感情をうまくコントロールする方法


あなたは自分の感情をうまくコントロールできないと感じたことはありませんか?


職場で怒っている人をみて気分を害されてしまったりすることもあるかもしれません。

それをどうにかうまく抑える方法はないのでしょうか。


今日は、そんな日常の疑問に答えた一つの論文を紹介します。

これを読めば、なぜ自分がつい感情的になってしまうのか、どうすれば感情的にならずに済むのかに対するヒントが得られるはずです。


実験内容


それでは早速、論文の紹介に移りましょう。

2011年にCerebral Cortex誌に報告された研究[1]では、感情と睡眠の関係に着目して以下のような実験を行いました。


実験参加者を36名集めてきて、彼らにシンプルな実験を行ってもらいました。

その実験とは、さまざまな感情を表現した顔写真を次々に見せ、それらにどの程度感情が揺さぶられたかを回答していくというものです。


顔写真で表現されていた感情は、恐れ・悲しみ・怒り・幸せの4種類でした。

まだわかりづらいという人もいると思いますので、もう少し詳しく説明しましょう。


例えば「恐れ」の感情を表現している顔写真を実験参加者が見た場合、その写真をみてどのぐらい恐れを感じたか、4段階で評価します。

1なら恐れを感じなかった、4ならとても恐れを感じた、というような感じです。


これを繰り返すことで、参加者が「どの程度感情を揺さぶられやすい状態か」を評価しました。

これが課題の概要です。


そして、今回の実験で明らかにしようとしたのは「感情と睡眠の関係」でした。

つまり、睡眠が感情に対してどのような影響を与えるのかをみようとしたのです。


そこで、36名のうち18名には、この実験を行った後に90分間の昼寝をとってもらい、残りの18名は昼寝をとらずに過ごしてもらいました。

より詳細にここまでの流れを整理しておきましょう。


実験参加者は全員、12時ごろに上記の感情に関する実験を行います。

次に、そのうち18名は90分の昼寝をとり、残り18名は昼寝をとらずに過ごします。

その後、17時に再度感情に関する上記の実験を行い、昼寝による感情への影響を検討しました。


実験結果

結果1:昼寝は感情の感じ方を変化させる。

睡眠は感情の感じ方に何らかの影響を与えたのでしょうか。

結果は明確でした。


90分間の昼寝をとったグループでは昼寝を取っていないグループに比べ、恐れ・怒りの表情に対してあまり感情を揺さぶられることはなくなり、また幸せな表情に対してはより強く幸福感を感じるようになっていたのです。

これらの変化は全て統計的に有意であり、偶然の差ではないようです。


たった90分間昼寝をするだけで、自分の感情に振り回されないで済むようになるんですね。

いや、それどころか、幸せそうな顔を見た時に素直に自分もポジティブな気分になることができるのだそうです。


睡眠の力、恐るべしといったところでしょうか。


結果2:レム睡眠が感情の変化を誘発する

この研究では、さらに興味深い解析を行なっています。

ここではその結果について紹介していきましょう。


研究チームは、「レム睡眠が感情をコントロールする能力と関わっている」のではないかと着目しました。

そこで、18名の昼寝を取った人たちの中でも、90分の昼寝中にレム睡眠が現れた人たちと、そうでない人たちとに分けました。


急にレム睡眠というワードが出てきたので説明しておきましょう。


私たちが普通に寝る時、実は大きく分けて2つの状態があることが示されています。

その段階とは、ノンレム睡眠とレム睡眠です。


英語で書くとNon-REM睡眠とREM睡眠で、REMとはRapid Eye Movement(急速眼球運動)の略です。

急速眼球運動の名の通りREM睡眠中には眼球がキョロキョロと急速に動いています。

もちろん、睡眠中なので意識はできないのですが。


一方のノンレム睡眠では、このような眼球運動は見られません。

レム睡眠は一般に「浅い眠り」と言われており、この時に起こされるとスッと起きれたり、またこのタイミングでは夢を見ていることが多いということも知られていたりします。


この不思議な状態であるレム睡眠が、感情のコントロールと関与しているのではないか、と考えました。

詳細は省きますが、もちろんこれは先行研究に基づいて立てられた仮説となっています。


さて、改めてこの解析を整理すると、この解析の目的は「レム睡眠が感情コントロールに関与しているかどうか確かめる」ことであり、それを検証するために、90分の昼寝中にレム睡眠が現れた人たちとそうでない人たちとに分けて検証したんですね。

結果はどうだったかというと、仮説ズバリの結果が得られました。


つまり、昼寝中にレム睡眠が現れなかった人たちでは、昼寝をとらなかった人たちとさして変わらない結果となっていたのです。


具体的には、恐れや怒りの表情を見たら以前と同じように感情が揺さぶられ、また幸せな表情を見ても以前と同じ程度にしか幸福度を感じませんでした。

一方、レム睡眠が現れた人たちでは、恐れや怒りの表情を見てもあまり感情を揺さぶられず、幸せな表情に対しては強く幸福感を感じていました。


瞑想と睡眠と感情のつながり


以上の結果から、昼寝は感情コントロールに非常に有効であることが示されました。

さらに、中でもレム睡眠と呼ばれる状態が現れることが、感情コントロールの向上に重要であることが示唆されました。


それでは、睡眠中にレム睡眠を増やす方法があれば、感情をうまくコントロールする能力が上がるのではないか、と考えられますね。

この方法はまだまだ研究結果がはっきりしているわけではないのですが、一つ興味深い論文を紹介しておきましょう。


その研究は2016年に報告されたもので、20名の瞑想熟達者と19名の瞑想初心者の睡眠を比較したものです[2]。

その結果、瞑想熟達者ではそうでない人と比較して中途覚醒が少なく、かつレム睡眠が長いという結果が得られました。


この差は、統計的に有意で明確な差異でした。


このような、睡眠と瞑想の研究はまだそれほど多くなく、これからの研究に着目したいところです。

が、瞑想をすれば感情制御がうまくなるという話については、山のように研究成果があります[3]。


そのため、あなたが普段感情制御に困っていると感じているのであれば、瞑想を始めるのは有効な手立ての一つとなるはずです。


まとめ


昼寝が感情制御能力の向上にとても有効であること、そして中でもレム睡眠が非常に重要な役割を持っていることについて紹介しました。

そして、その能力を向上するためには瞑想が有望な方法の一つであるということを書きました。


睡眠の質を高めることで、あなたは会社で嫌な人を見ても揺さぶられず平常心でいられるようになるかもしれません。

幸せそうな人を見れば、自分もその恩恵を受けて幸せな気分になれるかもしれません。


そのぐらい、睡眠は私たちにとって恵のようなものです。

ぜひ、これから睡眠の重要性を意識して過ごしてみてはいかがでしょうか。

※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。




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参考文献

1. Gujar, N., McDonald, S.A., Nishida, M., and Walker, M.P. (2011). A role for rem sleep in recalibrating the sensitivity of the human brain to specific emotions. Cereb. Cortex 21, 115–123.

2. Maruthai, N., Nagendra, R.P., Sasidharan, A., Srikumar, S., Datta, K., Uchida, S., and Kutty, B.M. (2016). Senior Vipassana Meditation practitioners exhibit distinct REM sleep organization from that of novice meditators and healthy controls. Int. Rev. Psychiatry 28, 279–287.

3. Eberth, J., and Sedlmeier, P. (2012). The Effects of Mindfulness Meditation: A Meta-Analysis. Mindfulness (N. Y). 3, 174–189.