もっとIQが高かったら・・・
今よりできることがたくさん増えそうですよね。
そう言いたくなってしまうのは、ただの愚痴とも言い切れません。
というのは、ヒトの知能の約50%が遺伝的要因の影響を受けるからです。
しかし、残りの50%は、環境的要因の影響を受けます。
その環境的要因のひとつが、言わずと知れた教育です。
そして、これまで大々的に注目されてこなかった知能に影響を与える教育が、瞑想です。
瞑想の研究が進み、学習や読書のような従来の学校教育では鍛えられない知能を、瞑想によって鍛えられると言われるまでになりました。
知能は放っておくと、ある時から少しずつ衰えていきます。
瞑想をすることがどのように知能の向上と関わっていくのか、また、その瞑想の方法を紹介します。
ぜひ、参考にしてください。
目次
なぜ瞑想でIQを上げられるのか?
IQとは、フランスの心理学者アルフレッドビネー氏が考案した、知能や知的能力を測定するために設計された標準的なテストの点数。
Intelligence Quotientの略で、知能指数のことです。
知能の大部分が遺伝的に決定しているといわれているなかで、なぜ瞑想でIQが上げられると期待されているのか、その理由について解説します。
結晶性知能と流動性知能
心理学者のレイモンド・キャッテル氏は、知能には結晶性知能と流動性知能という2つの概念があると提唱しました。
結晶性知能とは、知的スキルの習得や読んで理解する能力のことを指します。
生涯を通じて習得されるもので、学習や経験が多いほど向上する能力です。
一方、流動性知能は、パズルを解くような能力のことです。
仮説を立てたり、分析をしたり、パターン認識、想像力や視覚化などを使って、問題を解決する能力のことをいいます。
このふたつの知能がお互いに作用し連携して、全体的な能力をなします。(#1)
(参考文献#1. )https://www.psychologicalscience.org/observer/improving-intelligence/a>
瞑想が知能に与える影響
①流動性知能
従来、流動性知能は、加齢によって低下する傾向があると言われてきました。
しかし、ある研究で、中年のヨガと瞑想の実践者は、比較的、流動性知能の低下がゆるやかになるという結果が得られました。(#2)
(参考文献#2.) https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4001007/
この結果から、何が流動性知能の低下をゆるめるのに影響を与えているかについて、考察されています。
そして、マインドフルネスが流動性知能に対してポジティブな影響を与えているではないかと考えられました。
②記憶力
また、マインドフネス瞑想が脳に与える影響を、MR画像としてとらえられるようになりました。
2011年にマサチューセッツ総合病院で実施された、8週間のマインドフルネス瞑想プログラムで、参加2週間前と2週間後の脳の状態が比較されました。
すると、プログラムの参加後には、学習や短期記憶に関連する脳内の海馬の皮質が厚くなっていたことが指摘されました。(#3)
さらに、海馬周辺の機能と関連して、マインドフルネス瞑想によってワーキングメモリを改善され、知能の向上に関わる可能性が指摘されています。(#4)
(参考文献#4.)https://www.biorxiv.org/content/10.1101/801746v1.full
*ワーキングメモリとは、必要な情報をインプットしたり、記憶として保管しておいたり、必要な時にうまくアウトプットができる能力のことです。
IQを上げる効果的な瞑想法
瞑想方法は、伝統や文化などの背景、精神修養の違いから、何百ものやり方が存在します。
そのうち、上記のマインドフルネス瞑想を含め、知能の向上との関連性が研究されている2つの瞑想方法を紹介します。
①マインドフルネス瞑想
マインドフルネスは、もともと約2500年前の仏教を由来としています。
そこから1970年代に宗教色をのぞき、ストレスを軽減する目的で、アメリカのマサチューセッツ大学で開発されたマインドフルネスのプログラムが医療界で用いられるようになりました。
マインドフルネスの瞑想では、「いま」の瞬間の気づきを体験すること、また、ひとつの対象に意識を集中させることを繰り返し行っていきます。
マインドフルネスの瞑想において、意識を集中させる対象となるものにはいろいろあります。
もっとも基本となるものは「呼吸」に意識を集中させるやり方です。
<やり方>
1.落ち着ける場所に座る
2.頭頂部が天井から吊り上げられているイメージで背筋を伸ばす
3.楽に息を吐く
4.鼻から息を吸って口から深く吐く
5.吐く息で、唇に空気が触れることに意識を向ける
6.意識がほかに外れたら、気づいて、また唇に意識を戻す(1分続ける)
【参考】上記の瞑想を音声の誘導・リラックスミュージック付きで行う場合は、こちらのアプリをご活用ください。
↓
RELOOLアプリ>「瞑想」タブ>「瞑想をはじめる」>「マインドフルネス」>「マインドフルネス瞑想基礎」> 「Day2 呼吸の瞑想」
Relookアプリについてはこちらを参照してみてください。
②超越瞑想
もうひとつは、超越瞑想です。(#5)
(参考文献#5. )https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/019188699190040I
超越瞑想は、故マハリシマヘシュヨギ氏がインドの古代ヴェーダの伝統から生み出した瞑想方法です。
この瞑想方法の特徴は、気が散るような考えを避けてリラックスした意識の状態を促進するために、マントラを唱えることです。
超越瞑想で用いられるマントラとは、ヴェーダの伝統に基づく意味のない音だとされています。
<やり方>(#5)
1. 足を地面につけ、手を膝に乗せて、心地よい椅子に座る
2. 目を閉じて深呼吸をして、体をリラックスさせる
3. 一度目を開き、再び目を閉じる
4. 心の中でマントラを繰り返す(マントラの言葉は、超越瞑想の先生から教えられるサンスクリット語の音)
5. 自分が考えていることに気づいたら、再びマントラに戻る
6. 20分後、ゆっくり指と足の指を動かす
7. 目を開ける
IQを上げるために心がけるべきポイント
大人のわたしたちがIQが上がるために心がけるべきポイントは、2つあります。
ポイント2. 流動性知能の衰退を遅らせること
この2つをどちらも行っていくことです。
特に、加齢と共に低下すると思われていた流動性知能のトレーニングは、従来の教育の中であまり注目されてこなかった点かもしれません。
しかし、流動性知能は、トレーニングの量が多ければ多いほど影響を受けやすいものです。(#6)
(参考文献#6. )https://www.pnas.org/content/early/2008/04/25/0801268105.abstract
というわけで、流動性知能のトレーニングとして有益な結果をもたらすものを2種類、ピックアップします。
①中等度以上の運動
中等度の運動というのは、きついという自覚がなく、息は上がるけれども会話はできる程度の運動です。
たとえば、早歩きや階段をのぼるなど。
さらにそれ以上の運動というのは、息が上がり会話ができない程度の運動です。
たとえば、ジョギングや水泳など。
これらのような、中等度以上の運動が流動性知能の改善にプラスの影響を与えるといわれています。(#7)
(参考文献#7.) https://doi.apa.org/doiLanding?doi=10.1037%2Fpag0000580
②ワーキングメモリのトレーニング
流動性知能の改善には、ワーキングメモリのトレーニングが有益な結果をもたらすと示唆されています。(#8)
(参考文献#8.) https://link.springer.com/article/10.3758/s13423-014-0699-x
ワーキングメモリの改善する方法のひとつは、前に挙げたマインドフルネス瞑想が有効とされています。
また最近では、ワーキングメモリを改善するアプリのゲーム開発が進んでいます。
これらのトレーニングによって、加齢による流動性知能の衰退を遅らせつつ、経験や学習で得た知識の蓄積による結晶性知能を向上させていくことで、全体的な知能の向上につながることが期待されます。
IQだけじゃない!瞑想が脳に及ぼす効果とは?
①EQを上げる
IQと並んで、知能を示す指標としてEQがあります。
Emotional Intelligence Quotientの略で、「ココロの知能指数」のことです。
EQが高いと、自分の感情の管理がうまく、他の人の感情に共感する能力が高くなり、仕事での成功や健康、人間関係の満足度、幸福感やユーモアなどと関係してきます。(#9)
(参考サイト#9.) https://hbr.org/2013/05/can-you-really-improve-your-em
マインドフルネス瞑想は、思いやりや共感に関連する側頭頭頂接合部に影響を与え(#10)、
自分の感情に気付く力が高め、自分や他人への思いやりを育み、EQが上がることが期待されています。(#11)
(参考文献#10. )https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4779536/
関連記事:瞑想でEQ(心の知能指数)が上がる?高EQがもたらす状態や瞑想法を解説
②脳を休める
わたしたちは、何もしていない時にも脳が働き、過去や未来のことを考えていることがほとんどです。
そして不安や心配を生み出してはストレスとして感じ、エネルギーを消耗しています。
しかし、マインドフルネス瞑想は、このような心がさまよっている時に活動が高まる脳のデフォルトモードネットワークを休ませる作用があります。(#12)
(参考文献#12. )https://www.pnas.org/content/108/50/20254.short
③不安やストレス、恐怖を軽減する
脳内に、不安やストレス、恐怖など衝動的な感情を生み出す扁桃体という部位があります。
この扁桃体の体積の大きさは、不安障害との関連性が指摘されていますが(#13)、
(参考文献#13.) https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10913507/
8週間のマインドフルネス瞑想によって、扁桃体の縮小が認められました。(#14)
(参考文献#14.)https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0064574
関連記事:瞑想が扁桃体に及ぼす影響とは?感情を制御して心を健康に保つ
まとめ
数ある瞑想の方法のなかで、マインドフルネス瞑想は、流動性知能の向上とワーキングメモリの改善に役立つことが報告されています。
IQを上げる効果的な瞑想法として、マインドフルネス瞑想と超越瞑想のやり方を解説しました。
学習や読書による結晶性知能を積み上げ、並行して、流動性知能の低下を防ぐことが、大人になっても知能を向上させるポイントです。
瞑想が脳に与える影響をMR画像でとらえられるようになり、瞑想が脳に及ぼす効果が明らかになってきました。
ぜひ皆さんも瞑想を実践してその効果を実践してみてください。
※本記事の内容は、執筆当時の学術論文などの情報から暫定的に解釈したものであり、特定の事実や効果を保証するものではありません。