト

 

片足開脚の次はダウンドックポーズです。イラストのダウンドックポーズは犬が目覚めた時によくやるポーズです。先ほどの片足開脚で身体を緩めて副交感神経を働かせましたら、次は交感神経を引き上げます。

 

息を大きく吸いながら、このポーズで肋骨(ろっこつ)を引き上げて頸椎(けいつい/首)と脊髄(せきずい)を反らすことで刺激を与えて交感神経を活動的に働かせます。犬は目覚めると自然にこのポーズをしますが、人間がデスクワークで椅子に座ってノビをするのも同じ理由です。

 

リラックスをする時に「副交感神経」をよく取り上げられますが、これは緊張を抜くためでもありますが、本当にリラックスするためには「交感神経」も活動的にしなければ、「副交感神経」も活動的に働きません。

 

緊張とは交感神経が少し優位になっていますが、「交感神経/興奮系統」「副交感神経/鎮静系統」ともに活動が低下している状態なのです。

※自律神経の交感神経、副交感神経については「脳と身体をコネクトするトータルマインドフルネス①ストレスケア編」をあわせてご参照ください。

 

したがって、交感神経も活動を引き上げる必要があります。それがこのダウンドックポーズです。

 

息を鼻からゆっくり大きく吸い込んでイラストのポーズをしてください。息を吸い終わったら息を3秒止めて、息を口からゆっくりフーと吐きながら、四つん這い(ハイハイ)になります。これを3回くらいゆっくりやります。

 

 

コブラのポーズ

コブラのポーズのイラスト

 

ダウンドックポーズに続いて、コブラのポーズです。このポーズは腰椎(ようつい/腰のあたりの背骨)という骨盤と脊髄(せきずい)の接点を、身体を反らすことで刺激を与えます。また、腹部の緊張を抜くことで身体の反りが深くなります。

 

このポーズは副交感神経の働きを活発にするものです。先ほどのダウンドックポーズが交感神経を刺激して活発化させることに対して、今度は副交感神経を引き上げてバランスをとりつつ、交感神経と副交感神経の両方を活性化して自律神経の安定キャパを広げることが目的です。

 

息を吸いながら身体を反らして、一旦息を3秒止めます。ゆっくり息をフーと口から吐きながら、そのままの姿勢で腹部を脱力します。息を吐き終わったら同じように後2回繰り返します。合計3回繰り返しましょう。

 

ハイハイ運動5分、片足開脚を両足で6分、ダウンドックポーズとコブラのポーズを続けて行うと合計で15分から20分位でしょう。最後に心身を整える呼吸法を10分くらい行います。



呼吸と身体の一致で心身のバランス

最後は先ほどの自律神経の働きを引き上げる運動の後に呼吸と姿勢のバランス整えます。ウォームアップからクールダウンを行います。頭がさえて、心が落ち着き、活力が湧き上がってきます。


正座

正座のイラスト

正座とは、日本独特の座り方です。元々は罪人を後ろ手に縛って座らせる方法だったのです。正座が慣れない人は足が痺れて歩けなくなりますでしょ。逃げられないようにするための座り方だったのです。

 

そして、江戸時代に入ってお城にお勤めする武士が殿様の前で正座をさせることで謀反(むほん/突然襲いかかる)ことがないように、殿中(でんちゅう/お城の中)では正座にしようという作法(さほう/決まり事)を作り、それが全国に広がったのです。

 

ところが、この正座が座禅の座り方と同じくらい身体の理にかなっていることを発見してゆきます。

 

座禅は骨盤と腰椎(ようつい)を安定させるために、脚を組みます。つまり、安定に固定する座り方です。長時間の瞑想にはこの座禅の座り方は向いているのですが、いざという時に動くことができません。

 

ところが、正座は骨盤と腰椎を安定させて呼吸を整えることに向いていると同時に、立ち上がることも素早く立ち上がることができるので、いざという時や日常的にも使用しやすい座り方なのです。正座は長時間の姿勢には向かない場合もありますが、茶道、華道、書道、武道、舞などの立ち座りの多い姿勢には呼吸と動作を安定させる事ができます。

 

この正座の発見から、書道、華道、茶道、舞、武道なども正座を取り入れました。そこで、この正座の座り方と立ち座りの方法をお伝えいたします。

1.  正座は重ねずに母趾(ぼし/足の親指)を合わせます。踵(かかと)に坐骨(ざこつ/お尻のとんがった骨)の左右を乗せます。
2.  膝は拳(こぶし)2つ分あけます。(作法では女性は閉じるとありますが、健康法や瞑想では股関節の血流を妨げないためには、少し開いた方が良いでしょう。)
3.  手の指を揃(そ)ろえて、太ももの真ん中より少し身体側に近いところへ置きます。
4.  手の指先を少しだけ内側に向けます。
5.  肩の力と肘の力を抜きます。
6.  顎(あご)を軽く引いて、背筋を伸ばします。
7.  目先を少し先、自分の身長と同じ位先に落とします。
8.  姿勢ができたら、鼻から息を吸います。お腹を膨らませるように吸いましょう。
9.  息をお腹が自然と萎(しぼ)むのに任せます。自然に吐き切ったら、再び自然に吸います。
10. 5分くらい続けてください。

 

正座からの立ち座り

起坐(きざ)の図

5分正座をしたら、起坐(きざ)をします。鼻から息を吸いながら足の爪先を立てると起坐になります。起坐の姿勢で先ほどの正座の呼吸3回行います

起坐から右足を前に踏み出します。踏み出す時は鼻から息を吸いながら踏み出します。この姿勢で正座の呼吸を3回します。

 

自然体の図

右足を踏み出した状態から、鼻から息を吸いながら立ち上がります。足は肩幅より少し広めで足先を少し開きます。手の指先は揃えて正座と同じように太ももの前に自然と添えます。肩の力を抜いて顎(あご)を軽く引きます。正座の呼吸を10回くらいします。

 

座る姿勢のイラスト

自然体から左足を引いて、ゆっくり息を口から吐きながら片膝をついた姿勢に戻ります。呼吸はゆっくり3回。

 

起坐のイラスト

 

右足を引いて起坐に戻ります。起坐に戻す時は息を口からフーと吐きながら戻します。起坐で3回ゆっくり呼吸を整えます。

正座のイラスト

 

起坐から正座に戻します。息は口からフーと吐きながら戻します。正座で10回呼吸を整えます。

 

 

生命力はあらゆる課題を解決するプログラム

どんなにストレスがあっても生命力そのものはポジティブなエネルギーに変えることができます。なぜなら、地球が誕生して46億年の生命は今のあなたにつながっているからです。

 

今のあなたの生命は46億年の膨大な生命の延長にある素晴らしいポテンシャル(潜在力)を持っております。そのポテンシャルのほんの少しでも引き出すことができれば、精神も肉体もポジティブに働き出すのです。生命は過去から今へつながり、時間は未来から今へ流れます。全ての記憶と力は過去からの膨大なメモリーとして今ここにあり、未来という創造性は今に無限のクリエィブなエナジーを送っております。

 

自分の身体に眠るメモリーとしっかりつながることで、生命力はあらゆる課題を解決するプログラムとして起動します。再起動をかけた心身は未来からの創造力というエナジーを受け止めて、全力で前に進み出します。あらゆるストレス(刺激)は創造性の燃料に変わり、ポジティブな力を増幅させます。


まとめ

ここでご紹介した実践法は朝起きてすぐの30分が効果的です。

ハイハイ運動から自律神経調整、正座と呼吸調整で1日のエナジーがチャージされます。後30分眠ることよりも、この30分のトレーニングであなたの心身はこれまでにないほどのポテンシャルを引き出すでしょう。

ぜひ、やってみてください。


※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。