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なぜ瞑想をルーティンに?
「今日から頑張ろう!明日から頑張ろう!」そんな決意が、三日坊主で終わった経験はありませんか?
ランニング、筋トレ、読書、英会話、ダイエット、禁煙。
そして瞑想も2~3回やって、なんとなく尻切れトンボに・・・。
これらが続けられない原因として、習慣として生活に定着しなかった事が考えられます。
やると良いと分かっていても、新しいことに取り組むのは難しいですよね。
脳は新しいことを始めるのが大嫌いなのです。
なぜなら、今までにない事を行うのは、脳にとって負担だからです。
では、脳のメカニズムはどうなっているのでしょうか。
歯磨きや洗顔など、すでにある習慣は、無意識でもこなせてしまいますよね。
スマホに注意が向いているのに、なぜか手が動き、歯磨きが完了している。
このようなとき、脳の基底核が使われています。
基底核とは、中心部分にある機能で、「自動操縦モード」で私たちの体を動かしてくれる存在です。
一方で、いつもと違うことをするときは、前頭前野という部分が使われます。
前頭前野を使うと、脳のエネルギー源であるブドウ糖を大量に消費することがわかっています。
人間には生存本能としてエネルギーを温存する特性があるため、前頭前野を使うことを脳が拒否します。
これが、負担となり、慣れない行為を困難にする理由です。
(参考 Why We Resist Change? Blame Our Brains)
ならば、歯磨きと同じように、瞑想も毎日の生活のルーティンに組み込んでしまいましょう。
そうすれば、脳に負担をかけずに瞑想を継続できます。
今回は、瞑想をルーティン化するコツや、瞑想を毎日行っている著名人の体験談も踏まえながら解説していきます。
瞑想をルーティン化するコツ
習慣の力
ルーティンといえば、元大リーガー、イチローさんのエピソードが有名です。
彼は試合前や練習前のプログラムだけでなく、食事をはじめとする生活のあらゆる行動をルーティン化していたといわれています。
そうすることにより、アウェーでの試合やプレッシャーのかかる場面など、どんな状況でもルーティン動作を行なえば、集中することが可能です。
私たちの毎日の生活にもこの理論を生かすことができます。
ニューヨーク・タイムズ記者はチャールズ・デュヒッグ氏によれば、私たちの習慣は、
①きっかけ
②欲求
③反応
④報酬
この4ステップから成り立っています。
これを瞑想に応用してみましょう。
①仕事中、忙しすぎてイライラする
②冷静になりたい
③トイレで瞑想をする
④冷静になりたいという欲求が満たされる
結果的に、仕事でイライラをすることと、トイレで瞑想をすることが結びつくようになります。
そうなると、仕事でイライラしても、感情的にならなくて済む機会が増えるようになります。
自分の感情をコントロールできるので、破壊的なコミュニケーション(同僚にイライラをぶつける、など)をとることが減ります。
その結果、職場でのストレスが自然と減ります。
悩みが少なければ、仕事に集中でき、良い判断がしやすくなり・・・
このように成功体験が積み重なっていくことで、瞑想をする習慣が強化され、雪だるま式に効果が高まっていくということです。
(参考文献:講談社 チャールズ・デュヒッグ著 習慣の力)
その時のコンディションやモチベーションに左右されず、やるべきことを確実に達成できます。
これが「習慣の力」です。
現在のルーティンに瞑想を加えよう~朝編~
考えなくても自然と瞑想に取り組めるように、現在のルーティンに組み込んでしまいましょう。
まだ意識がはっきりしない朝。
毎日あなたが必ずやっている習慣を一つ思い浮かべてください。
例えば、朝起きてすぐにお水を飲むのであれば、そのお水をコップに入れて口に入れる前に1分間、瞑想をするようにしてください。
歯を磨くときに歯ブラシを握って1分間でもいいですね。
立ったまま背筋を気持ちよく伸ばし、肩の力を抜き深呼吸をしましょう。 少しの間、目を閉じて呼吸に意識を向けます。
心を整えることにより、すっきりとした1日のスタートを切ることができます。
また、毎日行うことにより、自分の体調の変化に気がつくことができます。
そのため「今日は少し調子が悪いから無理をしないでおこう」とか「いつもよりも元気だからやりたいと思っていたあれをやってしまおう」など、自分のペースでスケジュールを決めることができます。
現在のルーティンに瞑想を加えよう~夜編~
毎日寝ない人はいませんよね。
寝るために布団に入る、という行動はがんばらなくてもできるはずです。
夜に瞑想を行うために、「23時になったらベッドに座る。」を何も考えず実行しましょう。
30分程度は時間が前後してもかまいません。
ベッドに座ったら、3回深呼吸をし、その余韻を感じます。
夜瞑想を行うことでさわやかな朝を迎えることができます。
またその日のストレスを手放すことができ、寝つきが良くなることも期待できます。
コツのまとめ
コツ①
瞑想を始めるとき、なるべく小さな変化からはじめる。
いきなり10分も20分もやろうとせず、
「これだけのことなら、毎日できる」と思うことが何よりも重要なのです。
コツ②
瞑想に至るまでのトリガー(きっかけ)を決め、すべてをルーティン化することで習慣にする。
習慣は、行動を繰り返すことから生まれます。
状況的な合図(コップを手に取る、寝室へ行く)が習慣的な行動(目を閉じて呼吸に集中する)を反射的に促し、無意識で行われる手順へと変化します。
コツと理論を意識し、自分の生活に合わせた時間と場所を決めてみましょう。
アイテムを利用する
アイテムを利用するとより習慣が強化されます。
オススメのアイテムを紹介しましょう。
・坐蒲
正しい姿勢をサポートし、腰の負担を軽減します。
また、坐蒲をベッドに置いておけば、「ベッドで瞑想をする」と思い出させてくれます。
そして、ベッドへ行く→座蒲を見る→座蒲の上に座る、という流れで、自然と瞑想に取り組むことが可能です。
・アロマキャンドル
照明を落とし、キャンドルの炎を見つめることでリラックスできます。
また、嗅覚は、記憶を司る海馬へダイレクトに情報を届けます。
そのため、嗅覚からの信号は、他の感覚よりも強く記憶と結びつきやすく、アロマの香りを嗅ぐ→瞑想をする→良い気分になる、という一連の流れを脳が学習します。
その結果、良い気分になりたい→(キャンドルに火をつけて)瞑想をする、という思考回路が定着します。
おなかが空いていなくても、カレーの匂いが漂ってくるとカレーが食べたくなる。あの感覚を、脳にすり込ませるのです。
・瞑想アプリ
スマホにアプリをインストールしておけばいつでも誘導にしたがって瞑想を行うことができます。
通勤中に電車でいつもSNSをチェックする習慣があるのではれば、SNSのアプリを開く前に瞑想アプリを開きましょう。
電車に乗る→瞑想をする→仕事に集中しやすくなるという成功体験を続けましょう。
relookのアプリは1分瞑想など種類が豊富です。試してみてください。
ルーティンにおすすめの瞑想のやり方
どんな瞑想法でもかまいませんが、時間に縛られず行える瞑想法としては呼吸瞑想がベストでしょう。
やり方
1.姿勢を整える(調身)
床、またはイスに浅く腰掛け、背筋を気持ちよく伸ばし座ります。
もしくは立ったままでもかまいません。
筋肉が緩み、骨で身体を支えているような感覚で座りましょう。肩の力を抜きます。
富士山になったつもりで堂々と腰掛けてください。
2.息を整える(調息)
大きく深呼吸をしましょう。鼻から大きく吸って、口から細く長く吐き出します。
3回深呼吸を繰り返しましょう。
次は、鼻から吸って鼻から吐く自然な呼吸に切り替えましょう。
無理にゆったりとした呼吸をしなくても大丈夫です。
そして、呼吸に意識を向けましょう。腹式呼吸を繰り返し、おなかが膨らんだり、しぼんだりする様子を追いかけます。
心の中で「膨らむ」「しぼむ」とつぶやくと集中しやすくなります。
3.心を整える(調心)
次々に浮かび上がる考え事によって呼吸に意識が向けられなくても、そこで自分を許し、また呼吸に戻りましょう。ただ呼吸を繰り返します。
自分の中に起こる感覚・思考・感情を、1つ1つ言葉にしていきます。これをラベリングと言い、心の動きにラベルを貼ることで、その存在を自覚しやすくなります。ポイントは、良し悪し・好き嫌いの評価を加えない、ということです。
集中を乱す原因を認識し、「かゆい」「足がしびれた」「心臓がどきどきする」など名前をつけ、客観視していきましょう。
そうすることで、その状態に囚われず、また呼吸に戻ることができます。
ストレスの低減、集中力・記憶力の向上、感情のコントロールなどの効果が期待できます。
瞑想をルーティン化した時の効果
習慣化した瞑想は、脳の構造を変化させることがわかっています。
これを裏付ける2003年マサチューセッチュ工科大学名誉教授ジョン・カバット・ジンとウィスコンシン大学のリチャード・デビットソンが行った研究を紹介します。
健康だがストレスを感じる労働者に、8週間のマインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)を実施し、その効果を検証しました。その結果、瞑想を実践した人々は、MBSRを実施しなかった対象グループと比べ、右の前頭前葉よりも、感情の表出と関係する左の前頭前葉の活動に増加が見られました。
つまり、瞑想をした人たちは、そうでない人たちよりも、不安や落ち込みといった感情に上手く対処しており、いわゆる「心の知能指数(EQ)」が高くなったことが示唆されました。
さらに同じ実験において、インフルエンザの予防接種を実施したところ、瞑想をしたグループのほうが、免疫系における抗体反応がより強くなることもわかりました。
(参考:北大路書房 マインドフルネス ストレス低減法 J・カバットジン著)
このように瞑想を行うことによって広い範囲でのポジティブな変化が期待できることがわかります。
しかもそれは瞑想を行っている間だけでなく、脳を変化させ長期的にポジティブな変化が続くことが証明されているのです。
瞑想をルーティンで行っている有名人とは?
瞑想を習慣化している人たちをご紹介します。
ヒュー・ジャックマン
俳優、映画プロデューサー。
X-MENで有名なヒュー・ジャックマン。
彼は20年間以上も超越瞑想を欠かさず行っているそうです。超越瞑想とは、1日の朝夕に20分間の瞑想を行うものです。
「瞑想では、私はすべてを手放すことができます。私はヒュー・ジャックマンではありません。私はお父さんではありません。私は夫ではありません。私はすべてを生み出す強力な情報源に浸っています。」
(2013.1.7 ハフィントンポストのインタビューより抜粋)
ハル・ベリー
女優・映画監督
「チョコレート」や「007 ダイ・アナザー・デイ」で知られるハル・ベリー。
最近では自身のインスタグラムで54歳と思えぬ美しいスタイルを披露し、話題になっていますね。
彼女も毎朝のルーティンとして20年間瞑想を行っています。
「私は通常、朝一番に、時には10分間、時には1時間、それを行うのが好きです。そうすることで、本当に接地された場所から1日を始めることができます(そして、子供ができたので、それが私だけの時間だからです)。
私は常に瞑想の中に平和、癒し、そして慰めを見出してきました。そしてそれは、私たちが非常に多くの不安の中にあり、恐れから操作するのがとても簡単な今、特に真実(そして重要)です。」
(2020年6月5日 woman’s hearthインタビューより抜粋)
まとめ
大事なのは、とにかく決意を固め、続けることです。
新しい行動が続かない理由はあなたの性格のせいではなく、脳のメカニズムであることが、この記事を読んでわかったはずです。
「自分が意志が弱いからダメかも」と始める前から弱気になる必要はありません。
自分の生活リズムに合わせて、瞑想を無理なく取り入れてみてください。
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。