摂食障害とマインドフルネス

マインドフルネスや瞑想が健康な人のメンタルヘルスを向上させることは広く知られるようになってきましたが、精神疾患をもつ人に与える影響については十分に検証されていませんでした。

しかし近年の研究で、マインドフルネスが摂食障害をはじめとする多くの精神疾患に対して効果的であることが明らかにされています。今回は、思春期に多くみられる摂食障害に対するマインドフルネスの効果について紹介します。


摂食障害の症状と治療

摂食障害は思春期の女子を中心に発症する精神疾患の一つで、精神的・身体的健康に深刻な影響を及ぼすことが知られています。

厚生労働省の統計によると、摂食障害の国内患者数は20万人を超えると推計されています。摂食障害は主に神経性過食症(過食症)神経性やせ症(拒食症)の二つに分けられ、回復までは平均5年かかり、精神疾患の中で致死率が最も高いと言われています。

過食症

過食症の方には過剰なダイエットで痩せてしまった時期があることが多く、自分自身に対する評価が低くて、完全主義的な特徴がみられます。しかし、過剰なダイエットは長く続かず、多くの方がリバウンドして過食してしまいます。

体重が増えることによる罪悪感やこのまま太り続けるのではないかという不安と恐怖から、排出行動(自己誘発嘔吐や下剤の乱用など)で体重の増加を防ぐようになります。そういった行動が繰り返されることにより、否定的な感情が生じ、ますます自分自身に対する評価が低くなるという悪循環が形成されてしまいます。

過食症に対する治療として、一般的に過食や排出行動の回数を減らすことを目的とした認知行動療法がおこなわれます。認知行動療法により40~50%の方が過食や嘔吐がなくなったと報告されていますが、もちろん、万能な治療法ではありません。

 

拒食症

拒食症の方は極端なカロリー制限だけではなく、多くの場合は過食徹底した嘔吐や下剤乱用で、やせた体型をキープします。

食べ方の異常以外に体型への認識が歪み、周囲から見ると明らかにやせ過ぎになっても「まだまだやせなければ」「太っている」などと感じてしまいます。

拒食症の方に対しては標準化された治療法はまだ確立されていません。
その理由のひとつとして、「低体重であること」が影響しています。痩せているということは拒食症の方にとっては問題のない状態ですから、治療にも消極的になってしまいがちです。

 

摂食障害に対するマインドフルネスの効果

摂食障害の治療法として、近年、第3世代の認知行動療法とも呼ばれるマインドフルネスが注目を集めています。

マインドフルネスとは、「今この瞬間の体験に気づき、ありのままにそれを受け入れる方法」のことで、1970年代、マサチューセッツ大学のジョン・カバットジン博士により確立され、ストレスの軽減や集中力の向上、睡眠障害の改善など多くの効果をもたらす技法として発展してきました。

過食症とマインドフルネス

過食症の方は自分自身に対する評価が低く、そのストレスや焦りを過食・嘔吐という形で解消してしまいます。また、他者の目を通して自分の身体を見て、他者の価値観をもとに自分の評価を下そうとします。

これに対してマインドフルネスに基づいたアプローチでは、自分の目で自分の身体を見ること、自分の心で自分の身体を感じることを目指します。集中して自分の身体を感じることにより、過食でしか満足できなくっていた欲求を落ち着かせ、空腹感や満腹感の正常化が期待されます。

 

拒食症とマインドフルネス

拒食症は今の自分自身から目をそらし続けている状態にあり、マインドフルネスの実践は困難を伴うことが多いとされています。

しかし、自分の身体や心をありのままに観察するマインドフルネスの実践により、「痩せていることが良いことだ」という誤った価値観から離れ、自分自身を見失うことなく、その瞬間、瞬間を生きていくことが可能になると期待されます。

 

マインドフルネスに基づいたアプローチの一つに「ボディスキャン」という技法があります。これは、つま先から頭のてっぺんまで注意を移動させながら、すべての瞬間に注意を集中して、自分の呼吸と体を客観的に観察します。

このボディスキャンにより、これまで頑なに遮断してきた身体感覚を呼び覚まし、誤った価値観に左右されない身体イメージを取り戻すことが可能になると考えられます。

(花澤 寿.摂食障害の病理とマインドフルネス-「時間」と「身体」からの考察-.千葉大学教育学部研究紀要.http://opac.ll.chiba-u.jp/da/curator/900116212/13482084_60_395.pdf

 

摂食障害に対するマインドフルネスの科学研究

O’Reillyらは、過度の肥満を含む摂食障害の人を対象に、マインドフルネス・アプローチまたはマインドフルネスに基づいた運動療法を実施している研究、21本を精査しました。

その結果、21本中18本(86%)の研究で、マインドフルネスの実践による肥満や摂食障害の改善が認められました。

 

これらの研究の中には、過食症や拒食症といった摂食障害までは至らないものの、過度の肥満に悩んでいる人を対象とした研究も含まれており、健康のためにダイエットをしたいけどなかなかうまくいかないという人にも、マインドフルネスは効果的であると考えられます。

(O’Reilly GA, et al. Mindfulness-based interventions for obesity-relate eating behaviours: a literature review. Obes Rev, 2014.)

 

大規模に摂食障害に対するマインドフルネスの効果を検証したDalenらの研究では、過食症の患者150人をマインドフルネスに基づいた「食べる瞑想」を実践する瞑想群(瞑想群)と瞑想をおこなわない群(対照群)に分け、瞑想群に対しては12週間、「食べる瞑想」を行いました。「食べる瞑想」とは、実際に時間をかけて食事をおこない、「食べる」という行為に伴う感覚(視覚、触覚、嗅覚、味覚)に付随して生じる感情や思考に注意を向けます。

その結果、瞑想群は対照群と比べて体重の減少や、過食や嘔吐の回数が大きく減少したと報告されています。



まとめ

摂食障害や肥満に対するマインドフルネスの効果について紹介しました。

自分の体型が気になり、拒食や過食、嘔吐を繰り返してしまう人、また肥満体型でありながらなかなかダイエットが続かない人は、一つの手段としてマインドフルネスを実践してみるのも良いかもしれません。

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※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。