ヴィパッサナー瞑想のやり方まとめ

10分程度ででき、歩く・立つ・座るなどの動作をゆっくり時間をかけて行い、一つ一つの動作や感覚に意識を集中させます。またその動作や感覚を言葉にして唱えることで、余計な雑念を感じにくくなります。唱える際は脳内で唱えても口に出しても、どちらでも構いません。とにかくゆっくりと、感覚を味わうことを大切にしましょう。


そもそもヴィパッサナー瞑想とは?


さて、あなたはヴィパッサナー瞑想と聞いてピンとくるでしょうか?聞き馴染みのない方が多い言葉ですが、それもそのはず。実は仏教用語なのです。ヴィパッサナーには「よく観る」「あるがままを観る・気付く」などの意味があります。つまりヴィパッサナー瞑想とは、自分の心や動作をよく観察する瞑想法なのです。


 「いま、ここ」に意識をむける

瞑想と聞くと「心を無にする」印象がありますが、ヴィパッサナー瞑想はそうではなく、心の自然な動きを俯瞰して観察することで、「いま、ここ」に集中する”マインドフルネス”を達成します。つまり自然体で良いのです。

ちなみにこのヴィパッサナー瞑想と対になる瞑想法としてサマタ瞑想がありますが、こちらは一つのものに集中する瞑想法で、これに対してヴィパッサナー瞑想では自然といろんなものに移りゆく心をありのまま見つめる、という違いがあります。


毎日を変える、ヴィパッサナー瞑想の5大効果



ヴィパッサナー瞑想にはあなたの心のありようを変えてくれる様々な効果が知られています。そのため、例えば問題に直面したときに、その問題をどう捉えてどういう感情を抱くのか、そういった気の持ちようを変えていくことに繋がります。

ここではヴィパッサナー瞑想の代表的な効果を5つ紹介したいと思います。


 自分への思いやりが増え幸福感が増す

ヴィパッサナー瞑想の大きな特徴の一つとして、日々の幸福感が増大し人生をよりハッピーに生きられます。シドニー大学の研究によれば、5分間の瞑想を10日間行うだけでこの効果が得られるそうです。

また、幸福感が増す理由の一つに
自分を思いやる気持ちが強くなることが挙げられます。自分への思いやりがあると、「自分にはこんな短所があってダメだ」ではなくて「自分にはこういう長所がある。すごいぞ!」と考えられるようになります。

また仕事などで失敗しても、「大丈夫、次がある」「いい学びを得たよ」などと考えられるようにもなります。自分に優しく言葉をかけることができる、そんなイメージです。


 不安感が軽減する

私たちは不安や悩みが尽きない毎日を送っています。仕事のこと、恋愛のこと、友人関係などなど。その不安が大きくなり過ぎるとやがてうつ病などの精神疾患に発展してしまいます。

ヴィパッサナー瞑想では、
「いま、ここ」に集中することでそうした不安感を軽減する効果が知られており、またうつ病などの予防にも効果があります。

これは科学的にも実証されていて、アメリカのジョンズ・ホプキンズ大学が2015年までに得られた2万個弱の研究データをまとめて分析したところ、瞑想が不安を軽減する効果はやはりあると確認され、同時にうつ病予防への効果も確かめられました。


 思考の分散が抑えられる

いま不安感の話をしましたが、不安を感じる時って、自分の頭の中で不安が増大していきませんか?例えば古典的な例で、外出した後に電気を消したか不安になった時。

そういう時って、「家出るときにスイッチを押した気がする」「でも押してなかった気もする」「あれ?エアコンは消したっけ?」と頭の中で堂々巡りが始まりますよね。

こういう
思考の分散による不安の増大を抑える効果も、ヴィパッサナー瞑想にはあります。


 感情をコントロールしやすくなり、ストレスが軽減する

 感情のコントロールとは、どんな感情がいつ生じてどのくらい続くのか、そしてその感情の受け取り方を自分自身である程度決められることを言います。ヴィパッサナー瞑想ではこの能力が高まることが長年の研究で実証されています。例えば2007年のトロント大学の研究では、ヴィパッサナー瞑想をすることでマインドフルネスが高まり、外から嫌な情報が入ってきても動じにくくなったという研究結果が出ています。このようにヴィパッサナー瞑想には、他人や周囲の環境に心を脅かされにくくし、結果的にストレスを軽減する効果があるのです。


 注意力が上がる

ヴィパッサナー瞑想では注意力も上昇すると言われています。これは上述の通り、ヴィパッサナー瞑想によって自分の注意を過去や未来への心配から「今、ここ」への注意に集中するためです。またヴィパッサナー瞑想では「観察」を基本としているため、今行なっている仕事で異変が起きた場合に気付きやすくなる、という意味での注意力も上昇します。


無にならなくていい!ヴィパッサナー瞑想を始めるポイント

瞑想と聞くと、「心を無にする」イメージがありますが、ヴィパッサナー瞑想ではそのような難しいことは必要ありません。ヴィパッサナー瞑想で大事なポイントは①自然体でいること、そして②その自然な状態をありのまま観察すること、の2点です。

瞑想を始めてみたけど明日の仕事がどうしても気になってしまうなら、その状態をまずは認めて、次にありのまま観察してみれば良いのです。

無理にその雑念を消そうとする必要はありません。そうしてありままの状態の観察を続けていくと、次第に雑念が湧きにくくなってきます。


また、実際にヴィパッサナー瞑想を行う際に重要なことがもう2つあります。1つは、なるべくゆっくりと動作すること。自分の動作一つ一つを観察し味わうためには、動作をゆっくりにする必要があります。自分の動作を一つ一つ認識できて、それでいて無理のない範囲でゆっくり試してみてください。

また重要なことの2つ目は、
自分の動作や状態を言葉にすることです。脳内で言葉にしてもいいですし、実際に口に出しても構いません。例えば片足を上げる際には、「片足を上げます」と唱えてみましょう。このようにすることで、今の動作や状態に意識を集中しやすくなり、余計な雑念が湧きにくくなります。


ここまででヴィパッサナー瞑想の特徴をザッとご紹介しました。さて、これ以降ではヴィパッサナー瞑想の具体的なやり方を紹介していきましょう。



ヴィパッサナー瞑想のやりかた

 ヴィパッサナー瞑想のやり方の共通点は「基本的な動作をゆっくり行う」ことです。ここでは基本である①歩く、②立つ、③座る、という3つの動作を使った瞑想法をご紹介します。一回の時間は10~30分程度がオススメです。1時間くらいやっても良いのですが、何より続けることが大事ですので、短い時間でも定期的に続けられるような時間を選びましょう。


 ヴィパッサナー瞑想のやりかた①「歩く」

 歩く瞑想のやり方は非常にシンプルで、ゆっくりと足踏みしながら動作を言葉にするだけです。狭いスペースでも激しい運動は必要ないので、方向転換しながら行うことができます。では早速、具体的なやり方を見ていきましょう。

1. まず背筋を伸ばして立ちます。
2. 腕が気になるなら、手を組むなどして足に集中できるようにしましょう。
3. 片足をゆっくり上げます(右足からでも左足からでも構いません)。
4. この時に感じたことを言葉にしましょう。足が床から離れたことを強く感じたなら「右足 (左足) が床から離れました」と唱えましょう。あるいは足が上がったことに意識が向くなら、「右足 (左足) が上がっています/上がりました」と唱えてみましょう。
5. 次に「足を運びます 」と唱えながら、上げた足を前の方に動かしましょう。この時も足を前に進めている、その感覚を味わうことを大切にしてください。
6. 最後に「足を下ろします」と唱えながら、足を床に下ろしていきましょう。足が床に着いた感覚を感じたなら、「足が床に着きました」と唱えてみてもいいです。

 以上を左右の足で交互にやっていきましょう。慣れてくるとただの作業になってしまいがちなので、一つ一つの動作を味わうことを忘れないようにしましょう。


ヴィパッサナー瞑想のやりかた②「立つ」

 立つ瞑想は、歩く瞑想よりも短時間ででき、また立てるスペースさえあればどんなに狭くてもできます。瞑想時間は10分程度が目安になります。歩く瞑想よりも何を感じるかが様々に移り変わっていくので、意外にも歩く瞑想よりは難易度が上がります。さて、やり方をみていきましょう。


1. まずは軽く目を閉じて立ち、「立っています」と唱えましょう。
2. 次に「背筋を伸ばします」と唱えながら、背筋を伸ばしていきましょう。この時も、背骨の上がる感覚や筋肉の動きなどを感じながらゆっくりと行いましょう。
3. 「手を組みます」と唱えながら、後ろか前で手を組みましょう。この時も腕の動きや手を組む際の感触が感じられるはずです。
4. ここからは自分の意識の赴くままに、感じたことを唱えていきましょう。呼吸に意識を向けて「吸っています」「吐いています」と唱えるもよし、姿勢や筋肉に集中してその動きを実況するもよしです。
5. 何も思いつかなければ、足の裏に感覚を集中して、「立っています」「足が地面に着いています」「床の冷たさを感じます」などと唱えましょう。

 これを5~10分ほど行いましょう。ちょっとした空き時間にできるのでオススメです。



ヴィパッサナー瞑想のやりかた③「座る」

最後に座る瞑想法についてご紹介します。座るものは床でもイスでも構いません。楽なものを選んでください。時間の目安は30分前後ですが、続けることが大事ですので可能な範囲で行いましょう。


1. まずは座るものを用意して、立った状態でスタンバイします。
2. 次に「座ります」と唱えて、座る動作を行います。この時もしゃがむ動作などの一つ一つに意識を向け、ゆっくりと行ってください。
「背筋を伸ばします」と唱えながら、ゆっくり背筋を伸ばしていきます。
3. 「目を閉じます」と唱えて、軽く目を閉じましょう。
座った状態で深呼吸を行いましょう。この時「吸います」「吐きます」と念じながら行いましょう。
4. ここからは自分の意識の赴くままに、感じたことを唱えていきましょう。何か昔の出来事を思い出してムカムカしてきたら「ムカムカしています」などと唱えましょう。なんでも良いです。今の心と体の状態を実況しましょう。
5. 最後に「終わります」と唱えて終了です。

まとめ

以上、ヴィパッサナー瞑想の特徴と方法を紹介してきました。ヴィパッサナー瞑想を続けることで、「いま、ここ」に感覚を集中するクセが付き、日々の生活で幸せを感じることが増えていくことが期待できます。どれも広いスペースなどは必要なく、5分や10分から可能なので、空いた時間にちょっとだけでも続けていけば効果を感じられるはずです。仕事や勉強や人間関係に忙しいあなたにこそ、ぜひヴィパッサナー瞑想をオススメします。


参考記事

 http://spi-con.com/vipassana-meditation/

 https://satisati.jp/entry6.html


※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。