一度飲み始めるとつい飲み過ぎてしまう、お酒を飲み過ぎて昨夜のできごとを思い出せないことが頻繁にある、お酒を飲まないとイライラしてくる、なんていう経験はありませんか?

「今度こそ禁酒する」と決めても、継続するのはなかなか難しいですよね。

実は、瞑想は禁酒にも効果的といわれているのです。今回は、瞑想と禁酒の関係について解説します。


なぜ禁酒は難しいのか?



「もうお酒は飲まない」と誓っても、やっぱりまた飲んでしまう、という人はたくさんいます。

なぜ禁酒はそんなに難しいのでしょうか。

いくつかの原因が考えられます。

まず、「ちょっとくらいはいいかな」という気のゆるみが原因のひとつです。

仕事の後に友人と会うことになったときや、飲み会に参加したときなど、「1杯だけ」と思いつつ、気が付いたらかなりの量を飲んでいたというのはよくあることです。

また、飲酒にはネガティブな感情を一時的に忘れさせてくれる効果があります。

嫌なことがあったり仕事で失敗したりとストレスを感じるとき、寂しさを埋めたいとき、気分が落ち込んだときなど、「気持ちを楽にしたい」との思いからお酒を飲んでしまうのです。

さらに、お付き合いで飲むことも少なくありません。

職場の上司や先輩、取引先やお客さんから飲み会や食事に誘われ、その席で周りの人たちがお酒を飲んでいるのに自分だけ飲まないわけにはいかないと感じたり、コミュニケーションのために飲酒することもあるでしょう。


瞑想で禁酒はできるのか?効果を解説

瞑想が禁酒に有効であるということは、これまでいくつもの研究で実証されています。

ではなぜ瞑想が禁酒に効果的なのでしょうか。

思考と感情を客観視できる



ロンドン大学ユニバーシティ・カレッジの研究者らは、頻繁にアルコール摂取する成人68名を対象にマインドフルネスが禁酒に及ぼす影響を調べました。

その結果、マインドフルネスのテクニックが録音された11分間のレコーディングを聴いたグループは、そうでないグループに比べて、1週間のアルコール摂取量が9.31単位(ビール中瓶約9本分)低減したことが分かりました。

研究チームのリーダーであるロンドン大学ユニバーシティ・カレッジのSunjeev Kamboj氏は、参加者はマインドフルネスのテクニックを学んだことで、お酒が飲みたいと感じたときにすぐにお酒に手を伸ばすのではなく、「お酒が飲みたい」という自分の感覚を客観的に観察することができたのではないか、と話しています。

出典:

Sunjeev K Kamboj, et al. Ultra-Brief Mindfulness Training Reduces Alcohol Consumption in At-Risk Drinkers: A Randomized Double-Blind Active-Controlled Experiment, Int. J. Neuropsychopharmacol, 2017; 20(11): 936–947.
https://www.wellandgood.com/mental-health-practices-2020/


マインドフルネス瞑想では、自分の呼吸や身体の動き・感覚に意識を向けます。

「良い」「悪い」という評価を与えず、浮かんできた考えを無理に追いやろうとせず、自分の「今ここで」の状態を冷静に客観的に観察する練習をするのです。

禁酒中の人が瞑想をすると、瞑想中に「お酒が飲みたい」という考えが浮かんでくるかもしれません。

あるいは、飲酒の原因となっている寂しさ・むなしさ・イラつきなどのネガティブ感情が湧き上がることもあるでしょう。

そのようなときには、その思考や感情を否定せずに「ああ、自分は今お酒を欲しているんだな」「またネガティブ思考が湧き上がってきた」と、客観的に観察して受け入れます。

その感情や思考にこだわってあれこれ考えを広げたり、無理に取り除こうとしたりはせず、自分の呼吸、身体の動き、感覚に意識を戻すのです。

このような練習を続けると、瞑想をしていないときに飲酒したいという考えやネガティブ感情が湧き上がってきた時にもすぐに反応せず、その思考や感情から少し距離を置き、客観視できるようになるといいます。

客観視できるようになると、お酒を飲みたいという欲求やネガティブ感情に振り回されることなく、お酒を飲まずにいることができるとされています。

ネガティブ思考が湧きにくい



マインドフルネス状態に近い人ほど、心配、気分の落ち込みといったネガティブな思考が浮かびにくく、浮かんできた時にもその感情から距離を置いて、手放すことができるということが科学的研究で明らかにされています。

お酒を飲みたくなる原因のひとつであるネガティブな感情。

先ほど解説したように、マインドフルネス瞑想を実践すると、自分の思考や感情を客観的に観察できるようになるといわれていますが、同時に、ネガティブ感情自体が湧き上がりにくくなるため、「お酒を飲んで忘れたい、すっきりしたい」という状況が減るといいます。


出典:file:///C:/Users/Kazumi%20Ota/Downloads/Frewen2008_Article_LettingGoMindfulnessAndNegativ.pdf

欲求とストレスをコントロールできるようになる



米国のイェール大学の研究者らは、画像検査を使ってベテランの瞑想家たちの脳の働きを調べました。

その結果、瞑想をしているときもしていないときも、ベテランの瞑想家たちは欲求やストレスをコントロールする機能や、自分自身をモニタリングする機能を持つ脳の部位の働きが活発であることがわかりました。

出典:https://www.pnas.org/content/pnas/108/50/20254.full.pdf


つまり、瞑想を続けると飲酒を含めて「~したい」という欲求や、飲酒のきっかけとなりやすいストレスに振り回されることなく、理性的に行動する能力が高まるとされています。

瞑想はお酒よりも快楽が上?



瞑想を継続している経験者の話によると、瞑想で得られる快楽はお酒で得られる快楽よりも上だといいます。


瞑想を実践すると、脳も気分もすっきりして、頭が軽くなったと感じる人が多くいます。

また、多くの人が夜の寝つきが良くなり、朝までぐっすりと眠ることができるようになります。

集中力がアップし、同時にリラックスする効果もあります。

瞑想を実践しても二日酔いもありませんし、失態をさらすこともありません。

アルコール中毒のリハビリにも取り入れられている瞑想。半信半疑で瞑想を始めた多くの人が、その効果を実感して継続しています。

禁酒に効果的な瞑想のやり方① 場所



瞑想は屋内でも屋外でも実践できますが、いずれの場合でも人の行き来が少なく静かな場所を選びましょう。

室内で行う場合は周辺を整理整頓すると気分も鎮まりやすくなります。

寒すぎたり暑すぎたりしないように、服装や温度を調整します。

禁酒に効果的な瞑想のやり方② 準備



瞑想用のスローテンポな音楽や、キャンドル、エッセンシャルオイル、お香などは、瞑想を行うにあたって気分を切り替えリラックス効果を高めるために有効です。

音楽と共に瞑想を実践する際には、ゆったりとリラックスできる音楽を選びましょう。

Youtubeではさまざまなヒーリングミュージックが配信されていますので手軽に取り入れることができます。

室内ならばキャンドルを灯して瞑想を行うのもおすすめです。

アロマキャンドルで香りをプラスしたり、本物のキャンドルの代わりにLEDキャンドルを使用してもよいでしょう。

エッセンシャルオイルやお香には、気分をリフレッシュしたりリラックスさせる効果があるといわれています。

その日の気分や目的に合わせて香りを使い分けてもよいでしょう。

このように、キャンドルや香りをプラスすると、楽しみながら瞑想を行うことができて、瞑想を継続するモチベーションにもつながるかもしれませんね。

禁酒に効果的な瞑想のやり方③ ポイント



継続は力なり

瞑想は継続することが大切ですが、続けるのは苦手という方も少なくないでしょう。

上述したように、音楽、香り、キャンドルなどを使い分けながら瞑想を行うと、継続するモチベーションになるかもしれません。


効果を実感するまでには少なくとも4週間続けてみましょう。

8週間継続することができると、多くの方が効果を実感すると報告されています。


瞑想アプリの使用

音声ガイダンスで効果的な瞑想をガイドしてくれる瞑想アプリもおすすめします。

瞑想アプリ「Relook」、目的に合わせた複数のコースが用意されており、瞑想の初心者から経験者まで幅広く利用できます。

瞑想アプリを利用すると集中しやすく、より効果的な瞑想を行うことができるとされています。

また、多くの瞑想アプリには記録機能が搭載されていたり、継続を応援するメッセージが表示されたりと、瞑想を継続して習慣化できるような工夫もされていますので、継続するのが苦手という方にもお勧めです。

Relookアプリについてはこちらを参照してみてください。


禁酒に効果的な瞑想のやり方④ 実践



ここではマインドフルネス瞑想のやり方をご紹介します。

「調身」ー姿勢を整えます

マインドフルネス瞑想には、決まった体勢はありません。寝る、座る、立つ、歩くなど、好きな体勢を選びましょう

ベッドやヨガマットに横になって行う場合には、つま先から頭頂までなるべくまっすぐになるように寝て、腕は身体に沿って伸ばします。手のひらは上に向けて軽く開きます。

座って行う場合には、自分が心地よいと感じる座り方を選んで姿勢を正します。全身の力を抜いて手は両膝の上に置きます。

歩きながら行う場合には、手と腕の力を抜いて全身をリラックスさせます。何度か深呼吸をしたら、自分の足の裏に感じる地面の感触に意識を向けましょう。


「調息」ー呼吸を整えましょう

次は呼吸です。

深呼吸を数回行ったら、ゆっくりと腹式呼吸を始めます。

自然な呼吸の長さを維持してください。

無理に息を深く吸ったり、全部吐ききろうとする必要はありません。

横になったり座ったりしながらの瞑想では、深呼吸のタイミングで目を閉じます。

「調心」ー心を整えましょう

呼吸が整ったら意識を向ける対象を決め、その対象の現在の状態に意識を集中させます。

基本的に自身の呼吸に集中しますが、音声ガイダンスや音楽と共に瞑想を行う場合にはそういった音に集中しても良いでしょう。

歩きながらの瞑想では、ゆっくりと歩く自分の身体の動作、足裏の感覚、重心が交互に移動していく様子などに集中します。


瞑想には他にもたくさんの種類があり、専門家の指導を必要とするものもあります。

インターネットや書籍から、どのようなスタイルの瞑想があるのかを調べることができますので、自分に合った方法を探してみましょう。


マインドフルネス瞑想で禁酒に成功した人の体験談


30代後半の女性Aさんは、数年前、自分のアルコール摂取量が増えてきたことに気が付きました。

それまでは、週末にワインを飲むだけだったのに、気が付いたら毎日飲酒をするようになっており、Aさんにとってアルコールは「飲みたいもの」から「必要なもの」になっていたのです。

48時間禁酒をするだけでもとても難しかったといいます。

マインドフルネス瞑想を実践し始めてから、毎晩の習慣となっていた飲酒という行動を客観的に観察できるようになりました。

まるで、自分自身をモニターで見ているかのような感覚だといいます。

さらに、ワイングラスを見ると自動的に「お酒を飲みたい」という欲求が湧いてきていたのですが、マインドフルネス瞑想を始めてから、そのような欲求が湧いているということにも冷静に気が付くことができるようになりました。

マインドフルネス瞑想によって自分の行動や感覚を客観視できるようになると、単に「もうお酒は飲まない」と決断して禁酒を試みるよりも、毎晩の飲酒をやめるのがずっと簡単だったそうです。

Aさんがマインドフルネス瞑想を始めてお酒を飲まなくなってから数年がたちますが、今のところはお酒を飲みたいという欲求は感じないといいます。

またいつかお酒を飲みたくなる時が来るかもしれないけれど、今はマインドフルネス瞑想を実践しながらお酒を飲まなくても快適に生活をしているそうです。


まとめ

飲酒をやめるのは簡単なことではありません。

しかし、これまでにお酒をやめようとして何度も失敗してきたという人が、半信半疑で瞑想を始めてみたら見事に禁酒に成功したという例はたくさんあります。

もしあなたも禁酒をしたいとお考えならば、ぜひ今日から瞑想を始めてみませんか。



※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。