マインドフルネス瞑想とは?

日本でも少しずつ広がりを見せている「マインドフルネス瞑想法」をご存知でしょうか?瞑想というと、伝統を重んじるお堅いイメージがあるかもしれませんが、最近はその形が変わってきています。瞑想は精神面をベストな状態に保つための、心のトレーニング法として注目されているのです。その中でも宗教色を取り除かれたマインドフルネスは、信仰や国籍に関わらず、どんな方でも行うことができます。

今、この瞬間」に注目し、自分自身が「現在」に存在していることを認識する瞑想法です。意識を常に呼吸に向け、浮かんでくる思考や感情にとらわれずに、瞑想を続けます。繰り返し行うことで、不安やストレスが軽減でき、身体にも変化をもたらしてくれるのです。

精神を鍛えるためのメンタルトレーニングや、精神疾患を持つ方のカウンセリングとして用いられています。企業のトップやアスリートなど、最高のパフォーマンスが求められる人たちの間でも、習慣化されるようになってきました。GoogleやYahoo、Facebookなどの有名企業も、社員のリーダーシップや集中力向上を目指してマインドフルネスを企業研修に取り入れています。

マインドフルネス瞑想法は、1960年代にアジアの移民によってアメリカに持ち込まれたと言われています。しかし大衆に広がることはなく、臨床的な技法としてのマインドフルネスが体系化されたのも1979年になってからです。マサチューセッツ大学のジョン・カバットジン博士によって「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」が開発されました。行動療法として用いられましたが、最初の頃はあまり注目されず、社会に広く浸透したのは2000年以降です。その後、日本でも普及しメディアでも取り上げられるようになりました。

マインドフルネス瞑想の効果

マインドフルネス瞑想法を続けていると心身ともに良い影響を与えることが、さまざまな調査によって明らかになってきました。なんとなくリラックスできる、という感覚的なものだけでなく、研究のデータが効果を実証しています。 

アメリカの国立補完統合衛生センターNCCIH)が助成した研究が2011年に実施されました。279名の被験者たちは、ジョン・カバットジン博士のマインドフルネスストレス低減法(MBSR)を8週間行いました。その後の調査でメンタルヘルスや、生活の質を表すQOLの改善と関係していることが分かったのです。

別の実験では、慢性不眠の54名の被験者がマインドフルネスストレス低減法(MBSR)と、不眠に特化したMBSR(不眠に適したマインドフルネスの療法かMBTI)とセルフモニタリング法を行いました。するとマインドフルネス瞑想プログラムは睡眠に効果があることが分かり、MBTIはMBSRよりも不眠に対する大きな改善が見られたのです。(参考:厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』)

ジョン・カバットジン博士のマインドフルネス瞑想法は、マサチューセッツ大学メディカル・センターのストレス・クリニックのクライアントに対して行われてきました。痛みを持つクライアント42名を2つのグループに分け、両グループに標準的な医療処置と理学療法などの治療を受けてもらいます。

片方のグループのクライアント21名は、これらの治療と並行して、マインドフルネス瞑想のトレーニングも行いました。「マギル・メルザック痛み尺度(PRT)」を用いて両グループの痛みを測定すると、瞑想を行ったグループでは、36%も痛みが改善されたのです。瞑想を行わなかったグループに変化はありませんでした。

また「気持ち」に関しても、瞑想をプラスしたグループでは87%の進歩が見られ、もう一方は22%に留まりました。マインドフルネス瞑想法を継続していると、痛みが軽減され、否定的な気持ちが減り、積極的な気持ちが増加することが分かったのです。(参考:「ジョン・カバットジン(著)Jon Kabat-Zinn(著,原著),春木豊(翻訳).(2007)マインドフルネスストレス低減法) 

マインドフルネス瞑想法

気軽に取り組めるマインドフルネス瞑想法を、実際に行ってみましょう。椅子に座って行うマインドフルネス瞑想法と、寝ながら行うマインドフルネス瞑想法のやり方をご紹介します。どちらもできる範囲で取り組んでみましょう。15分程度が目安ですが、長くて続けられない場合は5分でも、1分でも良いので行ってくださいね。慣れてきたら少しずつ時間を伸ばしていきましょう。

・椅子に座って行うマインドフルネス瞑想法
1椅子に浅く座り、背筋を伸ばします。身体の強張りを緩め、リラックスしましょう。
2手は太ももの上に楽に置きましょう。足は床に付けて、少し広げて安定させます。
3大きく息を吐ききり、吐いた分だけ吸い込みましょう。
4深く大きな呼吸を繰り返し行います。
5雑念が湧いてくるたびに、意識を呼吸に向けましょう。

何かに集中し続けるのは、根気の要る作業です。感情や思考が湧いてくると、そちらに気を取られてしまい、今瞑想をしていることを忘れてしまいます。瞑想中に何度もそのようなことが起こるでしょう。その度に意識を呼吸に戻して、何かを考えたりすることに集中するのを断ち切ります。

私たちは常に何かを考え続けていますよね。ぼーっとしていても、明日の予定や今夜の献立など気になることを頭に浮かべていませんか?マインドフルネス瞑想は、そんなフル稼働している頭の中を休憩させるようなイメージです。瞑想中は「今、この瞬間」だけを感じてみましょう。次は仰向けで行うマインドフルネス瞑想法です。

・寝ながら行うマインドフルネス瞑想法
1仰向けになります。
2全身の力を抜いてリラックスしましょう。
3腕は自然に身体の横に置きます。
4腹部を意識しながら、息を吐き切ります。
5ゆっくりと息を吸い込み、お腹の動きを感じましょう。
6呼吸に意識を向け続けます。
7思考にとらわれそうになったら、再び呼吸に集中しましょう。

マインドフルネス瞑想をする上でのポイント

自宅でマインドフルネス瞑想法に取り組む上で、いくつか押さえておきたいポイントがあります。気軽に行うことができますが、基本を知っておけば瞑想の効果をより感じることができるようになるでしょう。

・態度を整える
ジョン・カバット博士の著書では、マインドフルネス瞑想法を行う上で、基本的な態度が重要だとされ、7つの項目が挙げられています。これらを念頭に置いてから、瞑想に望むようにしましょう。 

1自分で評価をくださないこと
2忍耐づよいこと
3初心を忘れないこと
4自分を信じること
5むやみに努力しないこと
6受け入れること
7とらわれないこと
(引用:「ジョン・カバットジン(著)Jon Kabat-Zinn(著,原著),春木豊(翻訳).(2007)マインドフルネスストレス低減法 

・環境を整える
瞑想を長く経験してきた方であれば、どのような環境であっても集中することができるでしょう。けれど初めのうちは、瞑想自体に慣れていないため、環境を整えることは重要です。マインドフルネス瞑想法を行うときには周りに人が居ない、静かで集中しやすい場所を選んでくださいね。寒過ぎたり、暑過ぎたり、明る過ぎたりといった身体の刺激になることもできるだけ避けましょう。瞑想の妨げになるものは無くして、リラックス効果を高める香りや照明を取り入れると良いですよ。

・自分に合う時間帯を見つける
習慣にするためには、自分のライフスタイルに合わせて、行いやすい時間帯がいつなのかを把握しておくと良いでしょう。朝起きてから朝食を取る前に瞑想の時間を作る、と決めておけば、忘れることもなく、生活のリズムも整いやすくなります。静けさの中で集中し、自分が「今、この瞬間」に居ることを実感し、心を鎮めると、穏やかな気持ちで1日のスタートを切ることができるでしょう。生活を見直すきっかけにもなるため、少し早めに起きて朝に行うのがおすすめです。日中なら仕事の休憩時間や、学習の合間など、作業の間に行うと疲れた頭をリセットできますよ。

・期待し過ぎない
人間関係に悩んだり、自信がなかったりする方は自分に厳しすぎるからかもしれません。自分の失敗や弱点を否定し続けるのは辛いものですよね。やめようと思っても、長年の思考の癖を取り払うのは簡単なことではありません。

マインドフルネス瞑想中にも、うまくできない自分を責めてしまうことがあるでしょう。けれどありのままを見つめることもトレーニングです。マインドフルネス瞑想の間は、過去の過ちや、自分の受け入れ難い面が頭に浮かんできたとしても、受け流すようにしましょう。最初は考えたり、悩んだりしてしまうかもしれませんが、だんだんと思考をただ眺めることができるようになってくるはずです。焦らずにマインドフルネス瞑想を根気強く、継続していきましょう。

マインドフルネス瞑想法を学べるオススメの本5選

マインドフルネス瞑想法に関する書籍は多数販売されています。理論を学べるタイプから、CDやDVD付きのマインドフルネス瞑想法を実践的に行う本まで、バラエティに富んでいるのでお気に入りを見つけてくださいね。1冊でも持っているとモチベーションも上がりますよ。おすすめの書籍を5冊ご紹介します。 

①「実践!マインドフルネス DVD(体験に気づき、反応を止め、パターンから抜け出す理論と実践)」(サンガ)熊野宏昭
1980円(税込)
DVD付きになっているので、実践的な学びを必要としている場合にうってつけです。活字では理解しにくいという場合は映像でイメージを掴みましょう。頭で考えるよりも、身体で覚える方が得意な方にはピッタリです。

②「マインドフルネスストレス低減法」(北大路書房)ジョン・カバットジン/春木豊(翻訳)
2420円(税込)
マインドフルネスストレス低減法(MBSR)を開発したジョン・カバットジン博士の書籍が翻訳されているため、詳しい理論を知りたい方向けです。日常に取り入れやすい食べるマインドフルネス瞑想法や、歩くマインドフルネス瞑想法も紹介されています。 

③「グーグルのマインドフルネス革命: グーグル社員5万人の「10人に1人」が実践する最先端のプラクティス」(サンガ)サンガ編集部
1650円(税込)
Googleが社員の能力向上のために、企業研修として活用された、マインドフルネス瞑想法の取り組みについて書かれています。プロジェクトを始動した人材開発部門のビル・ドウェイン氏のインタビューも必読です。付録のCDで音声ガイドを聞きながら、実際にマインドフルネス瞑想法を行うことができます。

④「子どものためのマインドフルネス」(創元社)キラ・ウィリー/大前泰彦(訳)
1980円(税込)
カラフルなかわいいイラストで30のマインドフルネスが紹介されています。漢字には振り仮名が振ってあるので、子どもでも読みやすく、絵本感覚で気軽に読めるところがポイントです。動物や自然をイメージしながら行うため、楽しくマインドフルネスを体験できます。 

⑤「マインドフルネス瞑想入門」(WAVE出版)吉田 昌生
1760円(税込)
マインドフルネス瞑想法の効果が分かりやすく記載されています。基礎から瞑想を知ることができ、実践内容は忙しい方でも取り入れやすい短時間の瞑想法です。書籍にはCDが付いており朝の瞑想、夜の瞑想、3分間のミニ瞑想法など、マインドフル状態で過ごすための瞑想がいくつも紹介されています。

まとめ

マインドフルネス瞑想法は、誰もが取り組める心のトレーニング方法です。「無」になる必要も、長時間耐える必要もありません。自分のペースで進められて、短時間でも行えます。特殊な稽古や器具も不要で、経済的にも負担にならないところが嬉しいですよね。心身ともに健康へと導いてくれることは科学的に実証されており、信仰心がなくとも実践できる優れものです。毎日の習慣としてぜひ継続してくださいね。効果を感じるには個人差があるため、長期的な視点で捉えるようにしましょう。

初心者の方は書籍を購入したり、ネットで情報を集めたりした上で、マインドフルネス瞑想法の基礎を学んでから実践するのがおすすめです。理論や心構えを知った上で行うと、効果も感じやすくなります。さらに、習得した瞑想を日常に取り入れて継続するためには、瞑想アプリを使ってみましょう。
現役の医師が監修したマインドフルネス瞑想アプリのRelookは、300種類以上のコンテンツが揃っています。スマートフォンにダウンロードするだけなので、空いた時間にいつでも活用できますよ。音声ガイダンスに合わせて行うだけの瞑想や、睡眠音楽、自然音などもあり、あなたの目的に合致したコンテンツが見つかるはずです。ぜひマインドフルネス瞑想を日常に取り入れて、心と身体を健康に保ちましょう。

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※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。

参考文献
ジョン・カバットジン(著)Jon Kabat-Zinn(著,原著),春木豊(翻訳).(2007)マインドフルネスストレス低減法