瞑想について調べているとマインドフルネスという言葉をよく見かけますね。

マインドフルネスとは、日常の様々な雑念を忘れて「いま、この瞬間」に集中する状態のことを言います。

瞑想の効果はこのマインドフルネスの状態になることで得られるものも多く、瞑想とは切っても切れない関係にあります。


一方で瞑想は脳のトレーニングと言われるくらい、脳に変化を与えるものです。

瞑想と脳の関係については他の記事でも解説してきました。


ではマインドフルネスと脳の関係は一体どうなっているのでしょう?

今回はマインドフルネスによって脳がどのような影響を受けるのか、ご紹介したいと思います。


マインドフルネスで脳の構造が変わる?

マインドフルネスと脳の関係に入って行く前に、マインドフルネスについてざっとおさらいしましょう。

マインドフルネスは先ほども言った通り「いま、この瞬間」に集中する状態のことです。

その方法としては、余計なあれこれを考えずに、自分の体の状態や感覚に集中する方法が一般的です。

具体的には「自分の呼吸にひたすら集中する」という瞑想法が代表的なマインドフルネスの方法になります。


一般に、マインドフルネスの状態になろうとする瞑想法を”マインドフルネス瞑想”と呼びます。

ではこのマインドフルネス瞑想によって一体どのような効果が得られるのでしょうか?


その効果としては、ストレス軽減や痛みの緩和、感情コントロールの上達などが挙げられます。

これらは全て精神的な効果ですから、脳が変化することでこれらの効果が得られるはずなのです。

ちょうど筋トレで筋肉が変化するように、マインドフルネス瞑想では脳が変化して効果を得られるわけです。


実際にマインドフルネス瞑想を通じて、特定の脳部位の大きさが変化したり、あるいはその活動が変化したりすることが科学的な研究から明らかになっています。

以下では具体的にどんな脳の変化が得られるのかをみていきましょう。


マインドフルネスで変化する脳の部位

さて早速、マインドフルネスで脳のどこがどのように変化するかをご紹介して、マインドフルネス瞑想の効果を裏付けていきたいと思います。


①前帯状皮質(ぜんたいじょうひしつ)

まずご紹介するのは前帯状皮質という脳部位の変化です。

全く聞きなれない言葉ではないでしょうか?

学生のテスト勉強では無いですから特に覚える必要はありません。


この前帯状皮質は脳の前の方にある構造で、注意や感情のコントロールに関与すると言われています。

注意に関連したところでは、ADHDという注意力が低い発達障害の人では、この前帯状皮質の大きさや活動レベルが低いと言われています。


ではこの前帯状皮質はマインドフルネスによってどう変化するのでしょうか?


ブリティッシュコロンビア大学が、それまでの21個の研究報告を分析してマインドフルネスによる脳の変化をまとめたところ、この前帯状皮質の大きさの変化が確認されました。

またドイツの研究グループによれば、瞑想家とそうではない一般人にマインドフルネス瞑想をしてもらってその時の脳活動を比べたところ、瞑想家はこの前帯状皮質の活動がより強く出ることがわかりました。

この前帯状皮質は注意のコントロールなどをする部分ですから、おそらく瞑想家はこの前帯状皮質の活動によって瞑想中に余計な雑念には注意を向けないようにコントロールしているのだろうと考えられています。


この前帯状皮質は日頃の生活でも、例えば仕事でたくさんのタスクを抱えているときに、余計な心配をせずに「今はこの仕事に集中すべき!」と注意を向けられるかどうかに関わってきますから、マインドフルネス瞑想でこの脳部位が鍛えられるのは非常にメリットのあることではないでしょうか。

②扁桃体(へんとうたい)

マインドフルネスで変化する脳の部位の2つ目は扁桃体です。

この扁桃体は感情と関わりが深い部位だと言われています。

例えば嫌なことがあった時に、この扁桃体の活動が強くなることがわかっています。



マインドフルネスとの関係に関して名古屋大学の研究グループが、被験者が日頃どのくらいマインドフルネスの状態になるかを調査し、同時に脳の構造との関連を調べました。

するとマインドフルネスの状態によくなる人は右脳の扁桃体の体積が大きいことがわかったのです。


またウィスコンシン大学の研究によれば、熟練の瞑想家とそうでない人の脳活動を比較したところ、笑顔の写真などポジティブな感情を引き起こす写真が提示された時の扁桃体の活動が熟練の瞑想家では低いことがわかりました。

熟練の瞑想家は感情のコントロールが上手く、一見ポジティブそうなものでもすぐには飛びつきにくい
ということかもしれませんね。


マインドフルネスで変化するこの扁桃体という脳部位は感情との関わりが深いため、例えば嫌なことがあってストレスを感じたりするのにも関わっています。

マインドフルネスでこの扁桃体が変化することで感情のコントロールを上達させて、ストレスを感じにくくできるかもしれませんね。

③島皮質前部(とうひしつ ぜんぶ)

さて最後にご紹介する脳部位は島皮質前部です。

この島皮質は先ほどご紹介した前帯状皮質と同じく脳の前側にありますが、より深い位置にある脳部位です。


この島皮質は感情のコントロールや痛みの感覚と深い関わりがあると言われています。また先ほどの前帯状皮質と同じように注意力にも関係があると考えられています。


マインドフルネスによる変化については、アメリカのウェイクフォレスト大学の研究を一つご紹介します。

この研究では、被験者に4日間マインドフルネス瞑想を行ってもらいました。そしてその前後で49度の熱刺激を5分間ほど与えて、その痛みへの反応を調べました。

49度は冬に使うカイロの温度に近いので、カイロを肌に直接貼ってじわじわと熱を与えているような状態ですね。


この時の痛みに対する反応は、4日間の瞑想の後ではその前の半分程度にしか感じられなかったと、この研究で報告されています。

さらに、この痛みの感覚の違いに関連して、島皮質の前部の活動が瞑想の後の熱刺激では高くみられました。

このことから瞑想を通じて、この島皮質前部の活動が痛みの感覚を感じにくくなるようにコントロールしているのだろうと考えられています。


大切なのは痛みを我慢しているのではなくて、そもそもあまり感じなくなるのがマインドフルネス瞑想の効果ですから、例えば頭痛持ちの方や女性の生理痛などの定期的な痛みによるストレスはマインドフルネスによって減らせるのではないでしょうか。


もっと知りたい方に向けて

ここまででマインドフルネスがいかに脳を変化させるのかについて解説しました。

しかしまだまだ説明しきれていない部分が多くあります。

Relookメディア内でもどんどん情報をアップしていきますが、それに加えて参考になる本をご紹介しておこうと思います。


まずご紹介したいのは、『疲れない脳をつくる生活習慣』という本です。

こちらはタイトル通り、マインドフルネスと疲れの関係について書いた本ですが、そこにどういう脳科学的な仕組みがあるかにも触れられています。


もう一つオススメしたい本が『図解 マインドフルネス ―しなやかな心と脳を育てる―』です。

こちらはマインドフルネスの効果や方法を雑誌のような見やすい形で描いてくれています。

また翻訳者が脳科学の研究者でもあり、マインドフルネスと脳の関係についても触れられています。


ただ、いくつか本を読んでみるとわかりますが、なかなかマインドフルネスや瞑想に関する最新の脳科学をまとめてくれている書籍は少なく、信ぴょう性のある情報を得るのが難しいです。

そこで瞑想の脳科学的なことを知りたいと思ったら、ぜひこのRelookメディアで色々調べてみてください。他では得られなかった情報も見つかるはずです!


マインドフルネス瞑想のやり方

マインドフルネスと脳の関係について解説したところで、実際にどのようにマインドフルネス瞑想を行えば良いのか、そのやり方をご紹介します。


最初にも言いましたが、マインドフルネス瞑想において最も一般的で入門向けの方法が「呼吸に集中する瞑想法」です。

今回はこの瞑想法のやり方をご紹介します。

  1. まず楽な姿勢になって目をつむりましょう。立っても座っても構いません。
  2. 次に呼吸に意識を向けましょう。息が鼻腔を通る感覚や、お腹が上下する感覚などに注意を向けましょう。
  3. もし考え事など雑念が湧いた場合は「雑念、雑念、雑念」と口に出してからもう一度呼吸に意識を向けましょう。これを繰り返すと意識への集中が上手くなっていきます。

大まかなやり方はこんなところです。

時間としては短くとも10分くらいはやっておくと良いです。時間を取れる方は30分を目指しましょう。

初めは30分間ずっと集中し続けるのは難しいですが、徐々にできるようになっていきます。

それこそ脳のトレーニングの効果の証です。


マインドフルネス瞑想をする際のポイント

この呼吸に集中する瞑想法を含めて、マインドフルネス瞑想全般に共通するポイントを紹介しておきます。


マインドフルネス瞑想において重要なポイントは、(1)スローモーションと(2)実況中継です。


まずマインドフルネス瞑想では体の感覚などに注意を向けます。この時しっかりと体に集中するにはその動きをスローモーションにした方が良いのです。

例えば歩く動作に集中するマインドフルネス瞑想もありますが、その時は本当にゆっくり歩くのがポイントです。1歩に5秒以上かけます。

先ほどの呼吸に集中する瞑想でもやはり同じで、しっかりと呼吸によって得られる体の感覚に意識を向けるには、ゆっくりと呼吸をした方が良いです。具体的には4秒で吸って6秒で吐くのが良いと言われていますので、そのくらいを目安にしましょう。


また2つ目のポイントである”実況中継”は、その時々の感覚を言葉にすることでより集中しやすくするものです。

例えば息を吸ってお腹が膨らんできたら、「お腹が膨らんできた。お腹に圧力を感じる」というように言葉にすると良いです。呼吸に集中する瞑想ではあまり口では喋らない方がよいので、頭の中で唱えましょう。

そうして言葉にしてみると、その感覚や呼吸そのものに意識を向けやすくなります。


またどうしても集中しきれない方は、何か瞑想を補助してくれるものを使うのも手です。

Relookアプリでは瞑想を補助する音声ガイドを収録していますから、これを使うとマインドフルネスの状態に入りやすくなります。

自分には瞑想は向いてないかも、と思う前に一度お試しください。

Relookアプリについてはこちらを参照してみてください。


さいごに

今回はマインドフルネスによる脳の変化についてご紹介してきました。

脳のトレーニングであるマインドフルネス瞑想で確かに脳に変化が見られるのだと分かっていただけたでしょうか。

瞑想はストレスが溢れる現代社会でこれ以上なく有用なツールですから、ぜひ瞑想であなたの脳を鍛えてみてください。




※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。