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マインドフルネス瞑想とは
マインドフルネスとは、「今この瞬間」に意識が向いている心の状態です。
私たちの頭の中では普段、無意識のうちに過去、現在、未来のあらゆる事柄が頭の中を駆け巡っています。「今日、仕事で失敗してしまった」、「なんであの人にあんなことを言われなければいけないんだ」などの過去の出来事に対する後悔や怒り、あるいは「来週のプレゼンテーションはうまくいくかな」、「また明日、あの人と顔を合わせなくてはいけなくて、気が重い」などの未来に関する心配やストレスといったネガティブな考えもあるでしょう。もちろん、「今日楽しかった」とか「週末がとても楽しみ」といったポジティブなことかもしれません。加えて、毎日のやることリストやスケジュールで頭の中がいっぱいという人も多いかと思います。
このように私たちの頭は常に忙しく動いています。マインドフルネス瞑想は、そのような忙しい脳や心を鎮めてリラックスさせ、マインドフルネスな状態に近づくための実践方法です。
もちろん、私たちは普通、「今この瞬間」だけを考えて生活することは、不可能とはいえませんが、非常に困難です。仕事や家庭生活を過ごしていく中で、さまざまな事柄について考えることは不可欠です。しかし、大切なのは脳が働いているときと休んでいるときのメリハリをつけること。常に頭の中が忙しい状態にあると脳が疲れてしまって、眠っても疲れが取れない、集中できない、集中力が続かない、思考力や判断力が鈍る、ネガティブ思考になりがち、などといった状態に陥りやすくなってしまうのです。
マインドフルネス瞑想の効果はのちほど解説しますが、いくつもの効果が科学的に実証されています。そんなマインドフルネス瞑想は、各界の著名人にも人気です。例えば、アップル社の創業者スティーブ・ジョブスやマイクロソフト社の創業者ビル・ゲイツといったビジネス界の著名人から、テニスプレーヤーのジョコビッチ選手、モデルのミランダ・カー、映画監督のデヴィッド・リンチなど、さまざまなバックグラウンドを持つたくさんの人々によって愛されているのです。
マインドフルネス瞑想の5大効果
マインドフルネス瞑想にはさまざまな効果があることが科学的に実証されていますが、ここではその中でも主な5つを解説します。
ストレスが軽減される
私たちは誰しも、日常生活の中でストレスフルな出来事に遭遇します。仕事、人間関係、勉強、大切な人とのお別れ、環境の変化など。しかし、そういった出来事に対してどのように反応するのかは人それぞれ異なります。
マインドフルネス瞑想を継続的に実践することによって、ストレスフルな出来事が起きた時に、精神的な感情の起伏が抑えられて精神的な安定が保たれやすいとされています。
それはなぜでしょうか。その要因のひとつが扁桃体と呼ばれる脳の部位です。扁桃体は不安、緊張、恐怖などによるストレス反応を司る器官のひとつとして知られています。
ハーバード大学とマサチューセッツ大学医学部の研究チームの研究によると、8週間のマインドフルネス瞑想を実践すると、扁桃体の細胞量が減少し、それに伴ってストレスレベルも低くなったとされています。
出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3004979/pdf/nihms-232587.pdf
さらに、マインドフルネス瞑想を継続的に実践した人たちは、実践したことのない人たちに比べて、ストレスを受けた際の扁桃体の活動が抑制されていたという結果が、ウィスコンシン大学の研究で明らかにされています。
出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6671286/pdf/nihms-1026771.pdf
集中力が向上する
大学生を対象にした米国の研究では、マインドフルネス瞑想を経験したことのない学生たちに、10分間のマインドフルネス瞑想のやり方を説明する録音テープを聴かせました。すると、録音テープを聴く前に比べて聴いた後では、集中力の向上が認められました。
出典:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6088366/pdf/fnhum-12-00315.pdf
マインドフルネス瞑想では、ある対象に意識を集中させます。他のことに意識が向いてしまっても、それに気が付いたら再び意識を対象物に向け直します。そのような練習を繰り返すと、瞑想を実践していないときにもひとつのことに集中しやすくなり、集中力が継続しやすくなるといわれています。
睡眠の質が上がる
カリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究チームは、睡眠になんらかの問題がある成人を対象に、2時間のマインドフルネス・トレーニングを1週間に1回、合計6回受講させ、その効果を調べました。その結果、トレーニングを受けた人たちは受けなかった人たちに比べて、睡眠の質がアップし、気分の落ち込みと日中の疲労感の改善も認められました。
出典: www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4407465/pdf/nihms680970.pdf
睡眠の質には自律神経が深く関わっています。自律神経には、交感神経と副交感神経があり、活動時には交感神経が、休息時や睡眠時には副交感神経が優位に切り替わることで、私たちの身体をバランスよく健康に保っています。
しかし、生活スタイルの乱れやストレスなどによって、これらの神経のバランスが崩れ、休みたい時に副交感神経が優位になりにくくなってしまうことがあるのです。そうすると、布団に入っても脳や身体は活発に働き続けたままの状態で、ゆっくり休めません。
マインドフルネス瞑想を実践することで、自律神経が正常に働きやすくなり、交感神経から副交感神経にうまく切り替わることによって、質の良い睡眠を得られやすくなるといわれています。
感情のコントロールが上手になる
マインドフルネス瞑想を続けると、自分の感情や思考から距離を取ることができるようになるといいます。例えば、寂しさを感じて、「自分はなんのために生きているんだろう」と空虚感を抱いているとしましょう。その虚しさや寂しさを紛らわせるために、ついお酒を飲みすぎたり、甘いものを食べ過ぎたりすることもあるかもしれません。
マインドフルネス瞑想を行っている間は、「自分はなんのために生きているんだろう」という考えが頭の中に浮かんできても、そこからいろいろと考えを広げることなく、意識を再び自分の呼吸へと戻します。そのような練習を重ねることで、寂しさや虚しさにとらわれることなく、そう考えている自分を客観視することができるようになるとされています。その結果、寂しさや虚しさが軽減していくといいます。
また、これまでは寂しさを紛らわせるために、反射的にお酒やスイーツに手を伸ばしていた人でも、マインドフルネスな状態に近づくことで、お酒やスイーツを欲している自分自身を客観的に観察できるようになるため、飲み過ぎ、食べ過ぎを予防できるようになるという報告も聞かれます。
寂しさや空虚感だけでなく、怒りやイラつきなど他のネガティブな感情が湧き上がっても、すぐに反応するのではなく、冷静に状況を判断することができるようになるため、感情のコントロールがしやすくなるといわれています。
出典:
Sunjeev K Kamboj, et al. Ultra-Brief Mindfulness Training Reduces Alcohol Consumption in At-Risk Drinkers: A Randomized Double-Blind Active-Controlled Experiment, Int. J. Neuropsychopharmacol, 2017; 20(11): 936–947.
IQが上がる
IQとは知能指数のことです。私たちの知能レベルを測るひとつの基準として使用されます。
2009年に発表された米国の研究では、1回20分間のマインドフルネス瞑想を4日間実践することで、視覚認知機能、作動記憶、実行機能などの機能が向上したとされています。これらはIQテストの問題に取り組む際に重要な役割を持つ機能です。
出典:
Zeidan F, Johnson SK, Diamond BJ, David Z, Goolkasian P. Mindfulness meditation improves cognition: evidence of brief mental training. Conscious Cogn. 2010 Jun;19(2):597-605.
マインドフルネス瞑想を行うと、頭の中が整理されてリラックスするため、思考の柔軟性がアップして情報を処理する能力が向上するのではないかと専門家は解説しています。
出典:https://medicorx.com/how-meditation-makes-you-healthier-and-smarter/
マインドフルネス瞑想のやり方
ここでは、基本編と応用編に分けて解説します。マインドフルネス瞑想はいろいろなやり方で実践することができますが、基本は共通しています。
基本編
基本的なやり方は次の通りです。
① 「調身」―姿勢を整えます
心地の良い姿勢をとりましょう。椅子や床に座るか、ヨガマットやマットレスの上に横になります。床に座る場合は、あぐらでも正座でも長座でもよいので、楽な姿勢をとり、姿勢を正します。身体の力を抜き、手は自然に開いて上(天井の方)を向けます。
② 「調息」―呼吸を整えます
数回、深呼吸を行います。それから自然な呼吸を始めます。意識的にゆっくりしたり、深くしたりする必要はありません。目を閉じて鼻呼吸を始めます。
③ 「調心」―心を整えます
意識を集中させる対象を決めます。基本的には自分の呼吸に集中します。息を吸ったり吐いたりするたびに、お腹や肺が膨らんだりへこんだりする様子を観察しましょう。
応用編
音楽での瞑想
マインドフルネス瞑想では基本的に自分の呼吸に意識を向けますが、音楽を流しながら瞑想を行ってその音楽に意識を集中させるのもひとつの方法です。
音楽を流しながら瞑想を行うメリットのひとつはリラックス効果です。脳がリラックス状態にあるとα波という脳波が出ます。クラシック音楽やヒーリングミュージックなど、α波を促す効果のある音楽を聴きながら瞑想を行うと、脳をより深く休ませることができるといいます。
また、瞑想中に呼吸に意識を向けるよりも音楽の方が集中しやすいという方も多いでしょう。周辺の雑音が遮断され、自分の頭の中の雑念もわきにくくなって、マインドフルな状態になりやすいという効果も期待できます。
Youtubeでは、瞑想に適した音楽がたくさん配信されています。5分間、10分間、20分間など、瞑想の長さに合わせて音楽を選ぶこともできます。例えば、10分間の瞑想をやりたいのに音楽は1時間だとしたら、スマホなどのアラームを10分後に設定すると時間を気にせずに瞑想を行うことができます。いくつかの音楽を試してみて、自分に合ったものを選びましょう。
歩く瞑想
瞑想は座ったり横になったりするだけでなく、歩きながら実践することもできます。歩く瞑想では、歩行しながら自分の身体の各部位の動きや感覚に意識を向けます。
110人の大学生を対象に行われた研究によると、ウォーキングのみ行った時よりも瞑想とウォーキングを組み合わせることによって、ストレスレベルが大幅に減少するとされています。
メンタリストのDaigoさんも歩く瞑想の愛好家の一人であり、習慣的に実践することで、集中力だけでなく記憶力や自己コントロール能力の向上など、いくつもの効果を実感しているといいます。
出典:https://daigoblog.jp/walking-meditation/
歩行瞑想を実践するときにはまず、身体をリラックスさせて何度か深呼吸をし、地面に触れている足裏の感覚を意識します。そしてゆっくりと歩き始めると同時に、重心が前に移動するとき、足裏が地面から離れるとき、反対の足のかかとが地面に着くとき、重心が反対の足に移るときなど、細かい動作や、その動作に伴う感覚に集中します。
はじめは、家の中で5~10分間、歩行瞑想を実践してみましょう。慣れてきたら、屋外の人の少ない場所で行ったり、日常の通勤や買い物の間に実践したりするのもよいでしょう。
食べる瞑想
食べる瞑想はその名の通り、食べ物や食べる行為に意識を向ける瞑想法です。マインドフルな状態に近づくためのトレーニングになるだけでなく、食べ過ぎを予防してダイエット効果も期待できるといわれています。
英語では「マインドフル・イーティング」と呼ばれています。オンラインで受講できるトレーニングコースなども提供されおり、多くの人に人気の瞑想法です。
食べる瞑想では、まず買い物をする時点で食材の産地や栄養価を意識します。料理をしている時には、食材の色、硬さ、香りなどを五感を使って感じます。そして、食卓に食事を並べたら、食べ始める前に1~2分間、食べ物やその食べ物があなたの手元に届くまでに関わった人たちに感謝する時間を取りましょう。
少量の食べ物を口に運び、味わいながらよく噛んで、食べ物の温度、食感、香りなどを丁寧に感じます。飲み込むときに食べ物が舌、喉、食道を通って胃に落ちていく様子を観察します。口の中が完全に空になってから、また次のひと口を入れましょう。
このように食べていると、自然にゆっくりとした食べ方になると思います。そのようにゆっくりと食事をすることで、食べ過ぎを予防して腹八分目でも高い満足感を得られるようになるといいます。
出典:www.health.harvard.edu/staying-healthy/8-steps-to-mindful-eating
初心者がマインドフルネス瞑想で気を付けるべきポイント
雑念を受け入れる
瞑想中、ある一点に意識を集中させようとしても、頭の中で何か別のことが浮かんでくるでしょう。これは自然なことです。別のことが頭に浮かんできた、ということに気が付いても、そこからいろいろと考えを膨らませずに、再び意識を戻します。
特に初心者のうちは、何度も雑念が湧いてくるかもしれません。そのたびに、また意識を戻せばよいのです。大切なことは、「良い・悪い」という評価をせずに、雑念が湧いてくるという事実を受け入れることです。
継続がカギ
マインドフルネス瞑想を含め、どんなスタイルの瞑想でも続けることが重要です。毎日決まった時間と場所を決めて瞑想を行うと、日常生活の中で習慣化しやすいといわれています。朝起きてすぐ、昼休みの間、夜寝る前など、瞑想のために時間を確保しやすいタイミングを選びましょう。
一日の中でいつ行うかによって、瞑想の効果も変わってくることがあるといわれています。朝、一日を始める前のマインドフルネス瞑想は、リフレッシュ効果が高く、その日一日をポジティブな気分で過ごしやすくなります。仕事の合間の昼休みには、疲れた脳を休めて、集中力、判断力、決断力を高める効果が期待できます。夜の瞑想の最大のメリットはリラックス効果でしょう。一日中働き続けた脳を鎮め、心を落ち着けて、深い睡眠へ導いてくれるとされています。
どのような効果を得たいかによって、瞑想を行う時間を設定してもいいですね。
アプリの活用
最近では、マインドフルネス瞑想に関するウェブサイトや書籍がたくさん出ていますので、自分で勉強して自宅で行うことも難しくありません。
しかし、せっかく瞑想を行うのでしたら、より高い効果を得たいですよね。そこで、オススメなのが瞑想アプリです。瞑想を学ぶためのクラスや合宿に参加しなくても、自宅や仕事の合間に手軽に実践できるのも嬉しいポイントです。
多くの瞑想アプリがある中で、Relookは専門家が監修、制作に関わっており、「睡眠&起床」、「ストレス」、「仕事&勉強」、「人間関係」など、目的に合わせた瞑想をガイドしてくれます。初心者はもちろん、経験者でも満足できるコンテンツが充実しているのも特徴です。さらに、リマインダー機能が搭載されていますので、自分だけで実践するよりも継続しやすいというメリットもあります。
Relookアプリについてはこちらを参照してみてください。
マインドフルネス瞑想で効果が出るまでの時間や期間は?
1回につきどのくらいの時間瞑想を行うと効果的かという点については、特に決まりはありません。ただし、初心者のうちに何時間も続けて瞑想を行うと、かえって悪影響になる可能性があるといわれています。20分間を目安として行いましょう。
マインドフルネス瞑想では、一回の長さよりも継続して行うことが大切であるといわれています。ではどの程度の期間、続けるとよいのでしょうか。
株式会社Melonが、2020年8月にウェブ上で実施したマインドフルネス瞑想に関するアンケート結果が公開されています。273名が回答し、結果は以下の通りでした。
「マインドフルネスの効果を実感するまでの実践期間は?」という質問に対して、2週間以内と回答したのが16.6%、4週間継続した時点で効果を実感したと回答したのが51.6%でした。8週間継続した回答者のうち85.3%が効果を実感したと回答しています。
さらに、マインドフルネス瞑想の効果を10段階で評価すると、瞑想を開始してから2か月目から3か月目の時点で評価点が大きく伸びるという結果となりました。
海外のマインドフルネス瞑想に関する論文でも、瞑想の結果が出るまでの継続期間として「8週間」が目安になることが多いですが、本調査はそれを裏付ける結果となりました。
もちろん効果を実感する時間には個人差がありますが、1回につきどのくらいの長さの瞑想を実践するかに関わらず、8週間続けると効果を実感するというのが一般的なようです。
まとめ
近年、世界中で話題となっているマインドフルネス瞑想は、科学的な研究でも多くの効果が実証されています。1回に実践する長さ、1日の中で行う時間、場所、やり方は人それぞれのライフスタイルに合わせることができるため、継続しやすいというのも嬉しいポイントですね。あなたも今日から実践してみませんか。
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。