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マインドフルネスとは?
マインドフルネスとは「今この瞬間に意識を向けること」です。日本マインドフルネス学会は、“今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること” と定義しています。(引用:日本マインドフルネス学会)
瞑想をベースに、自分が今どのような状態であるかの判断をせずに、ただ見つめるという感覚によって多くの気付きを得られるのです。
マインドフルネスは現在に意識を向けている状態のことですが、瞑想によってその状態を得られるため「マインドフルネス」とはマインドフルネス瞑想のことを示しています。
マインドフルネスは、1979年にマサチューセッツ大学の教授であるジョンカバット・ジンによって、ストレス低減プログラムとして始められました。瞑想とヨガをベースにした治療法です(現代精神医学事典 弘文堂2011)。その後アメリカで広まり、Google社やIntel社などの大手企業が社員研修に取り入れたことで、日本でも認知されるようになりました。また、マインドフルネスは第3世代の認知行動療法として、医療や福祉の現場でも注目されてます。
生活の質を向上させるマインドフルネス
心理療法のひとつとして活躍が期待されるマインドフルネスですが、普段の生活に取り入れることが可能です。ストレス解消や、集中力向上など、1日5分実践するだけでも効果を実感できるといわれています。
さまざな雑念やネガティブな感情が湧いてきても、徐々にそれらを受け流せるようになるのです。気持ちをコントロールしやすくなることで、心の安定やストレス解消に役立ちます。
習慣は意識せず、まずは空いた時間にやってみましょう。初心者の方でも簡単に始められます。オススメのタイミングと、そのときに合わせたマインドフルネスのやり方を紹介いたします。
マインドフルネスで得られる効果
マインドフルネスの効果は、治療的なものから日常生活におけるメンタル面の向上まで、幅広く実証されています。心の安定が保たれると、アスリートや芸術家などのフォーマンスにも良い影響を与えるケースもあり、身体的な効果も感じられるのです。
ストレスを軽減させる
仕事や家庭など日々の中でストレスを感じることは多いですよね。マインドフルネスはそんなあなたにこそ、実践していただきたい方法です。
マインドフルネスの瞑想中にストレスの原因や、イライラした言葉などを思い出すことがあります。けれど「ネガティブな気持ちに気付く」ことを続けていると、マイナスの感情や思考にとらわれなくなり、溜める前にストレスを消化しやすくなるのです。
関連記事:論文レポート:マインドフルネスによるストレス軽減効果
集中力が高まる
SNSは集中して見ているはずなのに、いざ大事な作業に取りかかろうとすると、集中力が保てないのはよくあることです。集中力が保てないと、作業効率も低下します。マインドフルネスを行右ことで集中力が向上するとされています。今に意識を向けられると、他のことに惑わされなって集中力が上がり、勉強や仕事の生産性も向上を期待できるのです。
感情のコントロールが上手になる
外部からの刺激を受けたときに、すぐにキレたり、激しく落ち込んだりせずに、自分の感情をコントロールできていますか?他人の行動や過去の出来事は変えられません。
心で感じたことは誰かにぶつけずに、自分で対処したいですよね。マインドフルネスを行うと、何かが起こったときでも、冷静に心の動きを見つめることができます。負の感情に流されて仕舞わずに、一呼吸置いて自分の中で処理できるようになってくるのです。
リラックスできる
気持ちに余裕がないと、身体だけ休息しても内側から完全にリラックスすることは困難です。マインドフルネスは落ち着いた空間を作り、静寂の中で時間が過ぎていくので心身ともにリラックスできます。
ポジティブな思考になる
ポジティブに過ごしている人は幸せそうですよね。マインドフルネスはネガティブな感情さえも手放して、今を意識するようになるので、ポジティブな思考になりやすいのです。ネガティブな気持ちになっても、マインドフルネスを行うとその負の感情を客観視できます。
辛い気持ちや、後ろ向きな考えに襲われそうになっても、マインドフルネスでリセットしてみてください。ネガティブな感情にどれだけ染められていたのか気付くため、正常な状態に戻りやすくなります。
自信が湧き自分を好きになる
マインドフルネスを行うとき、ありのままの自分を受け入れるという感覚を大事にします。今ここにいる自分を否定せずに認められるようになると、自分の存在を大切に思えるようになるのです。自信がついたり、自分を好きになれたり、という気持ちの変化が現れます。自分はダメだと否定してばかりという方は、マインドフルネスで自分を受け入れることに挑戦してみましょう。
直感力や創造力の向上
常に何かを考えたり、忙しく動きまわったりしていると頭の中は休むことができません。マインドフルネスによって、思考がクリアになると物事を論理的に捉えられるようになります。さらにネガティブな感情を受け流せるようになると、余計なことで悩む必要もないので、リラックス状態になり直感力や創造力が高まるとされているのです。
マインドフルネスの始め方
初心者の方でも簡単に始められるマインドフルネスの瞑想法をお伝えします。瞑想と聞くと身構えてしまうかもしれませんが、自宅や職場で気軽に行えます。特別な道具も特にないので、思い立ったときにできるのもポイントです。
立ちながらや、座りながら、また仰向けでもマインドフルネスは実践できますが、最初は椅子を使い、座った状態で挑戦しましょう。リラックスしながら、集中もできます。1日の中で5分間だけ静寂な時間を作り「今」というこの瞬間に向き合ってみてください。
マインドフルネスの基本姿勢と方法
①まずは椅子に浅く腰掛けます。背筋は少し伸ばして、姿勢を正しますが、力は入れすぎないようにしましょう。手は膝に置いても構いません。心地の良い体勢を作ります。
②目は閉じたほうが集中できる方は、軽く閉じてください。
③ゆっくりと呼吸を開始します。このときお腹に意識を向けてください。息を吸うとふくらみ、吐いたときにはお腹が引っ込むのを感じましょう。感じにくい方は、手で触って確かめてみてください。
④呼吸をしていることに意識を向けます。普段当たり前に行っている呼吸を感じて、どんな風に身体が動いているのかを観察します。
⑤呼吸を行っている間、昨日の出来事を思い出したり、明日の予定を考えたりと頭を使ってしまうかもしれません。そのような考えが浮かんでも、呼吸に意識を戻して今に集中するようにしましょう。
たったこれだけです。やり方はシンプルなので、初心者の方でも1日5分、簡単に行えますよ。最初は呼吸に集中して、今この瞬間を感じようとすることは難しいかもしれません。
考えごとが湧いてきて、気を取られてしまうのが自然です。
しかしたとえそのような状況になっても、集中できない自分を責めるのではなく、どんな考えが浮かんだのかを眺めましょう。「私の頭の中ではどんな思考でいっぱいなのか?」と客観的に見つめてみるといいですよ。だんだんと、集中できる時間や深さに変化が訪れるようになるはずです。
オススメのタイミング
マインドフルネスのやり方がわかれば、さっそくあなたの日常にも取り入れてみましょう。たった5分でいいので、空いている時間を活用すれば大丈夫です。
オススメのタイミングに必ず行わなくてはと気負わずに、まずは自分の生活に組み込める時間帯はどこかを考えてみましょう。
朝起きたとき
朝はすっきりとした気分で、頭も冴えた状態で行えます。朝食を食べる前の時間を選ぶと、満腹で眠くなることもないので特にオススメです。1日のスタートを気持ちよく切れるので、その日のモチベーションアップも期待できます。
夜寝る前
寝る前にマインドフルネスをすると、リラックスした状態で眠りにつけるのでオススメです。昼間よりも静かで、音や光の刺激も少ないためさらに集中しやすいというメリットもあります。ただ、夜に行うと睡魔で集中できないことがあるため、瞑想ができる状態のときに行いましょう。
休憩時間
勉強の合間や、仕事のお昼休憩など、日中の空いた時間にマインドフルネスを取り入れられます。集中できないのにダラダラと作業を続けていても、生産性は上がりません。このようなタイミングでマインドフルネスを取り入れると、頭の切り替えにもなります。
オススメの環境
マインドフルネスを行う上で、慣れるまでは集中しやすい空間を選ぶようにしましょう。乱雑とした場所ではなく、できれば整然とした部屋で行うのがオススメです。色々なものに囲まれていると、気が散ってしまい集中の妨げになってしまいます。
5分間はマインドフルネスだけに没頭できるように、スマートフォンの着信音やアラームなどが鳴らないように設定し、準備をしてください。
会社や職場で行う場合も、人のいない会議室や、静かな場所を探して行うと集中しやすくなります。
マインドフルネスの種類
マインドフルネスは主に体勢を動かさずに行う瞑想法のことを言いますが、「歩く瞑想」や「食べる瞑想」といった方法もあるのです。どちらも身体の感覚を丁寧に観察することが重要とされています。
歩く瞑想
歩く瞑想では、身体の動きがあるためその動作に意識を向けることが求められます。初めて行うときは歩幅は小さく、ゆっくりと行うのがオススメです。
最初に、背筋を伸ばして立ちます。立っている状態から、全身を観察していきましょう。身体と心の様子を見つめます。歩き出すときは、足に意識を集中させてゆっくりと一歩を踏み出してください。足の裏が地面から離れ、また地面に着く動作をしっかりと感じます。意識が他に向きそうになったら、足の感覚に意識を戻しましょう。
歩く瞑想は動きが大きいため、座って行うマインドフルネスよりも、変化を感じ取りやすいというメリットがあります。
歩行瞑想について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧下さい。
食べる瞑想
次に食べる瞑想です。
「マインドフルネスストレス低減法」の中では、レーズンを使った食べる瞑想が紹介されています。ここでも同じようにレーズンを例に挙げながら解説します。
まずはレーズンを観察し、手で感触を確かめます。色や形にも注目してください。まるで初めて見るものかのように接するのです。さらにレーズンの匂いをかいで、ようやく口に運びます。そのときの腕の感覚や、口の中の動きにも意識を払いましょう。じっくりと味わうために、ゆっくりと噛んで、ひとつぶのレーズンを丁寧にいただきます。この方法で食べると、満足感や満腹感が得られたとされています。
普段の生活で何かを真剣に、時間をかけて食べることはほとんどありませんよね。食べるという行為を流れ作業のように行っているからこそ、丁寧に向き合うと新たな発見があるのです。食材そのものの味を感じられたり、食べる喜びを知ったりできます。また、ただ食べるという行為に意識を向けて食事をすると、ゆっくりと味わうようになり、無駄食いや食べ過ぎ防止にも繋がります。
禅やヨガとの違い
禅やヨガは瞑想を用いるため、マインドフルネスと似ているところもありますが、目的が異なります。マインドフルネスには宗教的な要素は全くありません。だからこそ、さまざまな制限もないため誰でも始められるのが特徴です。
マインドフルネスには、治療や、生活の質の向上など目的を持って取り組みます。禅には目的は存在せず、何かを求めて瞑想を行うのではなく、座禅を組んで瞑想するということが大切なのです。ヨガもダイエットや健康法のひとつとして知られていますが、本来の目的は悟りを開くことであり、こちらも目的が異なります。
さいごに
マインドフルネスは心と身体を健康に保つために最適な方法です。ぜひあなたの生活にも取り入れてみましょう。無理をせず、できる範囲で行うのがオススメです。習慣化しようとすると、継続できずに挫折してしまいます。毎日やらなくてはと気を張らずに、空いた時間を利用して試してみてください。
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。
参考文献
・『現代精神医学事典』 弘文堂2011
・『マインドフルネスストレス低減法』 ジョン・カバットジン(著)Jon Kabat-Zinn(著,原著),春木豊(翻訳).(2007)