扁桃体とは?



扁桃体は、脳の側頭葉の内側に左右対称に位置しています。15~20mmほどのアーモンド型の器官です。扁桃とはアーモンドのことを意味しますので、そう名付けられました。

この扁桃体は、「恐怖記憶」の形成に大きな役割を担っており、不安、緊張、恐怖などを感じた時に他の神経系に警告を送る働きがあるとされています。

私たち人間が不安、恐怖、緊張などのストレスを感じると、扁桃体から「不安や恐怖に対処せよ」という指令が脳の視床下部という部分に伝えられます。

視床下部は、自律神経、ホルモンの分泌、情報伝達に関わる部分です。指令は次に副腎と呼ばれる場所に届き、そこからストレスホルモンと呼ばれる物質が分泌されます。

 

このストレスホルモンは、血液の流れに乗って全身を駆け巡り、体内のさまざまな臓器に指令を伝えます。例えば、指令を受けた心臓は心拍数が増えて血圧が上昇しますし、手や脇の汗腺は開いて汗ばみます。

さらに指令は自律神経にも届けられます。自律神経とは交感神経と副交感神経から成り、一方が優位に立っている時にはもう一方の働きが抑えられます。

扁桃体からの警告を受けると交感神経が優位になり、危険に対処できるように、瞳孔を開かせたり、心拍数を増やしたりして、身体を活動しやすい状態に変化させます。

 

扁桃体の働きは本来、危険を回避するための動物の本能的な能力であり、「恐怖記憶」によって危険に直面した場所には近づかないなどの防御行動をとることが可能になります。

しかし、扁桃体が過剰に活動してしまうと、脳も身体も緊張した状態が続くため休むことができなくなってしまうのです。

さらに、慢性的なストレスにさらされると、扁桃体に付いている樹状突起と呼ばれる信号を受け取る部分が拡大するため、ストレスに対して過敏に反応するようになると言われています。



瞑想が扁桃体に及ぼす影響



私たちの情動と深い関係のある扁桃体ですが、瞑想を継続的に行うことによって扁桃体の大きさや働きに影響があることが科学的なデータで実証されています。

ハーバード大学とマサチューセッツ大学医学部の研究者らは、マインドフルネス瞑想が扁桃体にどのような影響を及ぼすのかを調べました。

16名の参加者が1日平均27分間のマインドフルネス瞑想を8週間、毎日実践したところ、ストレスレベルが減少すると同時に扁桃体の脳細胞量が減少したという結果になりました。

出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3004979/pdf/nihms-232587.pdf

 

また、ウィスコンシン大学マディソン校の研究チームは、158名を対象に瞑想と扁桃体の関係を研究しました。

参加者は3つのグループに分けられ、一つ目のグループは瞑想を3年以上毎日行っている人たち、二つ目のグループはこれまで瞑想の経験がなかったけれども本研究のために8週間のマインドフルネス瞑想を実践した人たち、三つ目のグループは瞑想とは無関係の健康プログラムを8週間実践した人たちです。

ストレスが与えられた状況でのそれぞれのグループの扁桃体の働きを調べた結果、三つ目のグループに比べて、一つ目と二つ目のグループではストレスを受けた時の扁桃体の反応が抑えられていたという結果になりました。

出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6671286/pdf/nihms-1026771.pdf

 

これらの研究結果から、瞑想を継続的に実践することで扁桃体が小さくなり、ストレスを受けた時でも扁桃体の活動が抑制されることがわかります。



扁桃体の縮小によってもたらされる効果



このように、瞑想によって扁桃体が縮小し、反応が抑制されると、私たちの心身にどのような影響があるのでしょうか。

扁桃体は不安、恐怖、緊張などの情動と関わる場所ですので、ストレスを感じるような状況でも、情動がコントロールされて冷静さを保ちやすくなるとされています。

例えば、就職や転職の面接の時。不安や緊張が高まっている場面でも、冷静さを保ちながら、自分の長所をアピールしたり質問に自信を持って答えたりすることができるでしょう。

また、仕事でリーダー的な立場にあると、新事業の立ち上げや既存事業の継続・撤退を瞬時に決断しなければならないこともあるでしょう。そういったストレスフルな場面でも、扁桃体が縮小して働きが抑制されていると、周囲からのプレッシャーや自分の感情に流されずに、目標を達成するために必要な判断と決断を素早く、論理的に行うことができるといいます。

実際に、Apple社の創業者スティーブ・ジョブズ、マイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツ、パナソニックの創業者松下幸之助など、何人もの世界的大企業の創業者は、長年に渡って瞑想を行っていました。

また、Google、Yahoo!、Nike、Intelなどの世界的大企業でも、オフィスに瞑想用のスペースが用意されていたり、社員が無料で瞑想のプログラムに参加できるサービスが提供されています。


さらに、米国の巨大なヘッジファンドであるブリッジウォーター・アソシエイツの創業者でありCEOとして知られている投資家のレイダリオ氏は、20歳の頃から瞑想を実践しています。

レイダリオ氏は、市場で取引が行われている時間帯でも、ストレスを感じると仕事を中断して20分間の瞑想を行うのだそうです。

瞑想を行うことで常に冷静にいることができ、落ち着いて判断を下すことができるようになる、とダリオ氏は語っています。

下記の記事ではレイダリオ氏と瞑想について解説しています。
レイダリオが実践する瞑想を解説!世界的投資家になれたワケとは?


仕事の場面だけでなく、生活環境が変化して戸惑うことが多い、人間関係に悩まされている、親しい人とお別れしなければいけなくなったなど、扁桃体が活性化してストレスホルモンが分泌されやすくなる状況はさまざまです。

このような状況でも、扁桃体の働きが抑制されていると、感情的に反応するのではなく、冷静に事柄を理解して落ち着いて対応することができるとされています。

 

実際の瞑想のやり方


マインドフルネス瞑想は科学的にもさまざまな効果が証明されている瞑想のひとつです。ここではマインドフルネス瞑想の基礎をご紹介します。

マインドフルネスとは、今ここでの経験に意識を集中させている状態です。

「良い」「悪い」といった評価を与えずに、ありのままの状態を受け入れます。

普段は多くの情報を処理し、忙しく働き続けている脳を鎮めることで、脳内が整理されて、集中力や判断力が研ぎ澄まされるとされています。

また、脳がリラックスすると質の良い睡眠にもつながり、寝ているのに疲れがとれないという慢性疲労に悩まされる人にも効果的であるといわれています。


そんなマインドフルな状態になるための練習として実践されるのがマインドフルネス瞑想です。

マインドフルネス瞑想を継続的に実践することで、頭の中に湧いてきた思考を客観的に観察できるようになり、感情的な行動や反応を制御しやすくなるとされています。

医療や福祉の現場だけでなく、世界のトップアスリートがトレーニングに取り入れたり、世界的大企業でも社員が瞑想を実践しやすい社内環境を整えたりしています。

①「調身」姿勢を整える



マインドフルネス瞑想には、決まった体勢はありませんので、寝る、座る、立つ、歩くなど、自分の好きな体勢を選びましょう。初心者には寝る瞑想と座る瞑想から始めると取り組みやすいかもしれません。

寝る瞑想

ベッドや床に敷いたヨガマットなどに横になって瞑想を行うと、座って瞑想を行う時よりも身体の力を抜いて自分の姿勢を意識しやくすなり、集中力が高まりやすいされています。

つま先から頭頂までまっすぐになるように横たわり、腕はリラックスさせて伸ばします。手のひらは自然に開き、天井の方向を向けましょう。


 
座る瞑想

いくつかの座り方があります。代表的なものは、結跏趺坐(左右両足の甲を反対の足の太ももの上に乗せる)、半跏趺坐(片方の足のみ、甲を反対の足の太ももの上に乗せる)、正座、あぐら、椅子に座るなど。どれが正しくてどれがより効果的ということはありませんので、好みの座り方を選びます。

姿勢を正して身体をリラックスさせ、手は両膝の上に置きます。


②「調息」呼吸を整える



普段、私たちは大半の時間、無意識に呼吸をしていますが、マインドフル瞑想では呼吸に意識を向けます。

深呼吸を1~2回行ったら、鼻からゆっくりと吐き、ゆっくりと吸います。瞑想には腹式呼吸が適しています。

無理に息を深く吸ったり、全部吐ききろうとせず、自然な呼吸の長さを維持します。

深呼吸と同時に目を閉じます。


③「調心」心を整える



意識を向ける対象を決めて、瞑想中はその一点に集中します。

基本的には自分の呼吸に意識を向けます。

腹式呼吸によってお腹が膨らんだりへこんだりしていく動きや、空気が鼻を通り抜ける感覚などにに意識を向けます。


瞑想の種類によっては、自分の身体の動作に意識を向けることもありますし、瞑想アプリや音楽を流したり実践する場合には、そのような音に集中するのもよいでしょう。

時間がきたらゆっくりと目を開き、少しずつ意識を戻していきます。

瞑想中に時間を気にしなくていいように、アラームをセットするのもおすすめです。


実践する際のポイント

瞑想をより効果的に行うためのポイントを解説します。

 

環境を整える



瞑想を実践する前に、瞑想を行う場所を決めてその環境を整えましょう。

マインドフルネス瞑想は部屋の中でも屋外でも実践できます。

いずれの場合も、周囲が騒々しかったり、人通りが多かったりすると気が散りやすいので、落ち着いた静かな場所を選びます。

家の中で行う場合は、周辺を整理整頓すると集中力が高まりやすいです。

服装や冷暖房器具で、寒すぎたり暑すぎたりしないように調整します。


また、毎回同じ場所で行うと気分が切り替えやすく、集中力が高まりやすいといわれています。

屋外の場合は天候に左右されることもありますので臨機応変に対応しましょう。家の中でも外でも、心地よいと感じ落ち着くことのできる場所を選びます。

瞑想を行う際に、スローテンポな音楽を流したり、室内の場合はキャンドル、エッシェンシャルオイル、お香などを使用したりするのも気分を切り替えリラックス効果を高めるために効果的です。


音楽を聴く場合は、リラックス効果の高いヒーリングミュージックが瞑想には適しています。Youtubeでもさまざまな種類のヒーリングミュージックが視聴できますので、どのような音楽が自分に合っているのか、いろいろと聴いてみましょう。


特に夜、室内で瞑想を行うときにおすすめなのが、キャンドルです。部屋の電気を消してキャンドルの灯だけで瞑想を行うと、心が落ち着きやすくなります。アロマキャンドルやLEDキャンドルを使用してもよいでしょう。ゆらゆらと揺れるキャンドルの光にはリラックス効果があります。


リラックスやリフレッシュなど、瞑想の目的に合わせて香りをプラスするのも有効です。エッセンシャルオイルやお香には、脳や心に働きかけるさまざまな香りがあります。自分に合った香りを探してみるのも楽しいですね。


瞑想アプリやYoutubeの活用



Youtubeでは瞑想に適した音楽や瞑想用の音声ガイダンスがたくさん配信されていますので、自分に合った長さや種類のものを選ぶことができます。

 

せっかく瞑想を行うならば、正しく効果的な方法で続けたいですよね。

そこでおすすめなのが瞑想アプリです。

瞑想アプリの「Relook」は、瞑想やリラクゼーションの専門家が制作にかかわっており、目的に合わせてさまざまなコースが提供されています。

いずれのコースでも、瞑想の基礎やコツなどを分かりやすく音声でガイドしてくれます。

初心者だけでなく、経験者でも満足のできるコンテンツが充実しています。


ひとりだと続けることがなかなか難しいという人でも、Relookには記録機能やリマインドメッセージ機能が搭載されていますので、ひとりで行うよりも継続しやすいというメリットもあります。

Relookアプリについてはこちらを参照してみてください。

まとめ

瞑想にはリフレッシュ効果や集中力の向上といった効果があることがたくさん実証されていますが、それだけではなく、脳自体の変化も期待できるとは驚きですね。

あなたも瞑想を実践して、いかなる場面でも冷静さを保つことのできる自分に一歩近づいてみませんか。



※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。