瞑想と睡眠に関する研究の再検証

これまでに行われた瞑想と睡眠に関する研究を、くまなく調査し分析した結果、2019年に発表された論文において、瞑想による睡眠障害の改善効果が改めて明らかになりました。今回は、質の高い科学研究とは何かという点に触れ、アカデミックな側面から瞑想の効果について紹介します。

 

質の高い研究とは

研究論文の価値

瞑想やマインドフルネスが睡眠の質を向上させ、睡眠障害を改善させるという話を聞いたことがあるかもしれません。実際、脳科学の進歩に伴い、ここ十数年で瞑想の効果に関する研究の数は飛躍的に増加しました。しかしその一方で、研究計画が良くデザインされておらず、お世辞にも質が高いとはいえない研究も多くみられます。これは瞑想に限った話ではなく、一種のブームや商業的なトレンドにあがると、質の低い研究が散見される現象はよくみられるのです。

 

それでは、質の高い研究とはどういったものを指すのでしょうか?

科学研究の世界では、一般的に国際誌に論文として掲載されて初めて、ひとつの研究として評価されます。様々な健康法やサプリメントの広告で、〇〇学会で発表されました!といったうたい文句を掲げた宣伝をよく目にしますが、実は学会で発表することはそこまで大変なことでありません。学会での発表などを経て、査読(専門家による審査)付きの国際誌に投稿し、掲載が認められなければ、一つの研究としてあまり評価されないのが事実です。


ランダム化比較試験(RCT)

それでは、国際誌に掲載されている研究はすべてがすばらしい研究で、結果を信用するに値するのでしょうか?これも必ずしもそうとは言えません。

研究デザインの中で、最もエビデンス(科学的根拠)が高いとされているのが、ランダム化比較試験(RCT)です。RCTとは、研究対象をランダムに2つの群に分けて、治療などの介入を行う群と、プラセボ(偽薬)や標準治療を行う群とで、結果に差が出るかを比較する研究デザインです。

瞑想と睡眠の研究を例にあげると、不眠症の患者を集め、瞑想をおこなう群(瞑想群)と瞑想をおこなわない群(対照群)にランダム振り分けます。そして瞑想群には一定期間、瞑想のセミナーに参加してもらいます。そして瞑想セミナー終了後に、睡眠時間や睡眠の満足度をアンケートで調査したり、睡眠時の脳波を調べたりします。そして睡眠群が対照群よりも良い結果が得られた時、初めて瞑想が不眠症に対して効果があると言うことができるのです。

 

なぜこんな面倒な方法をとるかというと、こうしなければ何も結論を出すことができないからです。実際、過去の瞑想に関する研究では瞑想をおこなわない群(対照群)を設定していない研究が多く、瞑想の効果について疑問視されてきました。

10人の不眠症患者を集めて半年間瞑想をおこない、睡眠障害が改善したという結果がでたとしましょう。しかしその期間中に薬による治療で不眠症が治っていたり、研究に参加することで不眠症が治ったような気になる(プラセボ効果が得られる)可能性があります。このように、対照群を設定して結果に影響を及ぼす要素をできるだけ排除しなければ、真の瞑想の効果を評価することができないのです。


システマティックレビューとメタアナリシス

2019年にRuschらによって発表された論文では、睡眠障害に対する瞑想の効果に関する研究を1991本集め、そこから研究デザインがRCTでないものや、睡眠に関する評価がきちんと行われていないもの、研究に参加した人数が少ないもの等を除外し、最終的に18本の研究論文に絞り込むことでデータの偏りを可能な限りなくす作業をおこないました。この研究手法をシステマティックレビューと呼びます。

システマティックレビューとは「特定の問題に絞って、類似したしかし別々の研究の知見を見つけ出し、選択し、評価し、まとめるために、明確で計画された科学的方法を用いる科学研究」と定義され、これによって“エビデンスの高い”研究結果を知ることができるのです。

さらにメタアナリシスと呼ばれる統計学的手法を用いて、18本の論文に書かれたデータをまとめて解析することにより、さらに普遍的な瞑想の効果を明らかにしたのです。


睡眠障害への瞑想の効果に関するシステマティックレビュー

瞑想の効果の検証

前置きが長くなりましたが、ここからRuschらの研究結果を紹介します。

18本の研究論文のうち、睡眠障害に対する特定の治療をおこなっていない対照群を設定した11本の研究論文の対象疾患の内訳は、がんに伴う不眠症が2本、そして線維筋痛症、高齢、育児、臓器移植、不安障害、心血管障害、PTSD、戦争によるPTSD、糖尿病に伴う睡眠障害がそれぞれ1本ずつみられました。

それらの睡眠障害をもつ患者に対して、2~8週間、合計3~26時間の瞑想プログラムをおこなった結果、瞑想をおこなっていない群と比べて、プログラムが終了した直後のみならず、5~12ヶ月後においても、睡眠時間の延長や熟睡感の獲得、睡眠の満足度の向上といった包括的な睡眠の質の向上が得られました。

この結果から、高いエビデンスをもって、瞑想は様々な睡眠障害に対して効果的であると証明されたのです。

(引用:Rusch HL, et al. The effect of mindfulness meditation on sleep quality: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials. Ann NY Acad Sci, 2019.https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6557693/

 

瞑想の方法

それではどのような方法で瞑想をおこなえば、睡眠障害が改善されるのでしょうか?

11本の論文をそれぞれ読んでみると、ほとんどの研究において、対象者は瞑想に関する知識や経験はありませんでした。

よって、一人で手軽に始めることができる、マインドフルネス瞑想アプリ「Relook」を用いた瞑想でも、十分に睡眠障害の改善効果を得られる可能性があると考えられます。

Relookアプリについてはこちらを参照してみてください。


まとめ

システマティックレビューやメタアナリシスといった研究手法の紹介を通して、改めて睡眠障害に対する瞑想の効果について紹介しました。

高いエビデンスをもって効果が実証された瞑想を実践し、あなたも満足のいく睡眠を体感してみてはいかがでしょうか。

 

※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。