目次
ヴィパッサナー瞑想の効果まとめ
ヴィパッサナー瞑想の効果は数多く知られており、この記事では主に①幸福度アップ、②感情のコントロールが上手くなる、③睡眠の質が上がる、の3つを解説します。
他にも有名な効果として、ストレス軽減、不安感の減少、慢性痛の緩和、自分をいたわる気持ちが増える、など様々あります。
またこの記事ではヴィパッサナー瞑想の簡単にできるやり方3種類を、1ステップずつ順を追ってご紹介致します。
瞑想で悩みを克服しよう
あなたは今どんな悩みを抱えていますか?人が生きていく上で悩みは尽きないものです。仕事では上司との付き合い方に悩んだり、仕事による体の疲れと心の疲れが続いたり。そういう悩みを解決できるかどうかで、日々を楽しく過ごせるかどうかが大きく変わります。
悩みの解決方法はいろいろありますが、ここではあのスティーブ・ジョブズやイチローなど名だたる有名人が習慣にしている「瞑想」について、その効果と実践方法をお伝えします。
他の方法と比べた瞑想のメリット
多くの有名人や有名企業が取り入れている瞑想ですが、では瞑想が他の方法と比べて優れているところはどこでしょうか?
まず人生の悩みを解決する他の方法として、運動や恋愛、趣味を作るなどが挙げられます。もう少し難しい所だとカウンセリングを利用したり、コーチングという技術があったりもします。
ではこれらと比べて瞑想の良さは何か?それは圧倒的な手軽さと効率の良さです。
良い習慣を身に付けるのは難しい
あなたは過去に運動を習慣にしようと考えたことはあるでしょうか?かなり多くの人が一度は考えると思います。ではそのうち何割が運動を続けられるでしょう?
厚生労働省の調査によると、20歳から50歳の範囲で運動習慣があるのは男性で20%、女性で10%程度だそうです。反対に言えば80%〜90%の人は運動習慣をつけることに失敗していると言えるでしょう。
運動習慣をつけるのはそれくらい大変なのです。モチベーションが続かなかったり、場所や道具が必要だったりと、ハードルが意外と高いです。
他の方法も同様に、趣味を作るのは運動と同じハードルがあり、恋愛は恋人をすぐ作れる人はいいですが相手が見つからないとできない難しさがあります。
さてこれらと比べて瞑想はどうでしょう?
まず場所。ひと一人分のスペースで十分です。自宅や職場、公園などどこでだってできます。
次に道具など必要なもの。何も必要ありません。強いて言えば時間を測るタイマーがあると良いですが、無くても全く構いません。
そう、瞑想は自分の体一つでできてしまう点で、何よりもお手軽なのです。
瞑想は簡単なのに効果的!
ただお手軽なものは得てして効果が弱い場合が多いです。しかしこの瞑想、1日5分や10分だけでも続けていると色々な効果が現れてきます。例えば瞑想を100分間実践した人の体験談を引用します。
ちなみに、僕は100分しかできていませんが、睡眠の質向上・ストレス緩和・感情のコントロール力の強化はなんとなく実感しています。
(「瞑想を半信半疑で100分やってみた感想」より引用 https://mitsukanblog.com/entry/lifestyle-meisou-kouka/)
これ一日100分じゃないですよ。この方は1日平均2~3分を2ヶ月続けたそうです。たった2~3分なら誰でもできますよね。それで人生を少しでも変えられる可能性があるのですから、騙されたと思ってまず試してみては如何でしょうか?
ヴィパッサナー瞑想とは?
ありのままを観察し味わう
さて、今回ご紹介したいのは瞑想の中でもヴィパッサナー瞑想と呼ばれるものです。瞑想についてはご存知の方も多いですが、ヴィパッサナー瞑想と聞いてどんな瞑想かすぐにわかるでしょうか?
ヴィパッサナー瞑想とはあるがままの状態を味わう瞑想です。ヴィパッサナー瞑想では、心を無にしたり極度に集中したりする必要がありません。自然体で良いのです。
日本ヴィパッサナー協会が開いているトレーニングコースでは、次のような方法を用いています。
(前略)止むことなく鼻孔に入っては出ていく、変化しつづける呼吸の流れという自然の現実に注意を集中し、心を制御する力を高めていきます。 四日目になると、心はより落ち着いて集中し、ヴィパッサナーの修行に入る準備ができます。体の感覚を観察し、その性質を理解し、反応を止めることで平静な心を育てます。
(日本ヴィパッサナー協会HPより引用 https://jp.dhamma.org/ja/reference/what-is-vipassana/)
こちらのトレーニングコースでは、ヴィパッサナー瞑想の方法として呼吸に集中する方法がとられています。この方法は最初に紹介したスティーブ・ジョブズを始め、数々の有名人が実践している方法です。
他の瞑想法との違い
瞑想法の主な種類
瞑想法は大きく分けて3種類あります。1つは集中型、2つ目は超越型、3つ目が観察型です。集中型では、一つの物事に深く集中する事で瞑想を行います。超越型は、マントラという意味のない音を唱え続ける事で心地よい感覚に行き着くものです。
そして観察型は、周囲の物事や自分の心のあり様をあるがままに観察し味わう瞑想です。ヴィパッサナー瞑想はこの観察型に属します。ヴィパッサナー瞑想は、頑張って集中しようと身構えなくても自然と身の回りの様々なことに気づけるようになる、そんなイメージです。
ヴィパッサナー瞑想は難しい??
実はこのヴィパッサナー瞑想は仏教の世界で修行僧のトレーニングに使われており、しかも集中型の瞑想法を会得した人が行う第2ステップの瞑想法として知られています。そう聞くとヴィパッサナー瞑想って難しいのでは?と思われるかもしれませんがそんなことはありません。
もちろん修行僧のように悟りの境地に達したい場合は話が変わりますが、日常生活における効果を得たいのであれば初めからヴィパッサナー瞑想を行っても問題ありません。実際にヴィパッサナー瞑想の効果を確かめた研究でも、瞑想初心者に対してヴィパッサナー瞑想を行ってもらい効果を実証したものが数多くあります。
他の瞑想と何が違うの?
観察型であるヴィパッサナー瞑想とよく対比されるのが、集中型のサマタ瞑想です。先ほど仏教徒の話をしましたが、仏教徒がまず習う瞑想の第一ステップがこのサマタ瞑想です。ではサマタ瞑想とヴィパッサナー瞑想は何が違うのでしょうか?
サマタ瞑想では集中型ということからわかる通り、集中力が磨かれます。実際の方法としても、一つの事柄に注目してそこにひたすら集中する方法をとります。
これに対してヴィパッサナー瞑想では、注目する対象が時々刻々と移り変わっていきます。リラックスした状態ではそれが自然なことですよね。夕飯は何にしようか、なんか肩が痛いな、今日の飲み会楽しかった、などと考える対象は段々変わっていくかと思います。この注意の移り変わりを、自分の心と体に注目しながら行うのがヴィパッサナー瞑想なのです。
効果の違いは?
このやり方の違いから効果も変わってきます。サマタ瞑想では集中力が上るのに対して、ヴィパッサナー瞑想では大事な情報とそうでない情報の取捨選択が上手くなります。それに加えて観察型の名の通り、観察力が上がりちょっとした変化に気付きやすくなることが知られています。
つまり、気付く力が上がると同時に気づいたものが大事かどうかを瞬時に判別する力が養われていきます。この効果はウィスコンシン大学の研究など数多くの科学的なデータに裏付けられています。
やり方や効果の違いをいくつかご紹介しましたが、それぞれの瞑想法は人によって向き不向きがあります。それぞれ試してみて一番合うものを行うのが良いでしょう。
ヴィパッサナー瞑想の効果①
ウェル・ビーイング (well-being)が高まる
ヴィパッサナー瞑想の効果の一つとして、ウェル・ビーイングが高まります。さて、ウェル・ビーイングとは何でしょうか?簡単にいうと健康&幸せな状態であることを指します。世界保健機関 (WHO) はウェル・ビーイングについて以下のように説明しています。
Health is a state of complete physical, mental and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが 満たされた状態にあることをいいます。
(世界保健機関(WHO)憲章 https://japan-who.or.jp/about/who-what/charter/ より引用)
つまりは自分に関する物事に満足している幸福な状態がウェル・ビーイングです。
そしてこのウェル・ビーイングはヴィパッサナー瞑想によって高めることができ、結果として幸福度が増大することが科学的にも実証されています。
この効果は科学的に実証されている!
オーストラリアの研究グループは、120人に10日間ヴィパッサナー瞑想を実践してもらい、実践の前と後でストレスの感じ方などを計測しました。すると、ヴィパッサナー瞑想を実践した人にはストレス軽減などの効果が見られ、結果としてウェル・ビーイングが高まったという実験結果が報告されています。
この他にも数多くの研究結果がウェル・ビーイングへの効果を実証しています。さらには瞑想をやめてから半年間もの間はこの効果がある程度持続することも分かっています。
またシドニー大学の研究から、毎日5分間のヴィパッサナー瞑想を10日間続けるだけで効果があることも分かっています。
もちろん個人差はありますがたった10日間で幸福感が高まる可能性があるのですから、試してみる価値はあるでしょう。
ヴィパッサナー瞑想の効果②
感情のコントロールが上手くなる
あとで紹介しますが、ヴィパッサナー瞑想では感じたこと・気づいたことを言葉にして”ラベル付け”をします。このラベル付けの効果として、感情のコントロールが上手くなることが長年の研究で分かっています。
最も顕著な例として、慢性的な痛みを抱える患者さん達にヴィパッサナー瞑想を10週間行ってもらうと、痛みへの不安や鬱が改善され、さらには痛みも少しマシになったとのデータがあります。
もちろん痛みに限らず、一般的に不安や鬱などのネガティブな感情が改善することが知られています。例えば中国の研究グループは、15分の瞑想プログラムの実践を1週間行うと、感情的に反応しにくくなると報告しています。
例えば上司に叱られた時など、すぐに落ち込んだりあるいはカッとなることもあるでしょう。ヴィパッサナー瞑想ではそうした感情的な反応を起こりにくくして、常に落ち着いた状態でいられるようになる効果が期待できます。ストレスに悩む現代人には、非常にありがたい効果ではないでしょうか。
不安が減り、仕事のパフォーマンスも上がる
ヴィパッサナー瞑想では感情のコントロールに良い効果があると言いましたが、それに関連してヴィパッサナー瞑想には漠然とした不安感に襲われにくくなる効果もあります。
タイの大学が行った研究では、25歳から50歳の成人にヴィパッサナー瞑想を実践してもらったところ、不安感の軽減に加えて、記憶力や仕事の計画性・判断の柔軟性などが向上し仕事のパフォーマンスが上がる結果が得られています。
気持ちの面で変わるだけではなくて、より現実的な能力にも効果があるのです。
ヴィパッサナー瞑想の効果③
睡眠の質が上がる
あなたは最近気持ちよく眠れていますか?寝ても疲れが取れない、寝つきが悪いなど、睡眠は現代人のよくある悩みの一つです。そんな睡眠の悩みを改善する効果がヴィパッサナー瞑想にはあります。
例えばインドの国立研究機関によると、ヴィパッサナー瞑想を行うと徐波睡眠の時間が伸びると報告されています。この徐波睡眠は睡眠の質を決める眠りの一つで、徐波睡眠が長いほど睡眠の質が良いと言われています。つまりヴィパッサナー瞑想を行うことで睡眠の質の改善が期待できるのです。
瞑想によって睡眠を改善するのに役立つアプリとしてRelookというアプリがあります。これは眠りに付きやすくなる音声を流してくれるアプリで、聞いているだけで眠りやすくなるものです。流れてくる音声を聞くだけで睡眠の質が良くなるなんてあまり信じられませんよね。
しかし、この音声は専門家の先生が監修していて、実際に色んな人に使ってもらって効果が確認できています。日々のヴィパッサナー瞑想に加えて、Relookを使って睡眠を改善するとより高い効果が期待できるかもしれません。
(参考:https://relook.app/)
すぐに効果を実感できるヴィパッサナー瞑想のやり方
さて効果を知ったところで、次にやり方を確認しましょう。具体的な方法は後で解説しますが、先に大事なポイントをいくつか説明します。
ヴィパッサナー瞑想の基本は、①スローモーションの動作と②ラベル付けです。
まずはスローモーションで体を動かしながら、一瞬一瞬の感覚をありのまま感じ観察します。このとき雑念が入らないように、その動作や感覚を言葉にします。口に出しても頭の中で言葉にしてもいいのですが、こうすることでその瞬間の動作・感覚に自然と集中しやすくなります。
一回あたりの時間は5分から30分が目安です。続けやすい範囲で行なってください。慣れてくると30分から1時間くらいできるようになるのですが、まずは1週間や1ヶ月続けてみて効果を実感し、徐々に慣れていくのを目標にしましょう。
また瞑想を行う前にタイマーで時間を区切った方が「あと何分」などの雑念が入りにくく、より瞑想に集中できます。
では基本的なポイントを抑えたところで、具体的なやり方を見ていきましょう。3つの方法をご紹介します。
やり方①「歩く」
歩く瞑想法では、歩く動作をゆっくりと行い、その時々の動作を言葉にします。1ステップずつやり方を見ていきましょう。
1 : まずまっすぐ立ち、足に意識を集中します(手を組んだ方が足に集中しやすい場合があります)
2 : 片足をゆっくりと持ち上げ、「右足(または左足)を上げます」と言葉にします。左右の足どちらからでも良いです。このとき筋肉の動きなどの感覚に意識を集中しましょう。
3 : 次に上げた方の膝を伸ばして、足を前に出します。同時に「右足(左足)を運びます」あるいは「膝を伸ばします」などと言葉にしましょう。
4 : 上げた足を床に下ろしながら「足を下ろします」と言葉にしましょう。
5 : ステップ1〜4をまた反対の足で行いましょう。
片足立ちになって体がフラつく時は、壁に手を添えても構いません。あるいは次から紹介する立つ瞑想法や座る瞑想法をメインに行なうのも良いでしょう。
やり方②「立つ」
立つ瞑想法では、直立して呼吸などその瞬間のあらゆる感覚に意識を向けます。歩く瞑想法と比べて動作が少ないので注意が移り変わり雑念が入りやすく、難易度は少し高めです。とは言っても、立つだけでできるのでお手軽でもあります。では具体的なやり方を紹介します。
1 : まっすぐ立って目を閉じ、「立っています」と言葉にします。背筋の伸びや足の裏など体の感覚に意識を向けましょう。
2 : 次に前か後ろで手を組みます。このとき「手を組みます」と言葉にします。
3 : あとは意識のおもむくままに、感じたことを言葉にしましょう。もし余計なことを考えてしまったら「雑念・雑念・雑念」と唱えて再び体の感覚に意識を集中しましょう。最初は呼吸に集中して「吸っています」「吐いています」と心の中で唱えるのがおすすめです。
立つ瞑想法は長時間行うのが難しいので、最初は5分くらいがおすすめです。
やり方③「座る」
最後に座る瞑想法をご紹介します。これは立つ瞑想法とほぼ同じことを座った状態で行います。体勢が楽なため最も長時間続けやすいです。やり方は立つ瞑想と同様に、次の通りです。
1 : 立った状態からイスまたは地面(座布団なども可)にゆっくり座ります。このとき「座ります」と言葉にします。
2 : 「目を閉じます」と言葉にしながら軽く目を閉じます。
3 : あとは意識のおもむくままに、感じたことを言葉にしましょう。雑念が現れたら「雑念・雑念・雑念」と唱えて再び体の感覚に意識を戻します。立つ瞑想と同様に、呼吸に集中するのが最も簡単です。
この状態を時間が来るまで続けます。長く行いたい人は30分や1時間が目安ですが、やりやすい・続けやすい時間で構いません。座った状態は他人から見られても違和感が無いため場所を選びません。どこでもできる瞑想法としてですから、ぜひお試しください。
まとめ
今回はヴィパッサナー瞑想の効果とやり方をご紹介しました。
ヴィパッサナー瞑想には数々の効果が知られていますが、中でも①幸福度が高まる、②感情をコントロールしやすくなる、③睡眠の質が上がる、という3点を解説しました。
この3つの効果を知っただけでも、ヴィパッサナー瞑想を試すモチベーションに十分ではないでしょうか。
やり方も至ってシンプルで、「歩く・立つ・座る」という3つの動作/状態をゆっくりと味わいながら、心の赴くままに今の状態を観察するだけです。
ぜひ1週間〜1ヶ月くらいだけでも試してみて、その効果を感じていただきたいです。
今回ご紹介したヴィパッサナー瞑想で効果を得られなかった場合も、集中型のサマタ瞑想や超越瞑想など他の瞑想法を試してみることをオススメします。
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。