瞑想が雑念に邪魔されている状態とは?

瞑想を始めてみると、頭に浮かんでくるさまざまな考えの多さに驚く方も多いかもしれません。呼吸に集中しようと思っても、慣れないうちはすぐに何かを考えてしまい、集中力が途切れてしまうものです。瞑想中に「今この瞬間」に意識を向けるのはシンプルですが、自分でコントロールできるようになるまでには時間がかかります。

無意識に浮かんでくる考えや、自然に湧いてくる思いの正体は雑念です。

「雑念」とは、

     “物事をし通す妨げとなる、気を散らすような不要な考え。妄念、煩悩。”

のことを指しています。(引用:
実用日本語表現辞典

瞑想と雑念は切っても切れない関係です。瞑想中に浮かんできた考えをやり過ごせずに、瞑想に没頭できなかった経験はありませんか?

瞑想が雑念に邪魔をされる状態とは、瞑想の際に浮かんできた雑念を処理できずに意識がそちらに向いていることをいいます。


けれど私たちは思考を止めて、何も考えずに生活することはできません。シチュエーションや状況によって、色々な思いが湧き上がってくるのは当然で、雑念が浮かんでくること自体は
自然な状態です。問題なのは、頭と心がそれらに支配されたり、無視できないほどにとらわれたりする状況に陥ることです。

雑念に惑わされずに、ただ眺めるにはどうすればいいのでしょうか?この記事では瞑想に集中しやすくなるコツや瞑想の方法をご紹介いたします。雑念とうまく付き合えるようになると、瞑想の満足度も変わってきますよ。


雑念が次から次へと湧く理由

瞑想中にさまざまな思いや考えが湧いてくるのはなぜだろう…」と考えたことはありませんか?集中したいのに、余計な悩みや思考に惑わされてしまうのは最初の頃はよくあることです。瞑想に没頭したいのにできないと、もどかしい気持ちになりますよね。

「背中が痒い」「お腹が空いたな」「明日の予定はなんだっけ」など、日常的な雑念は湧き上がってくるのをやり過ごすことはそれほど難しいわけではありません。しかし悩み事や、心配事、恐れている不安な事柄など、心の安定を揺るがすような思いでいっぱいになると、無視できなくなります。

過去の出来事にとらわれていると、後悔となって湧き上がります。過去に焦点が当たっている状態は、変えられないものにとらわれているのです。過去の出来事を思い出し、悲しくなったり、怒ったり、ネガティブな感情に支配されることもあります。

また未来への懸念があると、過去の後悔と同じように、こちらもさまざまな思いが湧き上がってきます。まだ起こっていない出来事にも関わらず、未来の何かに対して恐怖や不安でいっぱいになっている状態です。例えば、翌日のプレゼンテーションで失敗しないかと不安に思っていると、瞑想中にその不安な思いが湧いてきます。


自分の意識が「
」ではなく「過去」や「未来」に向いていると、簡単にはやり過ごせません。瞑想中の雑念があまりにも多く、心を苦しめてくるようであれば瞑想を無理に続けようとせずに休みましょうね。


雑念は瞑想の敵?

雑念は邪魔なものと思われがちですが、雑念自体が悪いものではなく、雑念にとらわれて集中できないことが問題なのです。心を鎮めて呼吸に集中し、「今ある自分の状態」を感じようとすると、自然に色々な考えが浮かんできてしまいます。思考を停止することはできないため、湧いてきた思いや考えにどのように対応できるかが重要です。

雑念により感情が揺さぶられたり、悩んでしまったり、心の安定が奪われてしまっては瞑想がつらく苦痛なものにもなりかねません。まずは雑念を、雑念だと認識することから始めましょう。正体が分からないままでは、どのように対処すればいいのか迷ってしまいますよね。

普段生活しているときにも、私たちはたくさんのことを考えながら生きています。それらは必要なことでもあり、瞑想中に湧いてきても不思議ではありません。雑念は悪ではなく、自然なものです。雑念を悪いものだと捉えずに、正しく認識しましょう。瞑想中につい考えてしまうこと、思考のクセに気付くことが重要です。そのためにも、浮かんだ考えに向き合わず、ただ思考を眺める、ことを繰り返し行ってください。無駄に思える自分の考えや思考を理解することは、感情をコントロールするための第1歩でもあるのです。


雑念を無理に消そうとすると逆効果

雑念を悪だと決めつけて、必死に抵抗する必要はありません。余計な考えに見える雑念をただ受け流していく、その繰り返しこそが重要であるからです。

雑念をコントロールしなければ、と焦れば焦るほど雑念は増えていきます。さらにできないことに罪悪感を持ち、感情まで不安定になりかねないため、雑念を無理に消そうと試みるのはやめましょう。雑念があるのは当たり前のことです。

雑念は完全に消し去るのではなく、受け流すものだと捉えましょう。完全に雑念を無くすことはできないと理解できれば、自分を責めることもなくなります。最初の頃は雑念を振り払えずに、次から次へと湧いてくる雑念に疲れてしまうかもしれません。疲れやストレスがあると、前頭葉の機能が低下し、雑念にとらわれずにいることが難しいと言われています。そのような状況になったとして焦らずに瞑想を続けて、雑念を少しずつ受け流していけばいいというくらいの考えでいましょう。瞑想に慣れてくると、集中力も上がるため、呼吸に意識を向けられる時間が伸びて、雑念を対処する力もついてきます。


瞑想に集中するためのコツ

瞑想に集中するためには環境を整えるのがおすすめです。注意力が散漫になったり、居心地が悪かったり、自分にとってベストではない空間で瞑想を続けていては、心にもよくありません。ストレスを軽減するために行う瞑想が、ストレスの原因になってしまいます。

匂い温度人混みなど、気が散ってしまう要因になりそうなものは、できるだけ避けましょう。ひとつでも気になることがあるとなかなか瞑想に入り込むことができなくなります。

集中しづらいと感じる方は、お気に入りのアロマを焚いて、気分を落ち着けてみてください。好きな香りでリラックス効果を得られます。その日の体調や、気持ちによって香りを変えて楽しむのもいいでしょう。

静寂に包まれると集中しやすくなりますが、「無音ではちょっと…」と思われる方は、ヒーリング音楽音声アプリを活用するのがおすすめです。Relookアプリを用意して、音声に従って瞑想に挑戦してみてください。流れてくる声の通りに瞑想を行うだけなので、考える必要もありません。瞑想を突然行うのではなく、アプリが徐々に気持ちを落ち着かせてくれるため、心と身体も瞑想を始めやすくなりますよ。集中したい方は、ぜひ取り入れてみましょう。

Relookアプリについてはこちらを参照してみてください。


瞑想のやり方をおさらい

雑念にとらわれて、瞑想がうまくできないと感じたら、瞑想のやり方を復習してみましょう。瞑想は型にハマる必要はありませんが、基本を学び、丁寧に行うのは大事なことです。丁寧な呼吸を心掛けながら、外部からの刺激に反応せずに吐く息と吸う息に集中しましょう。最初から長い時間行う必要はありません。1分でもいいので、その間は集中して取り組んでみてください。


<やり方>

  ①リラックスした姿勢で座ります。背筋は伸ばしましょう。

  ②目を閉じた方が集中できる方は、軽く閉じてください。

  ③ゆっくりと大きく息を吐き出して、ゆっくりと吸い込みます。

  ④自分の呼吸に集中しましょう。

  ⑤何か気になる物に意識が向いたり、考え事や悩み事が浮かんだりして、集中力が切れたら再び呼吸に意識を向けます。

  ⑥途中で意識が呼吸以外に向いてしまったら、何度も呼吸に戻しましょう。


違う種類の瞑想も試してみる

瞑想にはさまざまな種類があります。世界には500種類以上の瞑想があるといわれているのです。今おこなっている瞑想が「合わない」「集中しにくい」と思われている方は、自分に合う瞑想を探してみましょう。瞑想には座って行う瞑想だけでなく、動きのあるものや、声を出すもの、長時間行うものなど、いろいろなスタイルが存在します。座って呼吸に意識を向ける瞑想が、あまり楽しめない場合は他の瞑想にチャレンジしてみましょう。きっと自分に合うものがあるはずです。

今回はヴィパッサナー瞑想と、安定打坐法をご紹介いたします。重要なのは、自分が心地いいと思える瞑想に出会うことです。そのためにもさまざまな瞑想法を試してみるのはおすすめですよ。



ヴィパッサナー瞑想

ヴィパッサナー瞑想」はインドで行われてきた最も古い瞑想法のひとつといわれています。「ヴィ」がありのまま、「パッサナー」が観察するという意味を表し、「物事をありのままを観察する」瞑想です。ヴィパッサナー瞑想は自分の身体の動きを中心に、今の行動や感情、自分の状態について観察します。

自分の動きを心の中で言葉にして説明することで、他のことが気になったり、雑念に邪魔されたりする心配もありません。通常の瞑想よりも動きがあるため、心を落ち着けるのではなく、活動的にさせてくれるところが特徴です。ヴィパッサナー瞑想のひとつである「歩行瞑想」は歩いて行うので、落ち着いて座っていられないという方には特に向いている瞑想法です。

<やり方>

  ①足を少し開いた姿勢で立ち、背筋を伸ばしましょう。

  ②足に意識を置きながら、ゆっくりと歩きます。

  ③片足を少しずつ上げて、その状態を全て心の中で言語化してください。

  ④足を動かしている感覚を丁寧に観察し、同じように逆の足も行いましょう。

ヴィパッサナー瞑想には三原則があり、瞑想の際にはこれらに注意しましょう。

スローモーションで取り組む

身体をできるだけゆっくりと動かしましょう。普段よりスピードを落とした動作を行うことで、身体の動きを観察しやすくなります。

今の自分の姿を実況する

歩いている自分を頭の中で説明してみましょう。足がゆっくりと上がったり、下ろして地面に着きそうになったり、その瞬間を全て心の中で言語化します。

感覚の変化を感じとる

普段は意識しない動きに意識を向けましょう。ただ歩くのではなく、どのように足が出て、力が込められているのはどこか、丁寧に観察するのです。身体の動きに注目することだけに集中してください。行動を細かく説明すると、雑念が湧いてくる隙間さえなくなります。


ヴィパッサナー瞑想についてはこちらの記事で、また歩行瞑想についてはこちらの記事で解説していまsす。興味のある方は是非ご覧ください。


安定打坐法

中村天風氏が考案した「安定打坐法(あんじょうだざほう)」は「無我一念」の「天風式坐禅法」と呼ばれています。人の心を迷わす雑念を取り除き、心の状態を「無我一念」の境地に入ることを目的とした瞑想法です。瞑想中にはブザーの音が用いられます。繰り返し聞こえてくるブザーの音に集中してください。「おりん」と呼ばれる梵音具が使われることもありますが、初心者の方は、鳴らすたびに集中力が切れる恐れもあるため、ブザー音がおすすめです。

瞑想時間を10分と決めたら、30秒ほどの長さのブザー音が10分の間に何度か鳴るようにします。ブザーの音はあらかじめ録音しておくか、動画サイトなどを活用しましょう。時間は5分でも10分でも、自分が没頭しやすい長さで行ってくださいね。集中していたブザー音が突然消えると、雑念のない心が現れます。心に何もない、空っぽの状態を作ることを繰り返して、雑念を取り払えるようになりましょう。

<やり方>

  ①あぐらや正座、椅子に座るなど、リラックスできる座り方を選びましょう。背筋は伸ばしてください。

  ②目を閉じて、深呼吸をしながら心を落ち着けましょう。

  ③聞こえてくるブザーの音に集中します。


安定打坐法についてはこちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方は是非ご覧になってくださいね。

まとめ

瞑想を行う限り、雑念を切り離して考えることはできません。雑念をどのように対処できるようになるかが、瞑想では重要なポイントです。瞑想を続けていくと、さらに自分自身や瞑想について理解が深まるでしょう。そのときに「雑念がなくなればもっと集中できるのに」と考えたり「どうしてこんなに雑念にとらわれるんだろう」という思いが湧いてくるかもしれません。けれどそれらに気付いていることが瞑想の醍醐味であり、行う価値があるのです。

瞑想中は雑念が湧いてくることを否定せずに、受け入れる姿勢が求められます。最初の頃は難しくて戸惑うかもしれませんが、慣れてくると徐々にできるようになるため、すぐに成果を出す必要はありません。あまりにも集中できないときには、他の瞑想を試したり、環境を整えたり、ツールを活用したり、工夫しながら瞑想に取り組んでくださいね。


※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。




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