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マインドフルネスで脳の構造が変わるのか
近頃、マインドフルネスという言葉が世の中に定着してきました。
集中力があがる、感情のコントロールができるようになる、と様々な効果が謳われていますが、そのような効果が現れる理由を知っていますか?
結論をお伝えすると、マインドフルネスは脳の構造を変えることができるからです。
今回は、脳の構造が変わる仕組みと集中力が上がる理由を、脳科学の視点から解説します。
集中力があがらないのには理由があった
集中しようと思っても、次々と雑念が頭の中に浮かんでしまい、集中できない。
多くの人が経験することです。
「大事なプレゼンの前なのに全然まとまらない」
「毎日スキルアップのための勉強をしているけど内容が頭に入らない」
そんな経験から、自分には集中力が足りないのではないかと感じていませんか?
しかし、異常なことではありません。
脳科学者の中野信子氏によれば、人間は脳の構造上 “集中しにくいようになっている” のです。
つまり、雑念まみれな状態が普通なのです。
この性質は、原始時代の名残だと言われています。
人類は、過酷な弱肉強食を生き抜いてきました。
当時は、外敵に襲われないよう、常に注意を払う必要があったのです。
そして、そのような時代を長く過ごすうちに、周囲に注意を分散する機能が発達しました。
このような進化の過程で、私たちの脳は、構造的に、注意散漫な性質を備えるようになったのです。
一方で、現代を生きる私たちには、身の回りに注意を向けるよりも、目の前の課題へ集中的に取り組むことが求められます。
脳の本来的な機能と、現代社会が脳に求める機能との間には、大きなギャップが存在するのです。そして、このギャップが、あなたを困らせています。
高い集中力で高い成果を出すためには、脳の進化と構造を知り、注意散漫な性質に対処していく必要があります。
雑念を打ち消す方法とは
雑念まみれで集中できない、ということは、逆に雑念を打ち消せば目の前のことに全力で向き合える、ということが言えます。
この雑念を打ち消す方法は、多く存在します。
例えば、デスクから気が散るアイテム(特にスマホ)を取り除き、ストレッチをしてみる。
たしかに気分転換の効果は期待できます。しかし、この方法はその場に限り有効です。
ストレッチの最中にも、脳内は他のことを考え始め、すぐに雑念みまれの状態に戻ってしまうでしょう。
継続的に雑念を打ち消し、脳を活性化させる有力な方法、それがマインドフルネスなのです。
マインドフルネス瞑想は、瞑想中の集中力を高めてくれるだけではなく、
習慣化することによって、雑念にまみれにくい脳へ構造を変えることができるのです。
実際の研究結果
このことを裏付ける実験を紹介します。
2010年にマサチューセッツ総合病院、ハーバード大学医学部等が実施した研究結果です。健康な瞑想未経験者16人が8週間のマインドフルネスプログラム(MBSR)を実践し、その前後にfMRIで画像解析を行い、16人のマインドフルネス実践者と17人の非実践者とで脳を比較しました。
結果、マインドフルネスの実践前後で、被験者の海馬の構造が変化していることが分かりました。
海馬は、記憶や学習、空間認識に関わる領域です。
また、同研究で、実践者たちの後帯状皮質、側頭頂接合部、および小脳の灰白質濃度の増加が確認されています。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3004979/
この実験で、記憶力や学習プロセスを向上させ、仕事の作業効率を高めたり、正確な意思決定をする上で必要となる判断力を向上させたりすることが判明しました。
つまりマインドフルネスの実施により、脳の注意散漫な構造を変えることができたことが証明されました。
マインドフルネスで集中力が本当に上がる
脳の構造に続き、つい最近マインドフルネスと集中力との関係について日本で行われた実験をご紹介します。
実験を行ったのは、集中力が測れるセンシングアイウェア「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」を展開するJINS社と、BtoBマインドフルネスコース「cocokuri」を提供するインナーコーリング社。
学生を対象に、「呼吸瞑想」「歩行瞑想」「感覚や気付きに意識を向ける瞑想」の3種類のプログラムを実施。
結果、30分の簡易プログラム(本来は5時間)にも関わらず、プログラム前後で14%の集中力の向上が見られたのです。
この実験は、マインドフルネスにより、目の前のことだけに集中できる力を養うことができるようになったことを示しています。
瞑想で脳の筋トレをはじめよう
人間の脳は、命を守るため注意を分散するように進化してきました。
私たちは生まれつき、目の前のことに集中できない「クセ」があるようなものです。
時間をかけ、繰り返し習慣化することで、新しい「クセ」を上書きすることができるのです。
例えば、運動不足を解消するために、初めてジムに行ったと仮定します。
最初は少し走っただけで息切がきれ、2キロのダンベルさえ持ち上げられないかもしれません。しかし、トレーニングを続けるうちに、あなたは強くなり、苦もなくこなせるようになります。なぜならば筋肉や肺が発達するからです。
脳にも、同様の理屈が当てはまります。繰り返し鍛え、脳特有の「クセ」を和らげていくことで、高い集中力を維持できる「強靭な脳」に作り変えることができるのです。
その意味で、マインドフルネス瞑想とは、「脳の筋トレ」とも呼ばれます。
高い集中力と生産性を持続する方法として、マインドフルネスはとても優れている。そのことを、科学的な根拠を交えてご説明しました。
さいごに
いかがでしたか?瞑想は習慣化するのが大切です。通勤中の電車でも、お風呂の中でも、どこでもできるのがマインドフルネスの特徴です。毎日5分で集中力アップが期待できます。
ぜひこの記事を読み終えたらマインドフルネスを体感してみてください。
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。