集中力を高める方法とは


自分は集中力がないなと悩んだことはありませんか?
仕事に勉強に、現代は集中力が強く必要とされる時代です。
集中力がなければ思うように仕事が進まず残業が増えてしまったり、勉強が手につかずテストの点数が上がらないということにもなります。

逆に集中力が高まれば、あなたは仕事を効率よく終わらせたり、勉強で周りよりも早く先に進み深く理解できるようになります。

でも、集中力を高める方法なんてあるのでしょうか。
これまで集中力に悩んできた人からすると、そんな方法があるとはあまり思えないかもしれません。

瞑想は集中力を高める


ところが、2000年ごろから加速している瞑想の科学的な研究の結果、瞑想が集中力を高めるという衝撃的な事実が明らかになってきました。

瞑想は体のあり方だけをみれば、じっと座って目を閉じているのと何も変わりません。
違うのは、頭の使い方だけです。

頭の使い方が違うだけで集中力が上がるなんて信じがたいでしょうか。
そこで、実際に集中力が瞑想で高まることを示した研究をいくつか簡単に紹介すると、

・8分間の瞑想で集中力を測るテストのミスが減った[1]
・瞑想熟達者は集中力を妨げる脳領域の活動性が低い[2]
・瞑想習慣を取り入れるとADHD*が改善した[3]

*ADHDは集中力などが低下する発達障害

など多くの研究で、瞑想が集中力を上げることを支持する結果が報告されています。
そのため、瞑想を取り入れることであなたは今よりも高い集中力を手に入れることができるかもしれません。

そこで浮かび上がってくるのが、なぜ瞑想をすれば集中力が高まるのか?という疑問です。
瞑想と一言で言っても、中にはいろいろな要素があります。
ものごとを受け入れたり、自分を観察したりなど。

果たして瞑想のどの要素が集中力を高めるために重要な役割を果たすのでしょうか。
それが分かれば瞑想しているのに集中力が上がらない!なんていうことを避けられるかもしれませんよね。

集中力を上げる瞑想の要素とは


その点を明らかにする研究が、2020年に報告されました[4]。
その研究では、瞑想を二つの要素に分解しました。

観察受容です。

観察とは、自分の体に起きている変化、自分の感覚に意識を向けることです。
瞑想の中でも最もメジャーと言えるヴィパッサナー瞑想は日本語にすると「観察」瞑想であり、観察がとても大事な要素であることが分かります。
実際、ヴィパッサナー瞑想中には「あ、足が痺れてきたな」とか「あ、いま他のことを考えていたな」などと「観察し気づく」プロセスを行います。
この要素が観察です。

受容とは、文字通り「受け入れる」ことです。
瞑想をしているとつい雑念が浮かんでくることがあります。
それに対して、「ああこれじゃダメだ」などと思うことなく、ただ雑念が浮かんだという事実を受け入れる。
これが瞑想において重要だと言われています。

果たして、集中力を上げるという観点では、このどちらが大事だったのでしょうか。

実験内容

それを明らかにするために研究グループが行なったのは以下のような実験です。

まず、137人もの人々を集めてきて、3つのグループに分けます。
そのグループとは

①30名:何もしない
②53名:瞑想<観察+受容>
③54名:瞑想<観察のみ>

の3グループでした。

②は言い換えればスタンダードな瞑想と言えます。
③はそこから受容の要素を引いたものになりますね。

もしも観察のみの③で集中力が上がらなかったら、瞑想で集中力を上げるのには受容が必要ということになります。
逆に観察のみ(③)でも集中力が上がったら、瞑想で集中力を上げるのには観察が重要ということが言えそうです。

ちなみに、②と③のグループで瞑想を行った期間は8週間でした。
8週間のMBSRと呼ばれるスタンダードな瞑想クラスを受講します。

このクラスでは、

・毎日、45分個人で瞑想する
・毎週、1度だけ2.5-3時間、講師のもとで瞑想を学び実践する
・6週間目に1日中瞑想を行うセッションをする

の三つを実践します。

とても本格的で大規模な研究となっていて、これは期待できそうです。
グループ②(観察+受容)は通常通りこのクラスを受講し、グループ③(観察のみ)ではそこから受容の要素を取り除いたものをおこないました。

話が込み入ってきましたが、要するに瞑想で何をすれば集中力が上がるかを比較したのだということが分かれば十分です。
それでは結果を見ていきましょう。

実験結果

結果として、グループ②(観察+受容)も③(観察のみ)も両方とも集中力が向上したことが報告されました。
何もしなかったグループ①ではこの変化は見られませんでした。

言い換えれば、受容の要素を取り入れなかったときでも、瞑想によって集中力が向上したということです。
すなわち、瞑想によって集中力が上がるためには観察こそが重要という可能性が示唆されました。

ただし、この結果にはいくつかの限界があることを押さえておいてください。
まず、研究チームが自らも指摘しているように、今回計測した集中力はあくまでも主観的な集中力でした。
つまり「最近集中力が削がれることが多いか」などの質問に答えることで判定しており、客観的に見ても集中力が上がっているのかについては注意が必要です。

また、受容を行わなかった③のグループも、瞑想を続ける過程で自然と受容の精神を身につけてしまった可能性も否定はできません。
その場合、やはり受容の要素も重要である可能性はあります。

このように、研究の話を聞くときにはただ盲信するのではなく批判的な視点で見ることも重要になります。
それでも、脳科学を研究している筆者としては、やはり「瞑想で集中力を高めるためには観察が重要」というのは正しいだろうと考えています。

その理由を脳のメカニズムという観点から考えていきましょう。

集中力とはそもそも何か?


ここで一つ質問をしたいのですが、集中力とはそもそもどんな能力だと思いますか?

いざそう問われると、なかなか明快に答えることはできない人がほとんどだと思います。
それもそのはず、研究者の間でも集中力の明確な定義は存在しないのです。

それでもあえて集中力は何かと定義するのであれば、集中力とは「不要な脳活動を抑える力」ということになると筆者は考えています。

わかりづらいという方のために具体的に説明していきましょう。

まず、不要な脳活動を抑えるとは何か。
たとえば勉強をしているときに、工事のうるさい音が聞こえてきたと想像してください。
そのときにあなたの頭には何が浮かびますか?

きっと「うるさいなぁ、こっちは勉強しているんだから静かにしてよ」と雑念が浮かぶのではないでしょうか。
このような雑念は、まさに不要な脳活動だといえます。

そしてそもそも、工事のうるさい音に対する聴覚野*の活動も、勉強するときには不要な脳活動ですね。
*聴覚野とは文字通り、脳の中でも音を処理する場所のことです。

まとめると不要な脳活動とは

・頭の中で浮かぶ雑念
・勉強や仕事と関係ない音や視覚などそのときに不要な感覚情報の処理

となります。
これが抑制できれば、自然と集中力が高まっていくと考えるのは自然でしょう。

例えば、あなたが今この記事を読んでいるとき、雑念も浮かばないし周りの音も気にならない、なんてことがあれば、とてつもなく集中している状態ですよね。
もちろん眠ったりしていたら話は別ですが。

整理すると、雑念や関係ない感覚情報の処理などの不要な脳活動がなければ集中力が高いと言うことができるでしょう。

最初に話していた「観察力が大事」という話からだいぶ逸れてきたので、元に戻りましょう。
ここでの疑問を整理すると「なぜ観察力が上がると不要な脳活動が抑えられて集中力が上がるのか」という話になります。

この答えはとても単純です。
不要な脳活動を抑えるためには、そもそもそれに気づくことが必要だからです。

拍子抜けするかもしれませんが、それだけです。
あなたが勉強しているときに、ふと明日のデートのことが気になったとしましょう。
そんな雑念に気を取られていることにあなたが気づかなかったとしたら、あなたは延々とその雑念に気を取られることになります。

気づかなければ、変えることはできないのです。

逆に、観察力が高い人の場合、雑念が浮かんだとしてもすぐにそれに気づくことができます。
そうすれば、またすぐに集中状態に入り直すことができます。
これが集中力が高い人のメカニズムなのだと考えられます。

まだ少ししっくりこないという方のために脳の話をしていきましょう。
この観察力は、脳の中でもACCという場所が司っていると言われます[5]。

ACCは前頭葉の少し奥まったところにある領域です。
ACCはまさに脳の社長のような役割をしていると考えられ、ACCが活動すると他の脳領域に指令が送られます。
例えば、雑念が浮かんでいるとACCが検知すると、他の前頭葉に「雑念を抑えなさい」という指令が送られ、実際に雑念が抑えられるのだと考えられているのです*。

*この辺りの話は少し複雑になるのですが、ACCから指令が送られる代表的な場所はDLPFCと呼ばれる前頭葉の領域と考えられます[6]。そのDLPFCは、抑制の信号を送ることによって食欲や攻撃性などを抑えるということを可能にすることが報告されています[7,8]。

話が長くなりましたが、要するに集中力を発揮するには「不要な脳活動を抑える」ことが超重要。
そしてそのためには観察力が必要。

ということでした。
そして、それを司るのはACCという場所だったんですね。
ちなみにACCは瞑想によって鍛えられる主要な場所の一つでもあります。
このことからも、瞑想で観察力が鍛えられることと集中力の関連性が伺えますね。

まとめ


これらの考察から、瞑想によって集中力をあげようと思ったら、特に観察力を意識して磨いていくことが有効かもしれない、ということになりますね。

とはいえ、瞑想の他の要素は必要ないというわけではありません。
瞑想で鍛えられるのは集中力だけではないからです。
瞑想によって依存を断ち切る力や、ネガティブ感情をコントロールする力も身についていきます。

そのためには、受容をはじめとする他の思考回路も重要になってくるのだと考えられます。
観察して、受容するという瞑想の基本的な思考回路をぜひ身につけ、集中力や感情コントロールの力を身につけていってください。



※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。

参考文献

1. Mrazek, M.D., Smallwood, J., and Schooler, J.W. (2012). Mindfulness and mind-wandering: Finding convergence through opposing constructs. Emotion 12, 442–448.

2. Brewer, J.A., Worhunsky, P.D., Gray, J.R., Tang, Y.Y., Weber, J., and Kober, H. (2011). Meditation experience is associated with differences in default mode network activity and connectivity. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 108, 20254–20259.

3. Santonastaso, O., Zaccari, V., Crescentini, C., Fabbro, F., Capurso, V., Vicari, S., and Menghini, D. (2020). Clinical application of mindfulness-oriented meditation: A preliminary study in children with ADHD. Int. J. Environ. Res. Public Health 17, 1–16.

4. Chin, B., Lindsay, E.K., Greco, C.M., Brown, K.W., Smyth, J.M., Wright, A.G.C., and Creswell, J.D. (2020). Mindfulness Interventions Improve Momentary and Trait Measures of Attentional Control: Evidence From a Randomized Controlled Trial. J. Exp. Psychol. Gen.

5. Petersen, S.E., and Posner, M.I. (2012). The Attention System of the Human Brain: 20 Years After. Annu. Rev. Neurosci. 35, 73–89.

6. Voloh, B., Valiante, T.A., Everling, S., and Womelsdorf, T. (2015). Theta-gamma coordination between anterior cingulate and prefrontal cortex indexes correct attention shifts. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 112, 8457–8462.

7. Achterberg, M., van Duijvenvoorde, A.C.K., van IJzendoorn, M.H., Bakermans-Kranenburg, M.J., and Crone, E.A. (2020). Longitudinal changes in DLPFC activation during childhood are related to decreased aggression following social rejection. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 117, 8602–8610.

8. van Meer, F., van der Laan, L.N., Eiben, G., Lissner, L., Wolters, M., Rach, S., Herrmann, M., Erhard, P., Molnar, D., Orsi, G., et al. (2019). Development and body mass inversely affect children’s brain activation in dorsolateral prefrontal cortex during food choice. Neuroimage 201, 116016. Available at: https://doi.org/10.1016/j.neuroimage.2019.116016.