瞑想は心身に様々な変化をもたらす

瞑想をすると、あなたの心身には様々な変化が訪れます。

例えば集中力の変化。

ひたすら「今ここ」に意識を向け続ける訓練によって、集中力が高まることが報告されています。

感情のコントロール能力もそうです。

特にネガティブ感情をうまく処理する力が高まり、ストレス耐性が上がることが研究で示されています。

身体に目を向ければ、免疫力の向上や痛みの緩和、さらには睡眠の質の向上まで、様々な変化がもたらされることが報告されています。

これらの多くは、メタ分析と呼ばれる信頼性の高い手法によって、効果が検証されています[1]。

今回は、新しく発見された瞑想によって起こる興味深い変化について紹介していきましょう。

瞑想熟達者は瞳孔の揺らぎが大きい

2020年に生物学の一流紙、Current Biologyに掲載されたこの研究で、研究グループは「瞑想熟達者は瞑想中に瞳孔のゆらぎが大きい」ことを報告しました[2]。

なんのことかよくわかりませんよね。

詳しく説明していきましょう。

この研究では、24名の瞑想熟達者、それから比較対象として瞑想初心者を19名集めてきました。

瞑想熟達者の瞑想経験はさまざまですが、少なくとも毎日1時間の瞑想を1年間以上続けています。

中には1日14時間もの瞑想をしている人も含まれていました。

そして、①安静時、②瞑想時、③安静時の3回に分けて彼ら全員の瞳孔の大きさを計測しました。

その結果どうだったか。

瞑想熟達者は瞑想中に1.5倍近くも瞳孔の直径が揺らいでいることが明らかになりました。

瞳孔の直径が揺らいでいるといわれてもイメージがつかないと思いますので、少し説明します。

そもそも私たちの瞳孔は、実は自然にしていると大きさが揺らいでいるのです。

大きくなったり小さくなったりを繰り返しているんですね。

もちろん普通は気付きませんが、そんな現象があるのです。

中でも1秒間に1回以下(1Hz以下)の揺らぎのことをPupillary hippus(ピューピラリー・ヒッパス)と呼びます。

今回の研究で明らかになったのは、なぜか瞑想熟達者はこの瞳孔の揺らぎがとても大きくなっている、ということだったのです。

研究結果の考察

なるほど、瞑想熟達者が瞑想をしていると瞳孔の揺らぎが大きくなっていることはわかりました。

しかし、それは何を意味しているのでしょうか。

先行研究によれば、の揺らぎは「脳の可塑性」と深い関わりがあることが示されています。

脳の可塑性とは、脳が変化することです。

つまり、私たちが何かを学ぶ(=脳を変化させる)ときには脳の可塑性が重要になるのです。

整理すると、瞑想の熟達者は瞑想中に瞳孔の揺らぎが大きくなっていて、これはもしかすると脳の可塑性が大きくなっていることを示しているかもしれない、ということです。

確かに、瞑想は脳に様々な変化をもたらすことが知られています[3]。

これは、脳の可塑性が高まることによって可能になっているのかもしれませんね。

ただし、この点については研究チームも「現時点ではこの関係性は確実ではない」としており、今後の研究が期待されます。

他にも、瞳孔の揺らぎは「自律神経の変化」とも関係が深いようです。

自律神経とは簡単に言えば、リラックス状態と興奮状態をコントロールする神経系です。

自律神経が乱れると、夜だから寝たいのにうまく寝付けないとか、逆に集中しないといけないのにどうしても力が出ないということになり得ます。

この自律神経系に、瞑想は大きな変化をもたらすのかもしれません。

実際、例えば瞑想が睡眠を改善することを示す研究が集まりつつあります。

応用可能性

さらに、この研究は興味深い可能性を示しています。

それは「瞑想がうまくいっているか簡単に計測できる」という可能性です。

あなたは瞑想をやっている時、「本当にうまくいっているのだろうか」と不安になることはありませんか?

瞑想はどうしても側から見れば目をつぶっているだけなので、うまくいっているのか判断する方法がほとんどありません。

脳活動を計測しようにも、高価な上に専門家でないと使い方が難しいところがあります。

一方で、瞳孔の大きさを計測する装置は、それらに比べれば安価でコンパクトに作ることができると研究チームは言います。

そのため、将来的に瞑想中の瞳孔の変化を計測する装置が普及すれば、あなたも瞑想の質を確認しながら日々訓練することができるようになる可能性があります。

そうしたら、確実に瞑想の効果を得ることができそうですよね。

まとめ

今日は、瞑想熟達者は瞑想をしているときに瞳孔の揺らぎが大きくなるという不思議な研究結果を紹介しました。

このことは、瞑想によって脳の可塑性が高まったり、自律神経が変化していることを示している可能性があるのでしたね。

さらに、将来的には瞑想の質を評価する装置の開発につながるかもしれません。

最新の研究によって、瞑想が私たちの心身に様々な変化をもたらすことが徐々に明らかになってきています。

今回示された瞳孔の変化だけでなく、集中力や感情制御の向上、また自律神経系や睡眠の質の改善など、研究には枚挙にいとまがありません。

もちろん、研究論文といえど盲信は禁物で、必ずしも全てが正しいと考えるべきではありません。

疑ってかかりつつ、自分で実際に試して効果を確認してみるのが科学を利用する望ましいあり方でしょう。

ぜひ、あなたも瞑想を試してみて、その効果を体感してみてください。


※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。


参考文献

1. Eberth, J., and Sedlmeier, P. (2012). The Effects of Mindfulness Meditation: A Meta-Analysis. Mindfulness (N. Y). 3, 174–189.

2. Pomè, A., Burr, D.C., Capuozzo, A., and Binda, P. (2020). Spontaneous pupillary oscillations increase during mindfulness meditation. Curr. Biol. 30, R1030–R1031. Available at: http://dx.doi.org/10.1016/j.cub.2020.07.064.

3. Fox, K.C.R., Nijeboer, S., Dixon, M.L., Floman, J.L., Ellamil, M., Rumak, S.P., Sedlmeier, P., and Christoff, K. (2014). Is meditation associated with altered brain structure? A systematic review and meta-analysis of morphometric neuroimaging in meditation practitioners. Neurosci. Biobehav. Rev. 43, 48–73. Available at: http://dx.doi.org/10.1016/j.neubiorev.2014.03.016.