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瞑想と心疾患
昨今の瞑想ブームにより、瞑想がストレス軽減や集中力向上に効果的であることはよく知られるようになりました。しかし、瞑想が狭心症や心筋梗塞といった心疾患の予防に効果があることは意外と知られていません。今回は瞑想による心疾患のリスク軽減効果についてご紹介します。
国民病である心疾患
2017年の厚生労働省の調査によると、心疾患の患者数は173万2,000人にのぼるとされています。また、1年間に20万人以上が心疾患により亡くなっており、これは、悪性新生物(がん)に次いで、2番目に多い数字です。
ただ、心疾患と言われても今ひとつピンとこない方も多いのではないでしょうか。まずは簡単に心疾患とは何なのか、よく耳にする心不全や狭心症、心筋梗塞について紹介したいと思います。
(厚生労働省.厚生労働統計一覧 患者調査, 2017.https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html)
心不全
「心不全」とは、病気の名前ではありません。心臓の機能が低下し、体に十分な血液を送り出せなくなった状態を「心不全」と呼びます。
心臓は全身に血液を送り出すポンプの役割をしていますが、この機能が低下することにより肺や腎臓といった他の臓器に異常が起きたり、心臓が正常に働かなくなります。
心不全を引き起こす疾患は数多くありますが、最も多いのが「狭心症」や「心筋梗塞」などの「虚血性心疾患」です。「虚血」とは「血がない状態」を意味します。つまり心臓に十分血がいきわたっていない状態が「虚血性心疾患」です。
心臓に血液を送る冠動脈の動脈硬化などにより、心臓の筋肉に血液が十分にいきわたらなくなることで、心臓は酸欠状態となり、胸の痛みや圧迫感が症状として現れます。
狭心症
狭心症は「労作性狭心症」「安静時狭心症」「不安定狭心症」に分けられます。労作性狭心症は運動などにより心臓がより多くの酸素を必要するにも関わらず、動脈硬化により冠動脈が狭くなっているために十分な酸素が届かないため引き起こされます。しかし、身体を休めて心臓が多くの酸素を必要としなくなると治まります。
安静時狭心症は寝ている時や安静にしている時に起こります。冠動脈が一時的にけいれんしたり、血の塊ができて心臓に送られる血の量が減ることで症状が生じます。
不安定狭心症は狭心症の発作の回数が増えたり、薬が効かなくなったり、ちょっとした動作で発作が起こる状態で、心筋梗塞に移行するリスクが高いとされています。
心筋梗塞
心筋梗塞の症状は、突然起こる激しい胸の痛みです。血管の内側にたまったコレステロールが血管を塞いで血流をとめ、約20分ほどで心臓の筋が壊死し始めます。安静にしていても激しい胸の痛みが20分以上続く場合は、心筋梗塞の可能性が高いといわれており、そのまま放置すると呼吸困難・意識障害・血圧低下などの状態に陥り、最悪の場合は死に至ることもあります。
このような症状を感じたら、すぐに救急車を呼んで病院を受診する必要があります。
心疾患と瞑想
それでは、心疾患に対する瞑想の効果について、ここ数年で発表された2つの研究論文を紹介します。
アメリカ心臓協会による瞑想の効果に関する報告
2017年、アメリカ心臓協会(American Heart Association;AHA)は、心を一つのことに集中させることによって雑念を払う「サマタ瞑想」、自分の心をありのままに観る「ヴィパッサナー瞑想」、自分の状態を判断せずに、今この瞬間に意識を向ける「マインドフルネス瞑想」など瞑想の具体的な瞑想法に触れて、心疾患のリスク軽減に関し以下のような効果を報告しました。
・心疾患の重要なパラメーターである収縮期血圧の低下
・心疾患のリスク因子である喫煙率やストレス指数の低下
・動脈硬化の原因であるインスリン抵抗性やメタボリックシンドロームの改善
(Levine GN, et al. Meditation and Cardiovascular Risk Reduction: A Scientific Statement From the American Heart Association. J Am Heart Assoc, 2017.)
これらの研究はサンプルサイズが小さく効果は限定的であるとしながらも、心疾患の治療に関する世界的権威であるAHAからの発表はインパクトの大きいものでした。
心疾患と瞑想に関する大規模研究
さらに、2012年と2017年の国民健康調査(NHIS)に参加した61,267人の被験者を、何らかの瞑想を実践している人(瞑想群;5,851人)と瞑想の経験がない人(非瞑想群;55,416人)に分けて疾患の有病率について分析をおこないました。
その結果、瞑想群は非瞑想群と比べて高コレステロール血症、高血圧、糖尿病、脳卒中、心疾患の有病率が低いことが明らかになりました。中でも最も顕著であったのは心疾患で、瞑想をしている人が心疾患を有する割合は、していない人の約半分(51%)に留まりました。
高コレステロール血症や糖尿病は動脈硬化を引き起こし、心疾患の大きなリスク因子となるため、これらの有病率が低いことが、瞑想を実践している人が心疾患になりにくい理由であると考えられます。
筆者であるKrittanawongは、瞑想はストレスを軽減してマインドフルネスを向上させ、身体的にも精神的にも健康に寄与するとし、瞑想はリスクが小さくコストパフォーマンスに優れた健康法だと記しています。
(Krittanawong C, et al. Meditation and Cardiovascular Health in the US. Am J Cardiol, 2020.)
この研究は後ろ向きの調査のため、瞑想をしている人はしていない人に比べて普段から運動をしていたり、健康に気を遣っているということも影響していると思われますが、それを考慮しても心疾患に対する瞑想の効果は大きいと考えられます。
まとめ
心疾患に対する瞑想の効果について紹介しました。「瞑想の効果はわかったけど、何から始めたらいいのかわからない・・」という方は、一人で簡単に瞑想を実践できる、マインドフルネス瞑想アプリ「Relook」から始めてみるのも良いかもしれません。
心疾患の予防は一朝一夕にできるものではありません。毎日の生活の中に瞑想を取り入れ、心疾患のリスクを減らすことで健康な生活を送っていきましょう。
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※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。