慢性痛と睡眠、マインドフルネス

慢性の腰痛や肩こりに悩まされていませんか?

このような慢性痛には毎日の睡眠が大きく関係していると言われています。

また、慢性痛は治療に難渋することが多い疾患ですが、その新たな治療法として、近年マインドフルネスが注目されています。

今回は、睡眠とマインドフルネスがもたらす慢性的な痛みを和らげる効果について紹介します。

 

国民病である慢性痛

過去につらい腰痛や肩こりを経験したことはありませんか?

もしくは現在も悩まされており、もう良くならないものだと諦めてはいませんか?

平成28年の国民生活基礎調査における身体や心の不調の訴え(有訴者率)をみてみると、男性の1位が腰痛、2位が肩こり、女性の1位が肩こり、2位が腰痛であった報告されています。

(引用:厚生労働省.平成28年国民生活基礎調査.https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa16/dl/16.pdf

 

また別の研究では、成人人口の15.4%が腰痛や肩こりといった慢性痛を有しており、まさに慢性痛は国民病と言えるでしょう。

(引用:Nakamura et al. Journal of Orthopaedic Science 2011.https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/21678085/

 

睡眠と慢性痛

 

睡眠時間が慢性痛に及ぼす影響

睡眠不足が腰痛や肩こりの原因になるといった話を一度は聞いたことがあるのではないでしょうか。

1747名を対象とした研究によると、労働時間が9時間以内かつ7時間以上の睡眠をとっている群に比べ、労働時間が9時間以上かつ、7時間未満の睡眠の群は、腰痛や肩こりといった慢性痛を有する割合が2.02倍も高かったと報告されています。つまり、労働時間が長く、睡眠時間が短い人は慢性痛になるリスクがかなり高くなってしまいます。またこの研究では、労働時間が長い人でも睡眠時間を7時間以上確保することで、慢性痛のリスクは低下すると示唆しています。

(引用:安藤 肇,他.産業医大誌, 2019 https://www.jstage.jst.go.jp/article/juoeh/41/1/41_25/_article/-char/ja/)


睡眠の質が慢性痛に及ぼす影響

それでは睡眠時間を長くとれば、慢性痛は良くなるのでしょうか?

実はそれほど単純な問題ではなく、睡眠の「」も重要になってきます。

慢性痛の原因の一つに、痛みが慢性化することにより脳が痛みを記憶してしまうということが挙げられます。つまり、慢性痛は身体だけでなく、脳にも原因があるのです。

 

睡眠にはレム睡眠ノンレム睡眠の2つのサイクルがあります。

これらにはそれぞれ役割があり、レム睡眠時には、全身の筋肉が弛緩することから「身体の休息」の役割を担っていると考えられています。一方、ノンレム睡眠時には脳の老廃物を排出し、「脳の休息」の役割を担っています。

このことから、「レム睡眠」と「ノンレム睡眠」の良いサイクルによる質の高い睡眠が得られることで、慢性痛の予防・改善に効果的であると考えられているのです。

 

良質な睡眠を得るポイントとして生活のリズムを整える、疲労感を感じる程度の適度な運動を行う、身体に合った寝具を選ぶなどいくつかありますが、瞑想睡眠アプリRelookを用い、速く、深い眠りにつくことも良質な睡眠への近道だと考えられます。

Relookアプリについてはこちらを参照してみてください。

 

マインドフルネスと慢性痛

マインドフルネスが慢性痛に及ぼす影響

Relookの紹介で瞑想睡眠という言葉に触れましたが、瞑想に代表されるマインドフルネスは、近年、慢性痛の治療手段として注目されています。

 

マサチューセッツ大学のジョン・カバットジン博士が開発し、マインドフルネスを医療に応用したプログラム、「マインドフルネスストレス低減法(MBSR)」による慢性痛の軽減効果は数多く報告されています。

(引用:Hilton L et al. Annals of Behavioral Medicine 2017.https://academic.oup.com/abm/article/51/2/199/4564147

 

また、40名の腰下肢痛患者を対象とした研究では、8週間のMBSRを実施したところ、痛みの程度が29.7%減少しました。

(引用:Esmer G et al. Journal of the American Osteopathic Association 2010.https://jaoa.org/article.aspx?articleid=2093908

 

さらに、全身の強い痛みを症状とし、難治性の疾患である線維筋痛症を対象とした研究でも、8週間のMBSRやマインドフルネスに基づいたヨガなどの運動療法により、痛みの軽減や生活の質(QOL:Quality of Life)の向上を認めています。

(引用:Schmidt S, et al. Pain 2011. https://journals.lww.com/pain/Abstract/2011/02000/Treating_fibromyalgia_with_mindfulness_based.22.aspx

 

このように、治療手段が確立されておらず、どこの病院を受診しても改善しなかった慢性痛であっても、マインドフルネスを実践することにより痛みの軽減効果や、それに伴うQOLの向上が期待できるのです。

 

マインドフルネスによる痛みの軽減メカニズム

それでは、マインドフルネスを実践することにより、どのようにして痛みが軽減しているのでしょうか?

脳の活動部位を測定することができるfMRIを用いた研究では、慢性痛患者に特徴的である、痛みを不快な情動として認知する島皮質前帯状回の活動が、マインドフルネスを実践することにより抑えられることが明らかになりました。この研究はプラセボと呼ばれる対照群を設定していることから信頼性も高く、マインドフルネスの効果が暗示的なものではなく、科学的根拠に基づいていることを示しています。

(引用:Zeidan F, et al. The Journal of Neuroscience, 2015. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26586819/

  

マインドフルネスウォーキング

慢性痛に対してマインドフルネスが効果的であるとはいえ、日本ではMBSRなど専門的なプログラムを実践できる環境が整っていないのが現状です。

そこで、簡単に始められるマインドフルネスに基づいた運動療法の一つ、マインドフルネスウォーキングを紹介します。

 

1.身体の力を抜き、手と腕をリラックスした状態にして深呼吸をします。その際、地面に立った自分の足の感覚に意識を向けます。

2.リラックスして自然に呼吸をします。

3.ゆっくりとしたペースで歩き始めます。

4.足の動きと感覚に集中します。 (足が地面から離れた、かかとが地面に触れた、重心が前方へ移動している、などの感覚を意識します)

5.足の感覚に集中して歩き続けることにより、両足交互に重心が移動していることを感じます。

6.重心が繰り返し移動し、自分の身体(背中、足、腕、肩、胸、首など)がどのように動いているかを感じます。

(引用:Marlynn Wei. New Study Finds Meditation With Walking Reduces Anxiety. https://www.psychologytoday.com/us/blog/urban-survival/201712/new-study-finds-meditation-walking-reduces-anxiety

 

このように、歩く時の動きそのものに集中し注意を向けることにより、マインドフルネスが高まった状態になります。1日5分からでも良いので、マインドフルネスウォーキングを実践してみましょう。

 

まとめ

国民病である慢性痛の改善方法として、マインドフルネスの効果を紹介しました。

つらい腰痛や肩こりを諦めるのではなく、脳と身体を整えるマインドフルネスにより、痛みのない生活を目指しましょう。

 

※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。