瞑想の姿勢はなんでもいいのか?


瞑想を実践しようと思ったとき、一体どんな姿勢が効果的なのかご存知でしょうか。

結論から言いましょう。

楽に呼吸ができ、それでいて脱力しきらない姿勢であればどんな姿勢でもかまいません。


しかし、自分の体がどんな姿勢をとれば呼吸が楽で、どんな姿勢であれば脱力しきっていないと言えるのかを分かっている人のほうが少ないでしょう。

現在、瞑想で取り入れられる代表的な姿勢は、先人たちが積み上げた「息が楽にでき、なおかつ集中できる姿勢」の英知の塊です。

つまり「型」と考えていいでしょう。


まずはその型を学び、どういう身体の動きによって成立しているのかを自分の身体で体験してみるのが、「効果的な姿勢」に辿り着く、一番の近道かもしれません。


今回は伝統的な瞑想の姿勢から、コツまで詳しく解説していきます。

瞑想をする時の座り方の種類

※基本事項※

・坐禅用の坐蒲(ざふ)か2つ折りにした座布団にお尻を半分のせる

・おしりの左右についている骨、「坐骨」で体を支えるイメージで、しっかりと坐布に押し付ける。(そうすることで自然と腰が立ち、背筋を伸ばすことができます。)

・あごを軽く引き、肩の力を抜く

・ひざの上に手の甲を乗せ、手のひらは上向き。指先は脱力もしくは印を結ぶ

この座り方が安楽坐・半跏趺坐・結跏趺坐での共通事項です。

安楽坐



シンプルに足を交差した、いわゆる「あぐら」の座り方です。ヨガではスカアーサナと呼ばれ、「楽な、心地よい、容易な」という意味をもちます。

半跏趺坐(はんかふざ)



胡坐の状態から片足だけ太ももに乗せる坐法です。

次に紹介する結跏趺坐よりも簡単なのが特徴です。

 

結跏趺坐(けっかふざ)



胡坐から両足を深く曲げ、太もも付け根に乗せる坐法です。

安楽座よりも柔軟性が必要ですが、しっかり組めれば自然と骨盤が立ち、長時間安定して坐ることができます。

坐禅では結跏趺坐がスタンダードな坐法になります。

 

正座



日本人に馴染みのある正座。

両膝を折りたたむので、自然と腰が立ちやすく、猫背になりにくいのが特徴です。

しかし足がしびれやすいので長時間の瞑想に向きません。

 

椅子に座る



イスに浅く腰掛け、背筋を気持ちよく伸ばし座ります。

股関節や腰、ひざに痛みがある人はイスが一番いいでしょう。

 

瞑想の姿勢のポイント

どっしりと座る



冒頭で述べたとおり、「○○しなければ」と思いすぎると逆に目指しているものとの距離が遠くなってしまいます。

ポイントとしてはイメージをもっておくと座りやすくなるでしょう。

そこでオススメなのが山です。なるべく大きく、威風堂々とした山がいいでしょう。

どっしりとした裾野を持つ山になったつもりで座ってみましょう。

気道が楽なポジション



筋肉で動かすのではなく、骨が主体で動きましょう。                               

そうすると、自然とあごが引け、耳と型の距離は遠く、頭のてっぺんは天井を押すようにまっすぐと上に向いているでしょう。

これが一番楽に呼吸ができるポジションです。

気道が確保され、どこの神経も圧迫していません。

何度も言いますが「腰を立てよう」「背筋を伸ばそう」「あごを引こう」と思わないことです。

 

視線の位置



目は半眼、目線は斜め下45度くらいで前方2メートルほど前を見ましょう、と言われています。

しかし、最初の内は目を閉じたほうが集中しやすければ閉じてもいいでしょう。

ポイントは視界からの情報を遮断することです。

姿勢が決まればおのずと視線も決まっていきます。

もし視線がブレて集中できないのであれば姿勢が崩れているかもしれません。

視線だけで考えるのではなく体全体として捉えましょう。

姿勢の他に気を付けること

静かな環境



瞑想は、いつでも、どこでも行うことができます。通勤電車の中、カフェでコーヒーを待つ間、エレベーターに乗っているとき、など時間や場所を選びません。

しかし慣れないうちは、

・静かで落ち着いた環境

・毎日続けられる身近な場所

で行うほうがいいでしょう。

なぜなら、マインドフルネスは自分の体や呼吸に意識を向ける作業だからです。周りの人の目や雑音が、あなたの集中力の妨げになってしまうかもしれません。

自室のベッドやソファの上など、落ち着きやすい場所で瞑想を行うことをオススメします。

 

服装



特に服装にこだわることはありません。

しかし長時間坐法を組んで瞑想をしようとなると、ゆったりとした服装で行ったほうがリラックスしやすいでしょう。

全身オーガニックコットンで作られた服を着て瞑想を行う人もいます。

あなたの好みに合わせてください。

 

部屋を片付ける



視覚情報が多いと、どうしても気が散ってしまいます。

自分が落ち着ける空間にするためにもある程度片付けておいたほうが良いでしょう。

ここで余談ですが、瞑想と部屋の片付けが似ている、という話を聞いたことがありますか?

瞑想は思い込みやエゴといった主観、そして過去の思いや未来への不安を手放していく行為です。

部屋の片付けも、いると思い込んでいる過去の産物や、いつか必要になるかもしれないと、未来のことを考えて捨てられないものたちを片付けていく行為ですよね。

「こんまり流」としてアメリカでも大活躍中の近藤麻理恵先生も自著でこのように述べています。

私のお伝えしている片づけ法が、たんなる片づけノウハウではないからです。

行為だけ見れば、小学校一年生でもできることのはず。それができない、もしくは片づけても元に戻ってしまうというのは、そもそも習慣を継続できなかったり、意識の問題だったり、つまり精神面(マインド面)に原因があるのです。

つまり、「片付けはマインドが九割」なのです。

片づけを真剣にしていると、瞑想状態とはいかないまでも、自分と静かに向き合う感覚になっていくことがあります。自分の持ちモノに対して、一つひとつときめくか、どう感じるか、ていねいに向き合っていく作業は、まさにモノを通しての自分との対話だからです。

(引用 サンマーク出版 人生がときめく片づけの魔法 近藤麻理恵(こんまり))


部屋の片づけから始めることで、よりマインドフルになるかもしれません。

スマホをオフにする



環境を整え、いざ瞑想をしようと思ったその瞬間、ポン、とスマホから通知音が聞こえてしまった。

そんな中であなたは集中できますか?

「誰からの連絡だろう?急ぎかな。」

「そういえばあの人に連絡したのに返事がまだだぞ。」

「明日の飲み会、何時集合か確認するの、忘れてた!」


など、通知音ひとつで思考が思考を呼んでしまいます。

瞑想前は通知をオフにしておきましょう。

 

瞑想のやり方

基本の呼吸瞑想のやり方



どこでも気楽に行える、イスや床などに座る呼吸瞑想法です。


やり方


 1.姿勢を整える(調身)

先ほど伝えた坐法、もしくはイスに浅く腰掛け、背筋を気持ちよく伸ばし座ります。

筋肉が緩み、骨で身体を支えているような感覚で座りましょう。肩の力を抜きます。

富士山になったつもりで堂々と腰掛けてください。

2.息を整える(調息)

大きく深呼吸をしましょう。鼻から大きく吸って、口から細く長く吐き出します。

3回深呼吸を繰り返しましょう。

次は、鼻から吸って鼻から吐く自然な呼吸に切り替えましょう。

無理にゆったりとした呼吸をしなくても大丈夫です。

そして、呼吸に意識を向けましょう。腹式呼吸を繰り返し、おなかが膨らんだり、しぼんだりする様子を追いかけます。

心の中で「膨らむ」「しぼむ」とつぶやくと集中しやすくなります。


3.心を整える(調心)

次々に浮かび上がる考え事によって呼吸に意識が向けられなくても、そこで自分を許し、また呼吸に戻りましょう。ただ呼吸を繰り返します。

自分の中に起こる感覚・思考・感情を、1つ1つ言葉にしていきます。これをラベリングと言い、心の動きにラベルを貼ることで、その存在を自覚しやすくなります。ポイントは、良し悪し・好き嫌いの評価を加えない、ということです。

集中を乱す原因を認識し、「かゆい」「足がしびれた」「心臓がどきどきする」など名前をつけ、客観視していきましょう。

そうすることで、その状態に囚われず、また呼吸に戻ることができます。

こうして瞑想をしていくことで、ストレスの低減、集中力・記憶力の向上、感情のコントロールなどの効果が期待できます。

 

瞑想の姿勢がつらい時の対処方法



瞑想の姿勢、特に床に坐る姿勢では腰、股関節、膝に負担がかかりやすいデメリットがあります。

坐蒲を使うことで緩和できますが、痛みを無理して行う必要はありません。

 

楽な姿勢で瞑想に取り組もう

寝ながら瞑想

そもそも座らない、「寝たまま瞑想」のやり方をお伝えします。

布団の上、もしくはヨガマットの上で、仰向けになりましょう。

部屋を薄暗くして、熱すぎず、寒すぎないように室温を調整します。

体の力を抜き、床と体の接地面を感じましょう。

そしてゆっくりと腹式呼吸を行います。

一呼吸を1カウントとし、10までゆっくりと数えましょう。

途中、考え事をしていることに気が付いたら、また1から数えなおします。

relookなどの瞑想アプリで誘導してもらいながら行うと、よりリラックスできます。

 

姿勢を楽にとる方法



瞑想前に股関節や膝、肩や首などをストレッチするためにヨガを行いましょう。

「自然と座り、自然と呼吸する」ためにはまず体をゆるめ、自然な状態に戻してあげることが大切だからです。

「自分は体が硬いから無理!」と思ったあなたでも大丈夫。

凝り固まった体をほぐすことと、自分の体に意識を向けることが目的なので心配ありませんよ。

 

足首回し


足首が硬いと腰痛の原因にもなります。しっかりと足首回しを行いましょう。

(1)長座で座り、右脚を曲げ、足首が外に出るように左の太ももの上に乗せましょう。

右の足の指と指の間に左手の指を入れ、しっかりと絡ませます。

(2)右手で足首を固定し、大きく回しましょう。前後10回程度を目安に行ってください。


左も同じように行います。

「ハッピーベイビー」のポーズ




太ももの付け根にある鼠蹊部の内側に圧をかけることで、股関節周りのストレッチになります。

また血流が良くなります。

そして、背骨や太ももの裏まで心地よくストレッチすることで、坐法が組みやすくなります。


(1)仰向けに寝転がり、息を吐きながら両手でヒザを抱えます。軽くあごを引き、背筋を整えましょう。


(2)息を吸いながら両ヒザを開き、足の裏を天井に向けるよう膝を曲げた状態で脚をあげます。


(3)小指側から足裏をつかみます。

膝を脇の下に引き寄せる角度で足裏を下方向に引っ張り、足首はヒザの真上の位置に来るように調整してください。このとき腰が床から浮かないように、仙骨はしっかりと床に沈ませます。


このままの姿勢で30秒~1分程度キープ。ポーズを終えたら、仰向けの姿勢に戻り、休息しましょう。


「牛の顔」のポーズ



肩関節・肩甲骨・胸と上半身が心地よく伸びるポーズです。肩こりの解消に効果的です。

(1)長座で座ります。右ひざを曲げて、左脚を上からまたぎます。


(2)左ひざを曲げて、右の腰の横につけます。(脚がクロスします。)坐骨座骨が均等に床に着くようにします。骨盤を立てましょう。


(3)息を吸いながら右手を上に上げます。吐きながら右ひじを曲げて背面へまわします。

中指が背骨に当たるようにまっすぐ下に下ろしましょう。

左手は、親指を下向きにして、横に上げます。背中側に送りながらひじを曲げます。


(4)右手と左手を背中の後ろでつなぎ、引っ張り合いましょう。目線は正面で。あごを上へ上げ過ぎないように注意します。


手が後ろでつなげない方はタオルなどを用意し、タオルの端と端を持って引っ張り合いましょう。

5呼吸ほどキープし、ゆっくりと手と足を開放しましょう。


反対も同様に行います。


どのポーズをとっているときも「今、どこが伸びているかな?」「心地いいと感じる場所はどこかな?」と常に自分に問いかけ、探索しましょう。


今の自分の体に意識を向け、マインドフルなヨガを行うことで瞑想の集中度も変わっていきます。ぜひ行ってみてください。

 

まとめ



これから瞑想を行おうと思ったときに形から入るのは悪いことではありません。

しかしその形がなぜこういった形なのかを理解せず、ただ手順に従って

「腰を立てて、背筋を伸ばして、あごを引いて、半眼で、舌はこの場所で」とやっていたのであれば、いつまでたっても深い瞑想を行うことはできません。


正しい姿勢をとろうと己の意思で行うのではなく、自然といい姿勢が取れているような体と心を作ることがもっとも大切だということを覚えておいてください。


無理せず、自分にとって心地がいい姿勢を見つけてくださいね。


※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。