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瞑想と睡眠
瞑想がもたらす効果として、「ストレス軽減効果」や「集中アップ効果」などが知られていますが、「睡眠の質の向上」も重要な効果の一つです。
今回は睡眠をもたらす代表的なホルモンである「メラトニン」に注目し、瞑想の効果について紹介します。
睡眠物質メラトニン
夜になれば眠くなり、朝が来ると目が覚める。当たり前のことですが、どうして眠くなるのか、その理由をご存知ですか?
眠くなる理由には、メラトニンと呼ばれる睡眠物質が大きく関与しています。メラトニンは「体内時計」の役割を果たす脳の視交叉上核からの指令により、松果体という部分から分泌されます。
メラトニンの分泌は午後から夜に向かって増加し、寝つく直前に頂点に達します。メラトニンの分泌が増えると、脈拍や体温、血圧が低下し、眠る準備が整います。そして、睡眠時間の経過に従って分泌が減少し、朝目覚めるときには最も少なっています。
このことから、眠りにつくための準備をし、朝気持ち良く目覚めるためにはメラトニンの分泌が適切にコントロールされている必要があるのです。
メラトニンの分泌減少は不眠症の原因の一つであるとされています。
また、メラトニンの働きを促進させるメラトニン受容体作動薬は、体内時計を調整し、睡眠をもたらす作用を持つことから、不眠症の治療薬として使用されています。
(引用:日本神経治療学会.標準的神経治療:不眠・過眠と概日リズム障害.https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsnt/33/4/33_573/_pdf)
メラトニンとセロトニン
それでは、メラトニンの分泌を促進させるにはどうすれば良いのでしょうか?
メラトニンは食品から摂取することが難しく、幸福ホルモンとも呼ばれる「セロトニン」から生成されます。このセロトニンには心を落ち着かせたり、精神のバランスを整える働きがあります。
セロトニンとメラトニンは表裏一体に働いており、日中太陽が出ている時間帯にはセロトニンが分泌され、太陽が沈むとメラトニンの分泌が増加します。夜の眠る時間帯に、しっかりとメラトニンを分泌させるためには、昼間にセロトニンを分泌できているかどうかが鍵になるのです。
瞑想とメラトニン
近年、瞑想によりセロトニンの分泌が促進され、ストレスの軽減やうつ病の予防に効果的であることは多くの研究から明らかにされてきました。
また同時に、セロトニンから生成されるメラトニンに関しても、瞑想により分泌が促進されることが報告されています。
Tooleyらの瞑想熟達者10名を対象におこなった研究では、瞑想をおこなう日と瞑想をおこなわない日で血中のメラトニンの量を比べた結果、瞑想をおこなった日は、おこなわない日と比べて一晩のメラトニンの量が平均22.4%も増加していました。これは、TMシディと呼ばれる瞑想法でも、ヨガを行いながらの瞑想であっても同様の結果であったと報告されています。
このことから、種類や方法によらず、瞑想を実践することによってメラトニンの分泌増加の効果が得られ、眠りの準備を整えることができると考えられます。
(引用:Tooley G.A, et al.Biol Psychol, 2000.https://www.docdroid.net/pzVSBqw/tooley20001-pdf)
また、別の研究では、定期的に瞑想をおこなっている男女20人を対象に唾液中のメラトニン量を調べたところ、瞑想前と比べ瞑想10分後からメラトニンが増加し始め、90分後には瞑想前の約1.28倍に増加していました。
(引用:Chen-Hui L, et al. J Formos Med Assoc, 2010. https://core.ac.uk/download/pdf/82266821.pdf)
これらの研究から、瞑想を実践することにより比較的早いタイミングでメラトニンの分泌量が増加し、またそれが持続することにより、睡眠中のメラトニンの分泌促進に効果的であることがわかります。
また、必ずしも専門の指導者などを必要としないことから、マインドフルネス瞑想アプリ「Relook」を用いて、身体と心をリラックスさせ、メラトニンの分泌を高めながら深い睡眠の準備を整えるのも良いかもしれません。
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メラトニンの驚くべき効果
メラトニンの作用は睡眠の質を向上させるだけでなく、免疫力を高め、がんの予防にも効果を発揮します。乳がんを発症した147人と健常者291人の尿中のメラトニンの代謝物を比べた研究では、尿中のメラトニンの代謝物が多い人は、少ない人と比べて乳がんになるリスクが約0.59倍に低下すると報告されています。
(引用:Schernhammer E, et al. J Natl Cancer Inst, 2005. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/16030307/)
また、瞑想によるがんの予防効果を調べた研究によると、瞑想やマインドフルネスを医療に応用したプログラムである「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」はメラトニンの分泌を増加させ、これは乳がんや前立腺がんの治療の補助になり得ると報告しています。
(引用:Massion A.O, et al. Medical Hypotheses, 1995. https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/0306987795902996)
瞑想は心や脳に作用し心の健康を保つだけではなく、ホルモンの分泌を変化させることにより睡眠の質や免疫力を高め、私たちの身体の健康を守る働きも有しているのです。
まとめ
瞑想による、睡眠物質メラトニンの分泌促進効果について紹介しました。
睡眠が日々の生活の質を左右することは言わずと知れていますが、その睡眠の質を高める方法については知らなかった方も多いでしょう。
瞑想によりぐっすり眠り、気持ちの良い朝を迎えてみてはいかがでしょうか。
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。