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睡眠の質とマインドフルネス
「睡眠の質」の向上が、日々の生活を豊かにするというのは周知のことでしょう。
近年、睡眠の質を向上させる手段として瞑想に代表されるマインドフルネスが注目を集めています。今回は、マインドフルネスと睡眠の質の関係について、睡眠時やマインドフルネスを実践している時の脳波の研究を交えて紹介します。
睡眠について
睡眠の役割
私たちが人生の3分の1ほどの時間を費やす、睡眠。
睡眠には、よく知られている「身体や脳を休ませる」という役割のほか、「記憶を整理・定着させる」、「ホルモンバランスを整える」、「免疫力を上げる」、「脳の老廃物を除去する」など多くの役割があります。
これらは起きている時(覚醒時)の身体や心にとって非常に重要な要素であり、睡眠の量や質によって覚醒時のパフォーマンスが大きく左右されることが知られています。
睡眠研究の歴史
眠りが浅い、深いという言葉をよく耳にしますが、それをなんとなく実感することができても、客観的に知るためには科学的な評価・解析が必要になります。
科学的な睡眠研究の歴史は思いのほか浅く、1929年にBegerにより脳波が発見されてから飛躍的に進歩しました。睡眠研究が進むことにより、睡眠を量(時間)だけでなく、質の面から評価することができるようになったのです。
睡眠と脳波
脳波とは
脳波とは、大脳が活動している様子を頭皮から「波」として電気的に記録したものです。
その波には、形(周波数)によってα波、β波、γ波、δ波、θ波といった名前がつけられています。これまでの研究から、身体や心の状態によってどのような脳波が現れるか、知ることができるようになりました。
・α波(8~13Hz):目を閉じて静かにリラックスしている時
・β波(14~30Hz):論理的な思考や計算をしている時、心身ともに緊張しストレスを受けている時
・γ波(30~80Hz):洞察力を必要とする課題に取り組む時
・δ波(1~3Hz):深い眠りについている時
・θ波(4~7Hz):眠気がありまどろんだ時、作業に集中している時
睡眠時の脳波
それでは、睡眠時にはどのような脳波が出ているのでしょうか?
睡眠は時間の経過とともに、レム睡眠とノンレム睡眠を約90分ごとに繰り返しています。
ノンレム睡眠は眠りの深さに従って段階1から段階4に分けられており、出現する脳波がそれぞれ異なります。
ノンレム睡眠の段階1(入眠期)では、眠りにつく間際のα波中心の脳波から、徐々にθ波の出現が増えてきます。そこから段階2(軽睡眠期)、段階3(中等度睡眠期)、段階4(深睡眠期)と経過に従って、深い眠りを示すδ波の出現が増えてきます。
またレム睡眠では、ノンレム睡眠の段階1(入眠期)に近い脳波が現れ、脳は活動していますが、身体は休まった状態になります。
(引用:榎本みのり 他. 睡眠脳波と事象関連電位.生体医工学 2008.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsmbe/46/2/46_2_144/_pdf/-char/ja)
しかし、考え事をしてしまったり、脳が休まっていない状態だと、覚醒時のβ波が中心となりなかなか入眠できず、理想的な睡眠周期を得ることができません。
マインドフルネスと脳波
それでは質の高い睡眠を得るにはどのような方法があるのでしょうか?
心を整え、入眠をスムーズにする方法の一つにマインドフルネスという方法があります。
瞑想に代表されるマインドフルネスとは、「今、この瞬間」にいる自分に意識的に100%の注意を向け、ありのままに観察して受け止めることを言います。寝る前に今日あった嫌なことや明日への不安が頭をよぎってしまう方も多いと思いますが、マインドフルネスによって頭と心を浄化し、穏やかな入眠が得られるのです。
2009年に発表された論文では、マインドフルネスの代表的な方法である瞑想によって、入眠時とよく似た脳波が出現することが報告されました。
この研究は、30分間の瞑想を1日2回以上行っている瞑想熟達者の13人の男女を対象に、以下の2つの条件で脳波を測定しました。
瞑想条件:椅子に座って目を閉じ、20分間通常の瞑想をする。
リラックス条件:椅子に座って目を閉じ、瞑想はおこなわずに静かに過ごす。
その結果、瞑想条件、リラックス条件ともにα波の出現がみられました。これは両条件ともに、椅子に座って目を閉じ、静かに過ごすことによって脳がリラックスした状態にあると言えます。
さらに、瞑想条件はリラックス条件と比べて、すべての脳領域においてθ波の出現が有意に増加していました。その中でも、特に前頭葉と側頭葉におけるθ波の出現増加が顕著に観察されました。
これは、瞑想条件では起きていながら、α波からθ波に移行する入眠時に近い脳波が現れたことを示しています。
つまり、入眠前に瞑想をおこないマインドフルネスを高めると、スムーズにノンレム睡眠に入り、その後深い眠りへと移ることができる可能性が高いと考えられます。
(Lagopoulos J. et al. The Journal of Alternative and Complementary Medicine, 2009. https://www.researchgate.net/publication/38098006_Increased_Theta_and_Alpha_EEG_Activity_During_Nondirective_Meditation)
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まとめ
マインドフルネスがもたらす睡眠の質の向上について、脳波という科学的な側面から紹介しました。
ベッドに入って瞑想をおこなうことでマインドフルネスを高め、スムーズに深い眠りにつくことで、目覚めの良い朝を迎えましょう。
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。