何もしなくても脳は疲れる

あなたが「今日は頭が疲れたなぁ」と感じるのはどんな時ですか?

 

勉強したり、普段慣れていないようなことをしたりなど、何かをした時に脳が疲れると感じているかもしれません。

 

しかし、近年では「何もしていない時」のほうが脳のエネルギーを使っていることが判明しています。


なんとなくぼんやりとしている時、あなたはとりとめもないことを考えているのではないでしょうか。

例えば仕事の休憩中。

「今日の夜は何を食べようかな」とか「先週デートで行った場所はあまりおもしろくなかったな」とか、もしくは、うんと昔の幼かった頃の記憶を思い出しているかもしれません。

このように、常に思考がさまよっている状態ではありませんか?

実は、脳の疲れは過去や未来への思考から生まれます。

アレコレと思い出したり、予想をしたりしながら、もう過ぎてしまったことで怒ったり、まだ来ないことで悲しんだりしていませんか?

この状態が慢性化すると心が疲弊していきます。

心が疲弊すると

集中力・記憶力の低下、物事を判断する速度の低下や、イライラしやすくなる、ネガティブになる、などの症状が現れます。

さらに深刻化した場合

睡眠障害、味覚障害、うつや認知症、などの病状が現れることが予想されます。

このように思考があちこちとさまよっている時、脳はデフォルト・モード・ネットワークと呼ばれる回路が働いているのです。

 

 

DMN(デフォルトモードネットワーク)とは?

「デフォルト・モード・ネットワーク」とは、あなたがぼんやりとしている時に活動する、脳内ネットワークのことを言います。

脳内の内側前頭前皮質と後帯状皮質、およびその他複数の離れた脳領域が、同期・協調して働きネットワークでつながって活動することが観測されています。

2000年前後にワシントン大学のマーカス・レイクル教授が発見し、このネットワークをデフォルト・モード・ネットワークと命名しました。

心がさまよっているときに活性化される回路のため、別名「雑念回路」と呼ばれています。

人間の脳は原始時代の名残で、過去や未来のことを常に考えようとする仕組みになっています。

なぜなら、過去の経験を記憶し、反省をしないと生き残ることが出来なかったからです。
さらには、未来に起こるであろう危機を恐れ、周囲を警戒するから、安全を確保できたのです。

例えば森を歩いていて、とある植物に触れた時に、皮膚がかぶれたとします。

その場合「この道は危険だ」と記憶し、その場所を通らないように記憶します。

さらには似たような植物を見つけた際に、「あれは危険かもしれない。また皮膚がかぶれる可能性があるぞ。」と危険を避けることができるようになります。

私たちの脳は雑念にまみれやすい構造だったのですね。
そのことを証明する研究があります。
2010年に行われたマット・キリングワースとダン・ギルバートの調査によると、
人間は、1
日の内の約半分は考え事をしている、注意散漫な状態にあるということが判明しました。


この、デフォルト・モード・ネットワークが活性化している状態は、車のアイドリングに例えられます。

動いてはいませんが、いつでも発進できるようにエンジンが掛かっているため、エネルギーを多く使います。

具体的には、一日に脳が消費するエネルギーの60~80%が、何もせずにぼんやりしている間に消費されているのです。

 

脳疲労に対する瞑想の効果

ここまでの説明をまとめると

今に集中し、脳のエネルギーを大量消費するデフォルト・モード・ネットワークの活動を抑えることができれば、脳疲労を防ぐことが出来る、ということがわかりました。

それではどうすればこの活動を抑えることができるのでしょうか。

マサチューセッツ大学准教授のジャドソン・ブルワー氏は、
マインドフルネス瞑想がデフォルト・モード・ネットワークの活動を制御できる最も手軽で効果的な方法であると言います。

マインドフルネスとは「判断を加えず、意識的に現在のこの瞬間に注意を払っていることから生じる気づき」のことを言います。

別の言い方をすると、自分の主観という色眼鏡をはずし、今この瞬間に注意を向け続けることです。


米カリフォルニア大学ロサンゼルス校にあるマインドフルネスの研究拠点ディレクターをしているダイアナ・ウィンストン氏は

「過去や未来から来るストレスから解放されることが、マインドフルネスの目的です。」

と言います。


凝り固まった肩をストレッチするために大きく腕を伸ばすように、過去・未来を向いている意識を、今に向ける。

いつも、好き嫌いで物事を判断しているのをやめてみる。

マインドフルネスは、疲れづらい心・ケガしづらい心を作るための脳のストレッチだとも言えるでしょう。


ジャドソン・ブルワー氏の実験を紹介します。

平均1万時間以上の瞑想実践を積んでいる瞑想熟練者と、実験の日の朝に瞑想のやり方を教えた初心者の脳の活動を比較しました。

結果、瞑想熟練者は初心者の脳と比べて内側前頭前野と後帯状皮質の活動が低下していることが分かったのです。

つまり、瞑想によってデフォルト・モード・ネットワークを司る脳の部位の活動が低下し、無駄な脳エネルギーの消費がなくなり、脳の休息に繋がることがわかりました。

2012年のスペルドゥッティのメタ解析もご紹介します。

メタ解析とは、複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析することで、最も質の高い根拠とされています。

この研究でも、瞑想時には脳活動の変化が認められています。

尾状核、嗅内野、内側前頭前皮質などに活動変化が見られたそうです。

瞑想には脳と心を整える効果があることを証明していますね。

(参考文献:あなたの脳は変えられる ジャドソン・ブルワー著・
世界のエリートがやっている 最高の休息法 久賀谷 亮著

 

 

実際のマインドフルネス瞑想のやり方

基本のマインドフルネス呼吸法

朝瞑想

リラックスして座ります。

イスでも、床の上でもかまいません。

肩の力を抜き、心地よく背筋を伸ばしましょう。

ゆっくり深呼吸を3回します。

今度は自然な呼吸に戻し、呼吸に意識を向けましょう。

「吸って。吐いて」を1カウントとし、10カウントまで続けます。

途中、考え事をしていることに気が付いたら、その事実に気がつき、また呼吸に戻りましょう。

その場合、また1からカウントし直します。

考え事に囚われることなく、穏やかに呼吸を続けましょう。

5分を目安に行ってみてください。

 

いつでもできるムービング瞑想

movingといって、今の自分の行動に意識を向ける瞑想法です。

歩く、食べる、食器を洗う、歯を磨く、など普段無意識で行っているような動きのひとつひとつに注意を向けます。

例えば食器洗いの時に瞑想するのであれば

・食器に触れたときの感覚

・水の温度 

・泡が手を滑り落ちていく感覚

・足の裏のどこに重心をかけて立っているか

・心はどんな動きか

など、細かく観察しましょう。

食器洗いで瞑想するよう決めたのであれば毎日食器を洗うたびに実践してみてください。

そうすることで、毎回違う感覚を味わえたり、昨日とは違う発見が出来たりと、瞑想が深まっていきます。

 

 

まとめ

寝れば回復する体の疲労と違い、脳疲労は自分で気が付きにくく、その為、回復しにくいことがよくわかりましたね。

脳疲労がたまりすぎると、何かをしようとする気力さえなくなってしまいます。
脳をしっかりと休めるためには、マインドフルネス瞑想で、今に集中することが効果的です。

効果を実感するためにも、毎日の習慣として取り入れてみてください。

スマホに瞑想アプリをダウンロードしておくと、SNSを見る前に瞑想をすることができるのでおすすめです。ぜひRelookのアプリを利用してください。

「脳を休めたいとき」の一週間コースもあります。

正しく『脳疲労』を理解し、心地よく毎日を過ごしましょう。

※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。