EQとは何か

あなたはEQという言葉を聞いたことがありますか?

EQとは、心の知能を測定する指標のことです。

これは、知能テストで測定されるIQとは異なる能力を示します。

こころの知能指数とも呼ばれ、私たちの幸せに大きく影響しています。


ちなみに、グローバルな信頼性の高いアセスメントを通して、日本人のEQは調査対象の160ヵ国(20万人)中、最下位という結果になりました。

EQを提唱してきた心理学者のダニエル・ゴールマンは、EQの能力を5つの領域に分類しています。

・自己認識・・・自分の本当の気持ちを自覚し尊重し、心から納得できる決断を下す能力

・自己統制・・・衝動を自制し、不安や怒りのようなストレスの元になる感情を制御する能力

・モチベーション・・・目標の追求に挫折したときでも楽観を捨てず、自分自身を励ます能力

・共感・・・他人の気持ちを感じ取る能力

・社会的技能・・・集団の中で調和を保ち、協力し合う能力



EQの能力をゴールマンは自著でこのように述べています。

IQが同じでも人生に成功する人とつまずく人がでてくるのは、EQに差があるからだ。私たちが知能をはじめとするさまざまな能力をどこまで活用できるか決めてしまうという意味で、EQは「メタ能力」と呼ぶべき能力だ。

(出典:講談社 EQこころの知能指数 ダニエル・ゴールマン著)

つまり、人生に与える影響は、IQ(頭脳の明晰さ)よりも、EQの方が大きいということです。

頭はとても良いのに、他人の気持ちに配慮できず、物事をうまく進められない。

そんな人に、あなたも出会ったことがあるのではないでしょうか。


その極端な例が、クリストファー・ランガンです。

彼のIQは195以上で、IQが150と言われているアインシュタインを大きく超える、とんでもない頭脳の持ち主です。

生まれて半年で言葉を話し、3歳にして独学で字が読めるようになり、知的好奇心も旺盛で学者になることを夢見ていました。

そんな彼は、大学を2度も中退し、学問の道を断念。そして、建築現場、ハマグリ漁などの肉体労働の職を転々とする人生を歩みます。

才能で人生が決まるとすれば、ランガンは世界的な研究者になっていたでしょう。

では、彼はなぜ学問の道からドロップアウトしてしまったのでしょうか?

その原因の1つが、処世術の欠如です。

処世術は、学んで身につけるものです。

生まれつき世渡りが上手な人もいますが、誰しもが後天的に習得できるのが特徴です。

ランガンは、家庭的、経済的な事情から、処世術を習得する機会がなかったのです。

このように、生まれつき頭が良いことは、望んだ人生を送ることに直結するとは限りません。

IQよりも、他人とうまく関れる技術を身につけることの方が、あなたの人生には大切です。

そして、その技術は、EQによって裏打ちされるものだと言えます。

(参考:「天才! 成功する人々の法則」マルコム・グラッドウェル)


EQがあなたの人生にどれほど重要なのか、ご理解いただけましたね。

「とはいえ、自分はIQにもEQにも自信がない」

そう思ったあなたに朗報です。EQは才能ではありません。

つまり、学ぶことで、後天的に獲得できる能力なのです。

先天的なEQの高さは個人差があるかもしれませんが、鍛えれば伸ばすことができます。

また瞑想とIQの関係については、こちらの記事で詳しく解説しているのでぜひ目を通してみてください。

 

瞑想がEQに及ぼす影響

EQの出発点は、自分や相手の感情を、正しく認識することです。

そして、認識するためには、感情に対して注意深くなることが大切です。


この注意深さを鍛える手段としてマインドフルネス瞑想がとても有効といわれています。


マインドフルネス瞑想とは、マインドフルネスを目指して行う瞑想のことです。

マインドフルネスとは、心が「いま、ここ」にある状態をいいます。

言い換えると、いま現在の心や身体の状態に深く集中していながら、リラックスしている状態です。

マインドフルネス瞑想をすることで、自分の感情に対する注意力が高まるのです。

それだけでなく、マインドフルネス瞑想を習慣的に行うことで、

瞑想をしていない時でさえも、いま現在の状態に対して自覚的になれます。


このことを裏付ける研究を紹介しましょう。

神経画像研究者のジェリー・プレフフィンスキー=ルイスらの研究によると、瞑想修行を1万時間以上終えた人たちに女性の悲鳴などのネガティブな音声を聞かせ、脳の動きを観察したところ、瞑想をしていない人と比べ、扁桃体と呼ばれる情動的な脳の領域の活動が低かったことが分かりました。

 

また扁桃体についても説明しましょう。

扁桃体には「逃げるか戦うか」を判断する役割があります。

恐怖を感じる場面では、顔の血の気が引き、血液が両足などに向かって流れ出します。危険から逃げ出すためです。

怒りを感じると、血液は両手に集まります。両手で武器や拳を握り戦うためです。同時にアドレナリンが急増し、激しい動作に備えます。

このようにあなたが意図としなくても脳の扁桃体が勝手に判断をしてしまうのです。

瞑想によって脳のトレーニングを行うことにより、脳は学習し、原始的な反応を示しにくくなることがこの実験で明らかになりました。

 

EQが上がるとどうなるのか?



EQの能力を伸ばすとどのようなメリットがあるのでしょうか。

Googleでマインドフルネス研修のプログラムを作ったチャディー・メン・タン氏は自著でこのように述べています。

EQは、私たちが自分自身の持続可能な幸せのお膳立てをするのを助ける技術をもたらしてくれる。(中略)幸せはEQを養うのに伴う、避けようのない副作用かもしれない。

回復力、楽観、優しさなど副作用はほかにもある。(中略)EQは仕事ですばらしい成功を収めるお膳立てをするだけではない。すべての人の個人的な幸せを実現するためのお膳立てにもなる。

(出典:英治出版 「サーチ・インサイド・ユアセルフ」チャディー・メン・タン著)

私たちの生活は多種多様な人間関係によって成り立っています。

親、パートナー、子ども、友人、上司、同僚、部下、関連部署の人、はたまたいつも行くお店で出会う店員さんなど、数えだしたらキリがありません。

メン氏は、EQを鍛えることにより自分と、そして自分とかかわる多くの人たちを幸せにできるのだと強く主張しています。

このことに関連する、筆者が出会ったEQが高い人のエピソードを紹介しましょう。

筆者の友人であるN氏はこのコロナ禍で自国に帰れなくなったベトナム人たちの身の回りの世話をしています。

彼らは、仕事がなくなり、住むところも追われ、現在とあるお寺で集団生活を送っています。

N氏はそのお寺の住職と古い友人という縁もあり、連日寺に通い、彼らが必要となるものを購入したり、時には大きな白い布とプロジェクターを設置し、映画上映会を開催したりしていました。

私が「毎日寺にボランティアに行っているって聞いたよ。大変だね。」と伝えたらN氏はこう答えたのです。

「僕はボランティアではなく、ベトナムの友達がいっぱいいるから遊びに行ってるだけですよ!彼らと楽しんでいます。」

N氏は今の状況を「大変」や「助けてあげている」といった言葉を一切使わなかったのです。


EQが高い人物像の特徴として、

・社会的なバランスが取れ、外交的で快活。何かを恐れたり、くよくよと悩んだりすることはない。

・人のために身を投げ出す気持ちがあり、他人に親切で思いやりが深く、相手に寄り添った対応ができる。

・感情が豊かだが、その感情が暴走するようなことがない。

といった点が挙げられます。
(参考:講談社 EQこころの知能指数 ダニエル・ゴールマン著)

N氏はまさにそれらを体現したような人で、ベトナム人たちも、N氏のことを大変好いている様子でした。

そして本当に、みんな楽しそうに過ごしているのです。

このようにEQ は自分と、自分の回りの人たちの心を温かくすることができるのです。


EQを高めるマインドフルネス瞑想のやり方

通常編

イスや床など座って行ういつでもどこでもできる呼吸瞑想のやり方です。

<やり方>

1.姿勢を整える

床に胡坐をかく、もしくはイスに浅く腰掛け、背筋を気持ちよく伸ばし座ります。

ポイントは、「背筋を伸ばそう!」と意気込みすぎないことです。

筋肉が緩み、骨で身体を支えているような感覚で座りましょう。余分な力は抜きます。

富士山になったつもりで堂々と腰掛けてください。

 

2.息を整える

大きく深呼吸をしましょう。鼻から大きく吸って、口から細く長く吐き出します。

次は、自然に呼吸します。

無理にゆったりとした呼吸をしなくても大丈夫です。

そして、呼吸に意識を向けましょう。腹式呼吸を繰り返し、おなかが膨らんだり、しぼんだりする様子を追いかけます。

心の中で「膨らむ」「しぼむ」とつぶやくと集中しやすくなります。

 

3.心を整える

次々に浮かび上がる考え事によって呼吸に意識が向けられなくても、ただそれを認め受け流しましょう。

まるで車が通り過ぎるのをただ見ている歩行者のように、ぼんやりとその考え事を受け流しましょう。

心の中で「考え事をした」とつぶやき、また呼吸に意識を戻します。


自分の中に起こる感覚・思考・感情を、1つ1つ言葉にしていきます。

これを
ラベリングと言い、心の動きにラベルを貼ることで、その存在を自覚しやすくなります。

ポイントは、良し悪し・好き嫌いの評価を加えない、ということです。

ラベリングは、EQを鍛えるために必要な注意力を養う点でとても有効です。

考え事をしている自分に早く気が付き、感情をコントロールすることができます。

 

EQ特化編

テーラーワーダ仏教由来の慈悲の瞑想を紹介します。

自分と他人の境界をなくし、自分の幸せを願うように世界に存在するすべての生命の幸せを願う。

そんな心を育て上げることが、慈悲の瞑想を行う目的です。

そんな気持ちで常にいられたら、マインドフルに生きられるでしょうね。

<やり方>

楽な姿勢をとります。仰向けの状態でもいいでしょう。そして以下の文を唱えます。
「私が幸せでありますように、私が苦しみから解放されますように」

次に、好意を持っている人、尊敬している人を思い浮かべましょう。その人に向かって念じるように唱えます。
「私の好きな人が幸せでありますように、苦しみから解放されますように」

次に、自分と関係のない、見ず知らずの人を思い浮かべます。例えば今日電車で向かいに座っただけの人や、コンビニですれ違った人などを、一人だけ思い浮かべます。その人に向かって念じるように唱えます。
「あの人が幸せでありますように、苦しみから解放されますように」

次に、自分の苦手な人、思い出すだけで胸が苦しくなるような、ネガティブな感情を抱く人を思い浮かべましょう。その人に向かって念じるように唱えます。
「私の嫌いな人が幸せでありますように、苦しみから解放されますように」

最後にこう唱えましょう
「生きとし生けるものが幸せでありますように、生きとし生けるものが苦しみから解放されますように」

(参考:https://j-theravada.net/world/metta/


マインドフルな状態へ到達するために、呼吸や身体ではなく、言葉や概念に意識を集中させる。

そんなイメージで取り組んでみてください。

 

EQだけじゃない、まだある瞑想の効果とは?


瞑想することによって得られる代表的な効果を5つ紹介します。

・自分の気持ちをコントロールできる

・コミュニケーション能力の向上

・ストレス軽減

・集中力の向上

・記憶や判断力の向上

感情のコントロールから始まり、記憶力や判断力の向上までもが期待できます。

より良い判断が、あなたの感情にとってより良い結果を生む。

そんな好循環がもたらされることが、多くの研究により示されています。

そして、Googleのような巨大企業だけでなく、医療や福祉の現場にも取り入れられています。

上述のような事実が、マインドフルネス瞑想の効果を裏付けています。

 

まとめ



ダニエル・コールマン氏は「人生で成功できるかどうか、本当の意味で聡明な人間かどうかを決めるのは、IQではなくEQの高さだ」と主張し、全米で大変話題となりました。

EQは、まだ日本ではあまり馴染みのない言葉かもしれません。

しかしEQがどれほど私たちの人生に大きく関わっているか、今回の記事を読んでよく理解していただけたかと思います。


EQはどの年齢からでも鍛えることができます。

瞑想を一人で習慣にするのが困難だと感じるのであれば瞑想アプリ「relook」を利用してみてください。

寝る前や、電車での通勤時間など時間や場所を選ばずに行うことができます。

あなたも今日から瞑想を習慣化し、EQアップを目指しましょう!

Relookアプリについてはこちらを参照してみてください。


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※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。