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瞑想ブームがやってきた!瞑想は気持ちがいいの?
今、世界中で猛威を振るう新型コロナウイルス。
あなたも、先が見えない不安、制限される行動、会いたい人に会えない孤独など、過去に経験したことがないストレスを抱えているのではないでしょうか。
そんな中、人気を集めているのが「瞑想」です。
自宅で簡単に行える瞑想アプリが売上を伸ばしており、アメリカの調査会社Appinventivの報告によれば、2015年の$8M(約8億円)から2019年の$195M(約195億円)まで年平均成長率122%で拡大しているそうです。
世界中で多くの人が瞑想の効果を感じ、習慣化しています。
しかし、実際に瞑想を試して1回目に思う感想は
「じっとしているのが苦痛」「眠くなってしまう」「特に変化を感じない」
など、効果に疑問を感じるものが大半でしょう。
あなたも効果を期待しすぎてガッカリしてしまったことがあるかもしれませんね。
そこで今回は、瞑想で気持ちよさを感じる仕組みと、気持ちよくなるコツをお伝えします。
リラックスできるから
ドイツのマックス・プランク研究所の研究チームは、3つの瞑想トレーニングプログラムを1日30分で週6回、3カ月以上実践した参加者の脳活動を詳しく調べました。
その結果、別名“ストレスホルモン”と呼ばれるコルチゾールの分泌を最大で51%抑制し、ストレスを低減していることが確認されました。
瞑想訓練を受けている人々は、人間関係のクオリティと協調性を向上させることができるだけでなく、脳神経接続の構造に変化を生み、結果的にストレスレベルが減少することがわかっています。
また、瞑想を行うことにより、自律神経も整い、副交感神経が優位になります。
自律神経とは作用が相反する2つの神経、すなわち交感神経と副交感神経に分類されます。車で言えばアクセルとブレーキのような存在です。
日中は交感神経が働き、体を活動的な状態にし、夜は副交感神経が働き、体を休息させる役割があります。ところが、仕事などのストレスが多いと、交感神経の働きが強くなり続けてしまいます。
瞑想には、そのストレスを軽減させる効果が期待できるため、自律神経のバランスが整えられるといわれています。
そのため瞑想をするだけで、リラックスすることができるのです。
トランス状態になれるから
あなたは「トランス」と聞いてどんな状態をイメージしますか?
ヒッピーたちが大麻を吸って、踊り狂っている姿でしょうか。
しかし、トランスとはそんな、ほど遠い世界のものではありません。
トランス状態とは、「通常とは違う意識」にある状態のことで、
わざわざ西海岸に行かなくても、「通常の意識」を超越(トランス)することは可能です。
では、「通常の意識」と「通常とは違う意識」とは、そもそも何でしょうか。
通常の意識で世の中をとらえると、私たちは、主観の世界で生きていることになります。
主観は、エゴと言い換えることができます。
主観の世界で、私たちは、怒ったり、悲しんだりします。
そういう気持ちがなぜ起こるかと言えば、何かを期待しているのに、その通りにならない。
期待が裏切られしまったと判断するからです。
やさしくして欲しいのに、冷たくされて悲しい。酷いことをされて、腹が立つ。
・・・やさしくして欲しいと望むのも、冷たくされたと判断するのも、すべて自分自身ですよね。
このように、「期待」や「裏切り」は、勝手な思い込み、主観から生まれるものなのです。
その結果、様々な出来事に対して、感情が揺れ動いてしまう。
あなたにも心当たりがありますよね。これが通常の意識です。
これらの雑念や思いを瞑想によって取り払い、客観性をもって物事や感情と向き合う。
それがマインドフルネスであり、「トランス状態」なのです。
鎌倉一法庵の住職である山下良道氏は、「私の二重構造」という言葉を使って分かりやすく説明しています。
『禅はそもそも「私の二重構造」を前提としています。修行を始めるやいなや「本来の自己」を探究するのが禅だと教えられます。(中略)「自分だと思い込んでいたけれど、本当の自分ではないもの」があることを前提とした概念です。それを自我とかエゴとも言えるでしょう。』
『自我やエゴがマインドフルであろうとしても、それは不可能。(中略)自我の思いではない、明晰で、静逸な意識。それがマインドフルネス。「もうひとつの私」です。そして、これが禅の言うところの本来の自己なのです。』
(出典:集英社 「マインドフルネス×禅」であなたの雑念はすっきり消える 山下良道著)
トランス状態になるために、大麻をするもなければ、大音量で音楽を聴く必要はありません。
ただ、静かに座って瞑想を行うだけでいいのです。
頭の中がすっきりするから
あなたがなにもせず、ぼーっとしている時、脳は一体どのような状態になっているのでしょうか。
なんと、一日に脳が消費するエネルギーの75%は、この何もしないでぼんやりしている時に消費されています。
この時、内側前頭前野、後帯状皮質、海馬などの複数の離れた脳領域が、同期・協調して働きネットワークでつながって活動することが観測されています。
ワシントン大学のマーカス・レイクル教授は、このネットワークをデフォルト・モード・ネットワークと命名しました。
このデフォルト・モード・ネットワークが暴走してしまうと、過去の後悔や未来の不安など「今の自分」とかけ離れたことを無意識に次々と連想させてしまいます。
考えても意味のないことを繰り返し続ける思考の堂々巡りが、脳にどんどん疲労を蓄積させていることが指摘されています。
(参考:ダイヤモンド社 最高の脳の休息法 多賀谷亮著)
この暴走を食い止めるようにする方法、それが瞑想です。
ジャドソン・ブルワー博士がイェール大学で行った研究により、瞑想をすることでデフォルト・モード・ネットワークの活動が低下するということがわかっています。
そして、無駄な脳エネルギーの消費がなくなり、脳の休息につながり、頭がすっきりするというわけです。
ドーパミンが出るから
ドーパミンとは神経伝達物質の一種で、私たちの「やる気」に大きく関わる脳内ホルモンのひとつです。また、運動調節に関連するといった機能を担っています。
研究によると、ヨガニドラ(深くリラックスする瞑想をベースにしたヨガ)によってドーパミンの放出が65%増加することがわかっています。
(引用:Increased dopamine tone during meditation-induced change of consciousness)
ドーパミンの作用として
・幸せな気持ちになる
・集中力がアップする
・ポジティブになる
と言われています。
ただ、ドーパミンが過剰に分泌されると、アルコールやギャンブルなどの依存症に陥りやすくなります。
ドーパミンの過剰な分泌を抑えてくれるのがセロトニンを呼ばれるホルモンです。
瞑想を行うことによって、セロトニン、ドーパミン、オキシトシンの分泌が活性化されるので、体を休ませ、ゆっくりくつろがせて、さらに疲労を回復させることが期待できます。
気持ちいい瞑想を行うためのコツ
瞑想で効果を実感するために必要なのは「瞑想することに執着しないこと」です。
瞑想に効果があると分かれば、その効果を早く実感したいと思うのが人間です。
しかし、最初のうちは瞑想がうまくできないし、効果も感じられません。
瞑想に過度な期待を抱くと、瞑想中に雑念がわいた自分を責めたり、瞑想の効果を感じられなくてガッカリしたり・・・思い込みにドップリとはまった状態になってしまいます。
効果を実感するためには、頑張らない。効果を期待しない。
トンチのような、哲学のような、不思議な話ですね。
このことを踏まえたうえで、瞑想に集中しやすくなるコツをご紹介します。
雑音を排除する
瞑想は自分の体や呼吸に意識を向ける作業です。
周りの人の目や雑音が、あなたの集中力の妨げになってしまうかもしれません。
自室のベッドやソファの上など、落ち着きやすい場所で瞑想を行うことをオススメします。
ここで取り入れてもらいたいのが瞑想アプリです。
relookのアプリをぜひ試してみてください。
瞑想の誘導音声だけでなく、気持ちがリラックスできるような焚き火や山頂など自然音が数多くそろっており、聞きながら瞑想をすると集中しやすくなります。
ハッピーになるという目的を意識する
瞑想には、「なにかメリットを得よう」という目的意識を持たない姿勢が望まれます。
しかし、瞑想の最後にポジティブな感情を引き出すことで、ハッピーな気分を手に入れる方法もあります。
呼吸瞑想を例に挙げて説明しましょう。
まず、リラックスした状態で座ります。
次に、ゆっくり3回深呼吸をして、心と体を落ち着かせましょう。
今度は自然な呼吸に戻し、その呼吸に意識を向けます。
鼻の穴、おなか、体全体、どこでもいいので注意を向けましょう。
皮膚がかゆくなったり、いろんな考えが浮かんできたりして気が散っても、それを認め、そっとそれを手放し呼吸に意識を向けます。
ここまでが、普通の呼吸瞑想です。
最後に、自分が喜ばしいと感じるように促します。心の中で唱えましょう。
「息を吸います。私は穏やかです。
息を吐きます。そしてほほえみます。
今この瞬間は、すばらしい。」
(参考:英治出版 サーチ・インサイド・ユアセルフ―仕事と人生を飛躍させるグーグルのマインドフルネス実践法 チャディー・メン・タン著)
気持ちいい瞑想を行った時の効果
心が穏やかになる
あなたが心穏やかでなくなるときはどんな時ですか?
なにか未来に対して不安を感じている、もしくは、過去の失敗を思い出し落ち込んでしまっているときではないでしょうか。
瞑想は心を穏やかにしてくれる、このことを科学的に分析した研究を紹介しましょう。
2003年マサチューセッチュ工科大学名誉教授ジョン・カバット・ジン氏とウィスコンシン大学のリチャード・デビットソン氏が行った研究です。
健康だがストレスを感じている労働者に、8週間のマインドフルネス・ストレス低減法(MBSR)を実施し、その効果を検証しました。
その結果、瞑想を実践した人々は、MBSRを実施しなかった対象グループと比べ、右の前頭前葉よりも、感情の表出と関係する左の前頭前葉の活動に増加が見られました。
つまり、瞑想をした人たちは、そうでない人たちよりも、不安や落ち込みといった感情に上手く対処しており、いわゆる「心の知能指数(EQ)」が高くなったことが示唆されました。
(参考:北大路書房:マインドフルネス・ストレス低減法 ジョンカバットジン著)
集中力がアップする
集中しようと思っても、次々と雑念が頭の中に浮かんでしまい、集中できない。
あなたも経験あるでしょう。自分には集中力が足りないのではないかと感じていませんか?
しかし、異常なことではありません。人間は脳の構造上 “集中しにくいようになっている” のです。つまり、雑念まみれなのが普通なのです。
瞑想は この雑念を打ち消し、脳を活性化させてくれます。
また瞑想中の集中力を高めてくれるだけではなく、雑念にまみれにくい脳へ構造を変えることができるのです。
まとめ
瞑想が気持ちいいと感じるコツをお伝えしてきました。
しかし、瞑想は気持ちよさを感じるためにやるものではありません。
何度も言うようですが、瞑想は目的意識を持たずに行うのが本来の方法です。
快楽を求めてしまうと、欲望や主観が生まれ、マインドフルネスには程遠くなってしまいます。
瞑想は、筋トレと同じです。筋トレを1日したからといってすぐに筋肉がつく訳ではありません。
そこをしっかりと理解したうえで、この記事を参考にしていただければ幸いです。
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。