そもそも副交感神経とは?


自律神経という言葉を聞いたことがあるでしょうか?自律神経は私たちの内臓や精神を調整する機能を持っています。


私たちが意図して動かせるのは、手、足、口、目などだいたいが身体の外側にあります。一方、内臓や血管、汗腺や臓器など、身体の内側にあり、私たちが意図して動かすことのできない部分の調整をしているのが自律神経です。自律神経は24時間働き続けています。例えば、私たちがのんびり寝ている間も心臓が適切なペースで動き続けてくれるのは、自律神経が休まず働いてくれるおかげなのです。


自律神経には交感神経副交感神経があり、一方が有意に立っている時にはもう一方の働きが抑えられます。


活動時や緊張状態にあるときに優位になるのは交感神経です。交感神経が優位になっているときには、瞳孔を開く・心拍数を増やす・汗を出すなどの働きで体を活動しやすい状態に変化させています。


一方、寝ているときやリラックスしているときには副交感神経が優位になります。副交感神経が優位の間は、瞳孔を閉じて心拍数を減らし、胃腸の働きを活発にするなどの変化でリラックスしやすいような状態が続きます。


夜に副交感神経が優位になると、寝付きが良くなってぐっすり眠ることができ、心身の休息と回復がしっかりと行われます。


そのため、私たちが心身ともに健康で過ごすためには、睡眠前に副交感神経が優位になることが非常に重要なのです。


瞑想で副交感神経を優位にする

瞑想を行なうと、どうして副交感神経が優位になりやすくなるのでしょうか。


 脳をリラックスさせて副交感神経を優位にする


夜になってもスマホ、テレビ、パソコンなどの強い光を長時間見続けたりしていませんか?


あるいは、布団に入っても、仕事や人間関係のことでいろいろと思い返したり、不安なこと、悩んでいることなどが頭を駆け巡ってストレスを感じたりしている方も多いのではないでしょうか。


このようにさまざまな理由が原因で脳が覚醒したままだと、交感神経が優位な状態が続き、副交感神経が優位になりにくくなります。


瞑想にはさまざまな種類ややり方がありますが、基本的には忙しく働いている脳を鎮め、リラックスさせるために行います。継続して実践することで、心、身体、思考に良い変化をもたらすとされており、その変化のひとつがストレスの軽減です。普段あれこれ脳に浮かんでくる雑多な考えを減らして脳を整理しリラックスさせることができると、ストレスが軽減し自律神経のバランスが整いやすくなります。


 呼吸で副交感神経を優位にする


瞑想を実践するときに推奨されている腹式呼吸にも、副交感神経を優位にする効果があるとされています。


緊張や恐怖をともなう状況にいる時には、私たちの呼吸は浅く短いペースの胸式呼吸になっています。このような胸式呼吸は、交感神経を優位にする働きがあります。


逆に、意識的に深くゆっくりとした腹式呼吸は副交感神経を優位にすることが知られており、特に息を吐くときに副交感神経が強く働くといいます。


普段、私たちは無意識に呼吸をしていますが、その速さや回数を意識的にコントロールすることは可能です。意識的に深くゆっくりと呼吸をすることで、副交感神経が優位になりやすくなるのです。


このように、瞑想によって脳をリラックスさせ、ゆっくりとした腹式呼吸を行なうことで、副交感神経が優位に切り替わりやすくなります。


副交感神経を優位にすることで得られる効果

副交感神経を優位にすることで、どのような効果が得られるのでしょうか。ここでは代表的な効果を4つご紹介します。


心地良く寝付くことができる


副交感神経を優位にすることで寝つきが良くなる理由は主に2つあります。1つ目は布団に入ったときに頭を駆け巡る悩み事や心配事を減らすことができるから、2つ目は副交感神経が優位になることで血管が拡張するなど心地よく寝付くための身体の準備を整えることができるから、です。


悩み事を減らして寝つきを良くする

20代から70代の男女10,000人に対して行なわれた睡眠に関するアンケート調査によると、睡眠を妨げる要因として過半数の回答者が「何らかの悩みが原因で眠りにつくのが辛かった」と答えており、特に女性ではその割合が男性よりも多いことがわかっています。


具体的な悩みとしては20代女性では「将来・恋愛」、30代では「職場での人間関係・将来・育児・恋愛」、40代では「育児」、50代では「健康」があげられています。このように女性は各ライフステージに伴った悩みを抱える傾向が高く、それがストレスとなって睡眠を妨げる原因となっているようです。


一方、20代から40代の男性では「職場・学校での成績・評価」、50代では「職場・学校での同僚・友人関係」の悩みが最も大きい割合を占めています。


瞑想を実践することで布団に入ったときに頭を巡る心配事や悩み事が減るためストレスが減り、副交感神経が優位になりやすくなります。それによって寝つきの改善が期待できるのです。


出典:西川 睡眠白書2020~日本人の睡眠調査~ 

www.nishikawa1566.com/company/laboratory/hakusyo2020.pdf


身体の準備を整えて寝つきを良くする

副交感神経は、夜になると身体の内部の熱(深部体温)を下げるために血管を拡張させて手や足先の血流量を増やし、熱を放出する機能があります。その体温の変動が「休息」のサイン。このサインは眠気となって、私たちの身体は自然と眠りの体勢に入っていきます。このタイミングと就寝がちょうど重なると、心地よく寝付くことができるのです。


赤ちゃんが眠くなると手足が温かくなるのも、同じメカニズム。大人でも赤ちゃんほどではありませんが、眠くなると手足が温かくなります。これは、入眠に向けた身体の準備なのです。


 ストレスを解消することができる 

瞑想によって、普段あれこれ脳に浮かんでくる雑多な考えを減らして整理し、脳をリラックスさせることで、ストレスが軽減し自律神経が整えられるといわれています。


瞑想の中でも特にマインドフルネス瞑想を継続して実践することで、イラつきや罪悪感などのネガティブな思考を減らしてポジティブ思考を増加させる効果があることがわかっています。何かの出来事に対して、それをどうとらえるのかは個人の考え方次第。悪い面ばかりを見てしまうと心配、後悔、怒りなどが沸き上がりストレスにつながりますが、瞑想をして良い面を見ることができれるようになればストレスが軽減して副交感神経が優位になり、精神状態が安定しやすくなります。


出典:
www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5397480/pdf/fpsyg-08-00551.pdf


 自律神経失調症の予防になる


自律神経失調症は、不規則な生活リズムや強いストレスによって自律神経が正常に機能しないことが原因で起こるさまざまな症状です。身体のどこに、どの程度の症状が出るかは人それぞれで、他の病気との見分けやもともとの体質との線引きが難しく診断がつきにくいことも少なくありません。


症状の例としては、だるい、眠れない、疲れが取れないといった全身の症状、情緒不安定、イライラ、不安感、うつ気分などの精神の症状に加えて、頭痛、動機や息切れ、めまい、のぼせ、立ちくらみ、下痢や便秘、冷えなどたくさんあります。


自律神経失調症を予防するには、自律神経を整えて交感神経と副交感神経のバランスをうまく切り替えられるようにすることが重要です。そのためには規則正しい生活をして、活動するときと休息するときのメリハリをつけることが必要となってきます。


現代人の生活は交感神経が優位になりがちです。そこで、瞑想などを積極的に取り入れて副交感神経を優位にすることで、自律神経のバランスを整えやすくなるのです。


 美容効果が期待できる


先述したように、私たちの身体は通常、眠くなると手や足の体表温度が上がってぽかぽかしてきます。これは副交感神経が優位になって毛細血管が開き、抹消の血流が増えている証です。このタイミングで睡眠に入ることができると、心地よく寝付くことができるのですが、嬉しい効果はそれだけではありません。


副交感神経の機能には、血管を拡張させたり、ホルモン分泌を増加させたりする働きがあります。血管が拡張すると血液やホルモンが体中の細胞に運ばれやすくなります。


血液は、体内の細胞に栄養素を運び、細胞からの老廃物を受け取る働きがあるため、これによって、細胞は効率よく、栄養の吸収と老廃物の排出を行うことができるのです。


また、睡眠中には特に成長ホルモンが重要な働きをします。成長ホルモンは、細胞の新陳代謝を促進し、病気の治癒、免疫力の向上、アンチエイジングなど重要な働きをするホルモンです。


このように、副交感神経が正常に機能すると、心身の健康に加えて美容効果も期待できるのです。



スキマ時間でできるお手軽瞑想法


何時間もじっと座って行なうだけが瞑想ではありません。短時間で日常生活に取り入れやすいお手軽瞑想でも、頭をスッキリさせたり、心を落ち着かせたり、集中力をアップさせたり、といったさまざまな効果が期待できるのです。


ここでは、プロの瞑想コーチであるAli Katzさんが提案する1分瞑想をご紹介します。


吸う息と吐く息の長さを合わせる

心地よく息を吸い、その息の長さを数えます。その数と同じ分だけ今度は息を吐きます。呼吸の長さは問題ではありません。1分経過するまで続けましょう。タイマーをセットすると呼吸に集中できます。


呼吸を数える

吸って1、吐いて2、吸って1、吐いて2…というように10になるまで自分の呼吸を数えます。これを3回繰り返しましょう。


ボディスキャン

自分の身体の各部位に意識を集中させていきます。まずは頭頂から始め、つま先まで意識を移動させていきましょう。各部位を意識的にリラックスさせます。1分間で、頭、目、頬、口、あご、首、肩、胸、腕、お腹、脚に意識を向けることができるでしょう。


“スイート16呼吸”

息を吸いながら心の中で4を数え、息を止めて4を数え、息を吐いて4を数え、また息を止めて4を数えます。3回繰り返しましょう。


腹式呼吸の練習

ゆっくりと深く息を吸いながら、お腹の中で風船を膨らませるイメージを持ちます。吸った息でお腹が大きく膨らむのを感じます。片方の手をお腹に当てて、お腹が膨らむのをじかに感じてもよいでしょう。お腹が大きく膨らむまで息を吸ったら、一瞬息を止め、お腹の風船をしぼめるイメージで息を吐きます。1分間続けます。


これらの瞑想法は、日常のちょっとしたスキマ時間に行なうことができます。


・朝起きたらベッドの上で

・信号待ちのとき

・買い物でレジに並んでいるとき

・食事の前

・お風呂で

・仕事の会議前

・寝る前


他にも、ちょっと落ち着きたい、頭をすっきりさせたいと思うときに実践してみましょう。


出典:https://www.mindbodygreen.com/0-18510/5-mini-meditations-you-can-do-in-1-minute.html


Ali Katzさんが提案するこの1分間瞑想法は主に呼吸に意識を向けることに重点を置いていますが、他にも自分の行動や感覚に意識を向ける方法や、目の前の食べ物・飲み物に集中する方法など、日常生活に取り入れやすいお手軽瞑想のやり方は、書籍などでたくさん紹介されています。



また、音声ガイダンスで瞑想をサポートしてくれるYouTube動画やアプリもたくさんあります。スキマ時間で実践できる瞑想のガイダンスもたくさんありますので、自分にあったものを探してみてください。


どのアプリを使えばよいのか分からいないという場合には、「Relook」など、瞑想やリラクゼーションの専門家が監修、あるいは制作に携わっているものから試してみましょう。副交感神経を優位にし、質の良い睡眠に導く瞑想をサポートしてくれます。睡眠以外にも、ストレス解消、人間関係、カラダ作りなど、あなたの目的に合わせた瞑想をガイドしてくれるさまざまなコンテンツが用意されています。

Relookアプリについてはこちらを参照してみてください。

さいごに

私たちが健康的な生活を送るために非常に重要な役割を果たしている自律神経。自分で意識的に交感神経と副交感神経を切り替えることはできませんが、副交感神経を優位になりやすくする習慣を取り入れることは可能です。その一つの方法が瞑想。日常生活の中で手軽に取り入れることもできますので、ぜひ今日から始めてみませんか。



※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。