あなたは瞑想でポジティブになれる、という話を聞いたことがあるかもしれません。
その理由はご存知でしょうか。
今回は心理学的な目線から瞑想の効果を解説していきます。
目次
オプティミストとペシミスト
あなたが友達との約束を忘れてしまったとき、どのように思いますか?
A 私は物忘れをしやすい
B 私は手帳を見るのを忘れた
Aを選んだあなたはペシミスト(悲観主義者)かもしれません。
何か自分とってネガティブな出来事が起きたとき、いつでも自分のせいにしてしまう癖はありませんか?
「私には才能がない」
「あんな事を言わなければよかった」
そんな風に自分を責めるより、
「今回は縁がなかっただけ」
「またの機会に結果を出せるよう努力しよう」
と、次に向けて気持ちを切り替える方がモチベーションを高く保てます。
このように物事を楽観的に捉える人の事をオプティミスト(楽観主義者)と言います。
ポジティブ心理学の父マーティン・セリグマン博士によると
人生はオプティミストにもペシミストにも等しく挫折や試練を与えるが、オプティミストのほうが上手に切り抜けて生きていく。オプティミストは職場でも学校でもスポーツでも良い成績を上げる。健康状態も良く、長生きできるという説さえある。
(出典:オプティミストはなぜ成功するか マーティン・セリグマン著)
と述べています。
「急にそんなことを言われても、考え方を変えられない!」と悲しまないでください。
学習によって、オプティミスト的な考えを身につけることが出来ます。
大切なのは、「自分の信念は思い込みであって事実ではない」と気付くこと、と著者は言います。
つまり、思い込みや色眼鏡で物事を判断している自分から脱却するという意味です。
客観的に自分を見つめる為に瞑想を行い、「マインドフルネス」を目指しましょう。
瞑想でポジティブになれるのはなぜか?
マインドフルネスは、「善悪の判断をせず、ただ、今に意識を向ける」状態を言います。
過去の失敗や後悔、未来への不安などを瞑想によって捨てることで、ネガティブな思考をストップさせます。
さらに、瞑想を習慣化することで、脳をストレスに強い構造へと変化させることもわかっています。
ハーバード大学のサラ・ラザー氏は、自身がヨガによって心の変化を感じたのをきっかけに、瞑想が脳にどのような変化を与えるのか、実験を行いました。
瞑想をしたことがない人に8週間瞑想を行ってもらったところ、
自己制御力や実行能力に関わる前頭葉領域や、記憶や感情に関わる海馬が変化していることがわかりました。
また、原始時代から構造が変わらない扁桃体と呼ばれる、闘争・逃走を判断する部分が小さくなっていることも分かりました。
TEDTalksで本人が分かりやすく説明をしています。
カリフォルニア大学ロサンジェルス校のマシュー・リバーマンの研究も紹介しましょう。
ラベリングと呼ばれる瞑想を行っていると、脳の腹側外側前頭前野の活動が増えることがわかりました。
活動が増えることで「脳のブレーキペダル」と呼ばれる部分を活性化させ、扁桃体の反応を抑制することが分かっています。
専門用語が続いてしまいました。ここまでの話をまとめましょう。
・瞑想によって主観を捨て、物事を客観的に捉えることができます。
結果、ペシミスト的な発想をしている自分に気付く事ができます。
そのため、思考をオプティミスト的な発想に変換することが可能です。
・瞑想を習慣化させることで脳の構造が変化します。
前頭前野と海馬が厚くなることで、ポジティブとハッピーな感情が強くなります。
また、扁桃体が小さくなり、ストレスに強くなります。
結果、衝動的な態度(物に当たる、舌打ちをするなどの、反射的な行動)をしなくなる、いい気分が続く、などの効果が現れます。
瞑想とセルフ・コンパッション
セルフ・コンパッションとは
あなたはセルフ・コンパッションという言葉を聞いたことがありますか?
関西学院大学文学部の有光 興記教授によると
セルフ・コンパッション(self-compassion)は、直訳すると自分への慈しみ、または自分への思いやりとなる。(中略)セルフ・コンパッションは、仏教伝来の概念で、私たちに幸せのあり方を教えてくれるし、それを実践することで『あるがまま』を受け入れられるようになる。(中略)
自分自身を負の側面も含めて『あるがまま』に受け入れるには、そのための心のありようが必要となる。それが、セルフ・コンパッションである。
セルフ・コンパッションを理解するには、まず他者へのコンパッションを思い出すと分かりやすい。
親しい人、愛する人が困っているときのことを想像してみてほしい。
(中略)
コンパッションは、困っている人を見たとき、その苦痛を何とかしてあげたい、苦しみを取り除いてあげたいと自然と湧き起こってくる感情のことである。
他人を助けたいと思う気持ちをそのまま自分に向け、苦しみに優しく寄り添う。
欠点や失敗は誰にでもあるものだと認識し、自分に対する批判や後悔を取り除く。
自分を甘やかすのではなく、客観的に自分を見つめ、「自分を思いやる」ことがセルフ・コンパッションと言えるでしょう。
セルフ・コンパッション研究の第一人者であるクリスティーン・ネフ氏は、
セルフ・コンパッションの度合いが高い人ほど、不安の感情が低く、楽観的であると述べています。
瞑想で思いやりを育てよう
マインドフルネスとセルフ・コンパッションの関係を示唆する、最新の研究を紹介します。
論文サイト:https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/jclp.22932
研究者たちは、マインドフルネス瞑想の効果として、3つの仮説を立てました。
・セルフコンパッション能力
・人生には意味があるという信念を持つ
・経験的回避が低い※
※望ましくない思考や感情を、変更または回避しようとする心の動きを表現する心理学用語。
不安症の人ほど、経験的回避の傾向が強い。
414人の瞑想者と414人の非瞑想者を比較・分析した結果、瞑想実践者はこれら3つの要素においてポジティブな結果が得られました。
瞑想を続けることで、自己への思いやりを深め、人生を充実させ、ネガティブな出来事をそのまま受け入れることができる、ということが言えるでしょう。
実際の瞑想のやり方
①呼吸瞑想(ラベリング)
自分への注意力が高まるラベリングを利用した呼吸瞑想のやり方です。
1.楽な姿勢で座りましょう。イスの場合は浅く腰掛け、床の場合は座布団を利用して腰を立てましょう。
2.ゆっくりと深呼吸を3回繰り返します。鼻から吸って口から吐きましょう。
3.目を閉じて自然呼吸に戻りましょう。
4.心の中で呼吸のリズムに合わせ「吸う・吐く」とつぶやきましょう。
この時に、呼吸をコントロールしないように気をつけましょう。
5.呼吸から意識がはずれ、雑念がわいてきたら心の中で「考え事をした」や「雑念」とつぶやき、また呼吸に戻ります。
自分の中に起こる感覚・思考・感情を、1つ1つ言葉にしていきます。
心の動きにラベルを貼ることで、その存在を自覚しやすくなります。ポイントは、良し悪し・好き嫌いの評価を加えない、ということです。
単純な言葉でラベルを貼るようにしましょう。思考の整理がしやすくなります。
②慈愛の瞑想
自分と他人、そしてこの世に存在するすべての境界をなくし、大きな愛で包みこむような心を育む慈悲の瞑想です。
①
楽な姿勢をとります。仰向けの状態でもいいでしょう。
以下の文を唱えます。
「私が幸せでありますように、私が苦しみから解放されますように」
②
次に、好意を持っている人、尊敬している人を思い浮かべましょう。
その人に向かって念じるように唱えます。
「私の好きな人が幸せでありますように、苦しみから解放されますように」
③
次に、自分と関係のない、見ず知らずの人を思い浮かべます。例えば今日電車で向かいに座っただけの人や、コンビニですれ違った人などを、一人だけ思い浮かべます。
その人に向かって念じるように唱えます。
「あの人が幸せでありますように、苦しみから解放されますように」
④
次に、自分の苦手な人、思い出すだけで胸が苦しくなるような、ネガティブな感情を抱く人を思い浮かべましょう。その人に向かって念じるように唱えます。
「私の嫌いな人が幸せでありますように、苦しみから解放されますように」
⑤
最後にこう唱えましょう。
「生きとし生けるものが幸せでありますように、生きとし生けるものが苦しみから解放されますように」
さいごに
・失敗をすると自分のせいだと思う
・世の中、自分にはどうしようもないことばかりだ、と感じる
・そもそも自分には運がないから、とすぐにあきらめてしまう
こんな事を感じている人は、ぜひ瞑想を取り入れてください。
負の感情は、誰の心の中にも生まれるものです。
問題は、負の感情に飲み込まれ、自暴自棄になったり、無気力になってしまうことではないでしょうか。
まずは自分の幸せを願えないと、他人の幸せを願うことはできません。
瞑想によって、もう一人の自分が、自分を優しく抱きしめるように、あなたの苦労や悲しみを労いましょう。
自然と肩の力が抜け、楽観的で幸福な気分になれるはずです。
Relookアプリの中には「自分を大切に思えるようになる」という誘導瞑想があります。
まずは音声ガイドに従って、楽な気持ちで行ってみてください。
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。