記憶力や脳のパフォーマンスは、仕事の効率を大きく左右する重要な能力です。
しかし脳を鍛えるのは中々難しく、またやり方もよくわかりません。
勉強をすればいいのか?勉強と言っても何をすればいいの?と、モヤモヤしたまま一歩を踏み出せずに終わることもしばしばです。
そこでこの記事のテーマは、「瞑想で手軽に脳を鍛えよう」です。
脳のトレーニングには瞑想が有効であること、実際にどんな効果があるのかを解説していきます。
目次
記憶力と関係のあるθ(シータ)波とは?
ではまず、脳の基礎知識を簡単に確認しておきましょう。
脳に対する瞑想の効果はいくつかありますが、今回は記憶力に焦点を当てます。
そこで記憶力と関係する脳の活動であるθ波(シータ波)についてご説明します。
シータ波は脳波の一種です。
脳波とは脳のリズミックな電気活動のことで、そのリズム(周波数)に応じてα波、β波、θ波などに分類されます。
シータ波は今挙げた3つの中で最もゆったりとした脳の活動で、1秒間に脳活動の上がり下がりが4~8回見られます。
このシータ波と記憶力の関係を簡単にお話しすると、例えば脳の前側の部分である“前頭葉”におけるシータ波が記憶力に重要だと言われています。
今あえて長ったらしく「前頭葉におけるシータ波が」と言ったのはシータ波と記憶力の関係は単純では無いからで、脳の場所によっては記憶力の低下と関係するシータ波もあったりするのです。
決して「シータ波がたくさん見られると記憶力がいい」といった単純な話では無いのでご注意を。
瞑想で記憶力はアップする?
ここからが本題です。
結局、瞑想によって記憶力が上がることはあるのでしょうか?
答えは”イエス”です。
これも少し面倒な書き方をしましたが、あくまで「記憶力が上がる”場合がある”」ということで、どんな瞑想のやり方で誰がやっても記憶力が上がる訳ではありません。
では記憶力を高めるにはどのように瞑想をすれば良いのでしょうか?
これに関してはただ一つの正解がある訳ではなく色々なやり方が存在しますので、いくつか科学的な研究をご紹介してそこで使われた瞑想法を見てみましょう。
まず、ニューヨーク大学が2019年に報告した研究結果では、瞑想の経験が無かった人たちに毎日13分の瞑想を8週間続けてもらうと、短期記憶の能力や注意力や認知機能の向上が確認されました。
ちなみにネガティブな気分や不安が抑えられる効果もありました。
この効果は同じ期間ラジオを聞いていた人たちには見られなかったので、確かに瞑想がこの効果をもたらしていると言えるでしょう。
加えて、瞑想を始めて4週間の時点ではこの効果がハッキリとは確認できなかったことから、毎日13分の瞑想で効果を得るには8週間が目安の期間と言えるかもしれません。
この研究で使われた瞑想法は、呼吸に集中する瞑想と体をスキャンする瞑想法です。
被験者は瞑想の音声ガイドを聴きながら、呼吸に集中したり、体の感覚に意識を向けて体の状態をスキャンしたりしました。
非常に簡単な方法で、これを1日13分行うだけで記憶力が上がるというのは中々すごい話ですよね。
もう一つ、長年瞑想を続けている人とそうでない人の違いに関する研究成果をご紹介します。
ケンタッキー大学の研究によれば、長年瞑想を続けている瞑想家は、瞑想をしていない人と比べて注意力と記憶力がやはり高かったそうです。
ちなみにこの研究では注意力そのものに加えて注意力の維持など様々な能力が高かったそうです。
記憶力についても短期記憶も長期記憶も高いという結果でした。
この研究に参加した瞑想家は平均して6年瞑想を続けていたそうで、瞑想を年単位で続けていると記憶力など脳の能力で他の人から一歩抜きん出ることができるかもしれませんね。
アプリを使った瞑想とその効果
上記でご紹介した研究では、どれも瞑想のための音声ガイドを使って被験者が瞑想を行なっています。
私たちが日常的にそうした音声で瞑想を行おうとすると、恐らくスマートフォンなどのアプリを活用することになるでしょう。
でもスマートフォンのアプリって集中力を散漫にするイメージがありませんか?
ついついSNSを開いてしまったりしますよね。
しかし、アプリを使って瞑想を行っても、効果があることが研究によりわかっています。
カリフォルニア大学サンフランシスコ校による2019年の報告では、1日数分間のアプリを使った瞑想を6週間続けると、注意力や記憶力に効果があると実証されました。
アプリでも瞑想の効果が得られるとわかったことで、瞑想アプリ、Relookの信憑性も上がりますね。
Relookアプリでは、音声ガイドによってユーザーの瞑想を補助してくれます。
アプリでも瞑想の効果が得られること、そして多くの研究で音声ガイドが使われる点を考慮すると、アプリといえど侮れない効果が期待できそうです。
Relookアプリについてはこちらを参照してみてください。
瞑想が脳に与える効果
瞑想が記憶力を向上させる根拠をいくつか見てきましたが、このとき瞑想が脳に与える影響はどのようなものでしょうか?
瞑想の脳に対する影響は本当に様々で、瞑想の種類によっても異なります。
瞑想の種類は大まかに3つあり、1つ目が一つのものに集中するサマタ瞑想、2つ目がたくさんのものに注意を向けるヴィパッサナー瞑想、そして最後がマントラという無意味な文字列をひたすら唱える超越瞑想です。
瞑想ごとの脳活動の違いに関しては例えば、ボーっとしている時に活動する脳のネットワーク(デフォルトモード・ネットワーク)への影響が異なります。
サマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想ではこのデフォルトモード・ネットワークの活動が低下し、超越瞑想では反対に活性化すると言われています。
これはボーっとしている時の指標ですから、簡単に言えば超越瞑想では脳がボーッとしたリラックス状態になり、サマタ瞑想やヴィパッサナー瞑想では反対に高い集中状態になると解釈できるでしょう。
また先ほど話にあげたシータ波に関しては、脳の前側にある前頭前皮質や前帯状皮質におけるシータ波がサマタ瞑想やヴィパッサナー瞑想で上昇すると言われています。
瞑想によるこのシータ波の上昇が記憶力向上の原因であるとは直接証明されてはいませんが、恐らくその2つは関係があるだろうと考えられています。
実際のマインドフルネス瞑想のやり方
ここまでで、瞑想が記憶力向上に効果的であることを科学的根拠をもとにお話ししました。
理屈がわかったところで、最後に記憶力を上げるための瞑想法をご紹介して終わりとします。
今回は最も手軽にできる、「呼吸に集中する瞑想」のやり方をご紹介します。
先ほどの話で言えばサマタ瞑想に分類するもので、前頭葉のシータ波を活性化して集中力や記憶力を上げる瞑想法です。
今回は、瞑想を10分実践する想定にしましょう。
もし10分では毎日続けるのが難しそうなら、時間を縮めても構いません。
では早速やり方を見ていきましょう。
1. 10分に設定したタイマーを開始する。
2. 楽な姿勢をとって目をつぶる(座っても立っても構いません)。
3. 自然に行なっている呼吸にひたすら意識を集中する。
4. 考え事をしてしまったら、「雑念、雑念、雑念」と3回唱えて、再び意識を呼吸に戻す。
以上が呼吸に集中する瞑想法です。
呼吸に集中するコツは、例えば吸った息が鼻や喉を通る感覚に意識を向けたり、呼吸によってお腹が上下するのを感じたりと、とにかく息を吸って息を吐くプロセス一つ一つに意識を向けましょう。
各プロセスで体がどうなっているかを感じることがポイントです。
また呼吸をゆっくり行うのも大事です。大体4秒で吸って6秒で吐くのが良いと言われています。
ただ自然な呼吸である方が良いので、これを目安として、一番自然に行えるペースで呼吸しましょう。
まとめ
この記事では瞑想の記憶力に関する効果と、その脳科学的な知見をご紹介しました。
瞑想が注意力や記憶力さらには集中力などに効果があることは、科学的にも色んな人の経験からも知られていることです。
そうした効果を支えているのは瞑想による脳の変化だと考えられています。
今回紹介した前頭葉のシータ波は記憶力や注意力に影響すると言われており、そのシータ波が瞑想によって強くなると言われていますから、恐らくこれが瞑想による記憶力向上の仕組みの一つなのでしょう。
ちゃんと証明するにはさらに研究が必要ですので、そこは今後の展開に期待ですね。
科学的に実証された瞑想との良い付き合い方を知るために、どんどん研究が進んでいって欲しいものです。
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。